(後編)特集・2023年4月施行! 企業が注目すべき「変わる法律」

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企業に対応が求められる4月以降にスタートする新制度。後編では「個人情報保護法」などをはじめ、今春から順次施行される企業必見の5つの法改正についてお伝えします。

【前編】はこちら

【後編】(3月1日掲載)

 

 

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<個人情報保護法>地方公共団体も全国的な共通ルールに

改正個人情報保護法に伴い、4月から地方公共団体等の個人情報保護制度に全国的な「共通のルール」が敷かれます。
これまでは、民間と行政機関でそれぞれ別の法律が制定され、運用されていました。

✓  民間企業は「個人情報保護法」
  国の行政機関は「行政機関個人情報保護法」
  独立行政法人等は「独立行政法人等個人情報保護法」
✓  地方公共団体等は「地方公共団体ごとに定める個人情報保護条例」

ステップ1:上記の国の行政機関と独立行政法人等は、2022年4月に民間企業と同じ「個人情報保護法」に統合されています。
ステップ2:4月からは、地方公共団体も「個人情報保護法」が適用となります。

今春の「完全統合」によって全国的な共通ルールが敷かれ、個人情報保護委員会が一元的に制度を所管できることになります。民間企業にとっては、行政関係の入札時や共同事業プロジェクトなどの際に個人情報保護に関するスムーズなすり合わせや調整が期待されます。

※個人情報保護委員会:個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護するために個人情報の適正な取り扱いの確保を任務として、内閣府が2016年に設置。

参考:個人情報保護委員会「令和3年 改正個人情報保護法について(官民を通じた個人情報保護制度の見直し)」

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<道路交通法>自動運転「レベル4」解禁、無人の巡回バスなど想定

特定の条件下で、運転を完全に自動化する自動運転「レベル4」の運行許可制度がスタートします。自動配送ロボットを運行する事業者の届け出制も導入し、いずれも4月に解禁となります。

自動運転のレベルは法律で5段階に分類されています。

【レベル1】運転主体はドライバー:運転支援(衝突被害軽減ブレーキ等)
【レベル2】運転主体はドライバー:高度な運転支援(自動の追い越し等)
【レベル3】運転主体はシステムとドライバー:特定条件下で自動運転、運転継続が困難な場合はドライバーが対応
【レベル4】運転主体はシステム:走行ルートなど特定条件下で完全な自動運転
【レベル5】運転主体はシステム:あらゆる条件下で完全な自動運転

この「レベル4」は、人口減少が進む地域で遠隔監視のもと特定のルートを無人で走る巡回バスなどを想定。事業者が地域で移動サービスを始める場合、都道府県公安委員会に運行計画を提出して許可を受けることを義務付けます。

また、自動配送ロボットは「遠隔操作型小型車」に分類され、最高速度は時速6キロ以下。歩道を走行するなど歩行者と同じ交通ルールを適用。外部から見て遠隔操作と分かるように示すマークや非常停止用のボタンの設置も義務付けます。

自動運転技術の進化によって、企業は新たなサービスの創造や提供のほか、異業種による共同プロジェクト事業などの展望が広がります。

参考:警察庁「自動運転」

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<消費者契約法>契約取消事由の追加など

6月に施行される改正消費者契約法に伴い、消費者保護に関する3つのルール変更があります。いずれも消費者を守るために「グレーゾーン」を明確に“違反”とするものです。


【1】契約の取消事由を追加
勧誘する意思を告げずに退去困難な場所へ連れ出して勧誘したり、第三者に相談しようとする消費者を脅して妨害したりした場合は、新たに契約の取消事由となります。 
 
【2】免責の範囲が不明確な条項が無効に
事業者の債務不履行・不法行為による責任を免除する条項のうち、損害賠償責任の免除が軽過失のみを対象としていることを明記していない条項は無効となります。
 
【3】事業者の努力義務を拡充
解約料の説明、契約に関する情報提供などの努力義務が法律に明記されます。


これらのルール変更は、消費者にさまざまなサービスを提供している企業にとって留意すべき内容です。現在のサービスが新たな基準に対応できているか総点検が必要となります。


