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これからのキャリア形成、どう変化する?
多くの企業では、これまでも従業員の才能や関心に応じて成長の方向性を示し、キャリア形成を支援してきました。しかし、人材不足や採用コストの高騰が進むなか、社内で必要なスキルを計画的に育成する「キャリアパス制度」を導入する企業が増えています。
この制度は、企業が従業員とともにキャリアの方向性を整理し、目標や強み、スキルレベルを把握したうえで、会社のニーズに合った成長プランを設計するというものです。こうした仕組みを整えることで、社員のモチベーションや仕事への満足度が向上し、企業にとっても定着率の向上や次世代リーダーの育成につながります。
働き方が急速に変化するなか、キャリアの選択肢もまた、トレンドやテクノロジーの進化に大きな影響を受けています。本記事では、今後のキャリア形成に影響を与える主要なトレンドを紹介し、それが企業にどのような変化をもたらすのか具体例を交えて解説します。
キャリアパス形成を左右する最新トレンドと今後の展望
AIがキャリアパス設計にもたらす変革
近年、生成AI・非生成AIの急速な発展により、私たちの働き方や生活は大きく変化しています。キャリアパス設計も例外ではありません。AIは膨大で複雑な情報を分析し、的確で実用的なインサイトや提案を生み出すことを得意とします。この特性を活かせば、従業員の職歴・興味・スキルを総合的に考慮し、最適なキャリアプランを提示することができます。
実際に、キャリア設計に活用できるさまざまなAIツールがあります。たとえば、高度な予測分析を行うAIなら、従業員の現在のキャリア状況を把握し、目標達成に向けた具体的なアクションを示すことができます。適切な昇進のタイミングを提案したり、次のキャリアステップに必要なスキルを特定したりすることで、人材育成の意思決定を手助けすることができます。
また、生成AIを活用したチャットツールも注目されています。適切なプロンプトを設定すれば、GPTのようなAIを「対話型キャリアコーチ」として活用でき、従業員が自身のキャリア目標や成長の優先順位を整理するうえで役立ちます。従来はHR担当者が個別対応していたキャリア相談も、AIを導入することで大規模な組織でも効率的に展開できるようになりました。
AIが生み出す新たなキャリアの可能性
生成AI・非生成AIは、従来のキャリアパスを効率的に進める手助けをするだけではありません。業界によっては、これまで存在しなかった新たなキャリアの選択肢を広げる役割も果たしています。
たとえば、製造業のエンジニアが、長年にわたってコンシューマー向け電子機器の開発に携わっていたとします。しかし、AIの台頭により、エンジニアリングや研究開発(R&D)分野での活用が進む中、新たな興味を持ち、キャリアの方向性をAIツールの活用や発展にシフトさせるかもしれません。これはマーケティングや営業の分野でも同様です。これまでコンテンツ制作や顧客開拓を行っていた社員が、AIを活用して業務を効率化・強化するキャリアを志すケースもあります。
AIがもたらす影響は、業界を問わずすべての企業が注目すべき重要な要素です。まだ技術が発展途上ではあるものの、その影響力は今後さらに拡大していくでしょう。実際、当社の「2025年ワークモニター調査」によると、AIスキルは「今後習得したいスキル」として最も多くの従業員に選ばれています。
このような状況の中で、大企業が従来のキャリアパスに固執し続けるのは得策ではありません。従業員のキャリアの変化を柔軟に受け入れ、組織内でAIの専門性を育てることは、将来的に大きなリターンをもたらす先行投資となるでしょう。
パーソナライズされた学習と育成(L&D)
社員の学習・育成(L&D)を実施するうえで、最も難しいのが「一人ひとりに最適なレベルで提供すること」です。たとえば、リーダーシップ強化を目的とした研修を実施する場合、すでに一定のスキルを持っている人と、まったくの初心者が混在していることもあります。画一的な研修では、それぞれの習熟度に合わず、効果が十分に得られないことも少なくありません。
こうした課題に対し、AIを活用すれば、従業員ごとに適した学習プログラムを設計できます。Udemyのような企業では、AIを活用してユーザーの知識レベルに応じた学習経路を自動調整し、より効果的なトレーニングを提供しています。
また、個別の学習プログラムだけでなく、チャット型AIを活用すれば、実践的な職場スキルをトレーニングすることも可能です。たとえば、Udemyの2025年グローバル学習・スキルトレンドレポートでは、従業員がAIチャットボットを使い、対人関係のトレーニングを行う例が紹介されています。たとえば、"意見の違いが生じそうな場面"を想定し、AIとの会話を通じて伝え方や対話の仕方を練習することも可能です。
さらに、GPTの言語解析機能を活用すれば、職場でのコミュニケーションを客観的に振り返ることもできます。たとえば、匿名化した会議の議事録をAIに渡し、発言の明確さや伝わりやすさ、対立を解決するための改善点についてフィードバックを得るといった使い方も考えられます。
当社の2025 ワークモニター調査によると、3分の1以上の従業員が「現在の職場では、求める研修・育成の機会が十分に提供されていない」と感じています。AIを活用したL&Dの強化は、社員のスキル向上につながるだけでなく、企業の競争力を高める上でも有効です。ただし、AIはあくまで補助的な役割であり、キャリアパスの設計においては、従業員との長い関係を築いてきた上司や人事のサポートが欠かせません。AIの活用を検討する際には、自社のAIポリシーを必ず確認しましょう。
ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)領域で広がるキャリアの可能性
DEIスキルの需要は引き続き大企業で求められているものの、以前ほどの高まりは見られません。2022年から2024年にかけて、DEI関連の求人掲載数は約43%減少しており、2023年にはMetaやGoogleといった大手テクノロジー企業がDEI施策の縮小を進めました。
しかし、職場の多様性はますます進んでおり、DEIは依然として従業員にとっても重要な要素の1つです。この分野のキャリアには今後も成長の可能性があります。ワークモニターの調査では、全回答者の4分の1以上が「現在の職場や転職を考える際に、企業のDEIに対する価値観が非常に重要」と回答しています。また、約60%の回答者が「自社のDEI施策はまだ十分ではない」と感じていることが明らかになりました。
優秀な人材を惹きつけ、従業員の意識の変化に対応するために、企業は今後もDEI施策を推進していく必要があります。その流れの中で、カルチャーマネージャーやダイバーシティコーディネーター、チーフダイバーシティオフィサー(CDO)**といった専門職がより一般的になり、DEIに関心を持つ従業員にとって魅力的なキャリアパスとなる可能性があります。
ワークモニター 2025で未来の働き方を読み解く
現在・未来の従業員がキャリアパスの進展やL&D、スキル習得について何を求めているのか、詳しく知りたい方は、ぜひ最新のワークモニターレポートをダウンロードしてください。
ランスタッドが世界中の26,000人以上の従業員を対象に実施した調査から、HR部門が優秀な人材を惹きつけ、最適なキャリアパスへ導くために注力すべきポイントが見えてきます。