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手探りの「介護離職」防止策 企業も社員も制度理解が不足
企業と社員の双方にとって離職は避けたいのが実情
人手不足が深刻化する中で、家族らの介護のために会社を辞める「介護離職」が大きな社会問題になっています。政府もさまざまな法的制度を設けて防止に懸命ですが、今のところ大きな効果を上げているとは言えません。厚生労働省によると、家族の看護・介護を理由に離職した人は、2012年で10万1100人、17年で9万9100人、そして22年が10万6200人(いずれも「就業構造基本調査」による)で推移しており、毎年、10万人前後がやむなく離職しているものと推定されます。
離職者で目立つのは男女の比率。06年度当時は男性が17.7%でしたが、年々比率が上昇し、22年は24.7%に上昇。また、年代別では22年の場合、「60~64歳」が最多の21.4%を占め、以下、「55~59歳」の17.4%、「50~54歳」の15.3%で、この三つの年代だけで過半数の54%を占めています。
高齢社会の進展とともに介護が必要な高齢者が増え、高齢者の子供らが仕事をしながら親の介護にあたり、中には離職を余儀なくされる人もいます。その中心は50~64歳の世代で、近年は男性の離職者が増えていることが、調査からわかります。男性の場合、この世代は企業では管理職など重要な役職に就いている人が多く、企業にとって離職は大きな戦力ダウンになります。代わりの人材を探すにしても、専門性の高い人材が必要なことから、採用コストはかなり大きくなると言われています。
離職する側にとっても、介護期間が見通しにくいうえ、年齢的に復職の機会はほぼ閉ざされていのが実態です。この点が出産・育児で離職する女性との最大の違いといえます。企業にとっても社員にとっても、できれば離職は避けたいのが本音です。
こうした事情を受けて政府も育児・介護休業法(育介法)の改正を重ねてきました。主要なものでは(1)介護休業を最大93日、最大3回の分割取得ができる(2)介護休暇を年間5日取得でき、時間単位の取得も可能(3)残業の免除や時間外・深夜労働の制限(4)介護休業期間中に時短勤務やフレックスタイムなどの選択措置義務の採用、などがあります。しかし、こうした制度が広く浸透しているとは言い難く、離職した人に理由を聞くと、仕事を続けたかったが「勤務先の支援制度の問題や休業しにくい雰囲気があった」が43.4%に上り、同様に「介護保険や障害福祉サービスなどが利用できなかった、利用方法がわからなかった」が30.2%、「家族や親族の希望」が20.6%となっています。
早期・希望退職募集は36社、約3千人
東京商工リサーチが12月13日発表した「早期・希望退職者募集」によると、今年1~11月に募集した上場企業は36社、判明した対象者は2905人で、企業数は前年同期より1社増えただけの"小康状態"となっています。情報通信が前年より7社多い10社で、初めて最多となりましたが、対象者は前年の半数程度にとどまっています。次いで、アパレル関連と医薬品が5社ずつ。一方、コロナ禍で募集が相次いだ航空・鉄道を含む運送はゼロでした。