参考:消費者庁消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律(令和4年法律第59号)(消費者契約法関係)等について」

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<電気通信事業法>届け出制の対象拡大やCookie規制など

6月施行の改正電気通信事業法に伴い、インターネット事業を主な対象として新たな規則変更が実施されます。

【1】届け出制の対象拡大

一定の条件に該当する事業者は総務大臣へ届け出が必要となり、「電気通信事業者」として各種ルールが適用されます。

 
1、検索情報電気通信役務:
入力されたキーワードに対応して、そのキーワードを含むウェブページのURLなどを出力する電気通信設備を提供する電気通信役務のうち、利用者の範囲・利用状況を勘案して、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるもの。例えば、Googleなど利用者数の多い大規模な検索サービスが挙げられます。
 
2、媒介相当電気通信役務:
不特定多数の者による投稿を記録・送信する電気通信役務のうち、利用者の範囲・利用状況を勘案して、利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるもの。例えば、InstagramやTwitterなど利用者数の多い大規模なSNSが挙げられます。

 

【2】特定利用者情報の取り扱いに関する義務の新設

「特定利用者情報」という概念を新設。「特定利用者情報を適正に取り扱うべき電気通信事業者」として総務大臣に指定された事業者には、「特定利用者情報」の取り扱いに関する義務が課されます。

「特定利用者情報」とは、通信の秘密に関する情報(個人間の電話やメールなどの通信内容)などのほか、利用者を識別することができる情報(利用者に付与されるID番号)などを指します。



【3】Cookie規制の新設

Cookie規制(利用者に関する情報の外部送信に対する規制)が新設され、この規制が適用される事業者は、

(1)総務省令で定める事項を利用者に通知する
(2)総務省令で定める事項を利用者の知り得る状態に置く――のいずれかの措置を講じなければなりません。

メールやSNSなどの通信手段は、企業間でも個人間でも事業や生活に身近なツールとなっています。新たな規制やルールの変化に敏感に対応する必要があります。

参考:総務省 総合通信基盤局「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」

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<消費税法>インボイス制度の導入

10月から改正消費税法に伴い、「インボイス制度」が導入されます。

「インボイス制度」は、商品などに課されている消費税率や消費税額など、法令が定めた内容を明記した書面を交付する制度。この書面を「適格請求書=インボイス」と呼んでいます。

背景:2019年10月の消費税率の引き上げ(8%→10%)によって軽減税率が導入され、10%と8%の2つの税率が混在することになったことを受けて検討・導入された制度です。

狙い:どの商品に、どちらの税率が適用されているかを明確にして、正しく消費税の納税額を算出できるようにインボイスは発行されます。

インボイスを交付するには、事業者は税務署にインボイス発行事業者の登録申請書を提出し、「適格請求書発行事業者」として登録を受けなければなりません。

留意点:買った側が仕入税額控除の適用を受けるためには、商品を売ったインボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存が必要です。
※仕入税額控除:企業が消費税を納付する際、課税対象となる売上の消費税額から課税対象となる仕入れの消費税額を差し引いた額を納付する仕組み。

参考:国税庁インボイス制度の概要

 

筆者プロフィール

株式会社アドバンスニュース
専務取締役報道局長
大野 博司 氏
 
1970年、青森県出身。中央大学大学院戦略経営研究科(MBA)修士。
1994年、日本新聞協会加盟の地方紙に入社。社会部、教育、核燃料サイクル、水産、港湾物流、政経部を経て2004年に報道デスクに就任。
'05年に東京支社で国会取材担当兼論説委員に就き、主に厚生労働省と経済産業省、内閣府の分野を取材。海外取材は、労働行政や水産・物流をテーマに韓国、中国、オーストラリアを訪問。
'10年にインターネット報道を主体とする株式会社アドバンスニュース(日本インターネット報道協会加盟)の設立に参加し、現職は専務取締役報道局長。
労政ジャーナリスト(日本外国特派員協会)として長年国会や政府関係者に取材、国の労働政策に造詣が深い。

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