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ビジネス分野の人材育成、政府 総合経済対策に盛り込む方針
「労働移動(転職)の円滑化」「リスキリング」など
「新しい資本主義」を掲げる岸田政権が、ビジネス分野の人材育成に乗り出します。
6月に閣議決定した「グランドデザイン及び実行計画」の中から、早期実施が必要な重点項目として人材育成を取り上げ、この秋に取りまとめる総合経済対策に盛り込む見通しです。
人材の“底上げ”には時間が掛かることから、効果が表れるのは数年先とみられ、腰の据わった政策の実現が求められます。10月上旬に開いた新しい資本主義実現会議で、政府は重点項目のトップに「人への投資と分配」を挙げました。
具体的には「労働移動(転職)の円滑化」「リスキリング(学び直し)の促進」「構造的な賃金引き上げ」を例示。
「分厚い中間層」の形成には持続的な賃上げが不可欠であり、そのためには労働市場の改革が必要という基本的な認識を示したものです。狙いは、成長が見込まれる産業・企業への労働者の転職機会を増やし、「失業なき労働移動の円滑化」を促すこと。
そのためには、他の産業・企業でも通用する高スキル人材を育てるためのリスキリング投資を支援し、労働生産性の向上につなげて賃金アップを図ることが必須です。さらに、年功制の職能給から日本に合ったジョブ型の職務給への移行など、労働移動の円滑化に向けた指針を来年6月までに策定。硬直化している現状を揺り動かしたい考えです。
賃上げについては、来年の春闘で物価上昇率をカバーする賃上げを目標に労使で議論するよう求めています。
最低賃金の1000円以上への早期引き上げ、社会保険料の自己負担の線引きとなる「130万円の壁」を解消する保険適用の拡大などもうたっています。リスキリングについては、現在、「3年間で4000億円」としている公的支援を「5年間で1兆円」に大幅拡大し、大幅に不足しているデジタル人材の育成を現在の100万人目標から26年度までに300万人に拡大。企業によるサバティカル休暇(長期勤続者に対する長期休暇)の導入促進なども盛り込む予定です。
総合経済対策は現下の円安・物価高への対応が焦点となり、電気料金の値上げ抑制策などに社会の目が向きがちですが、これまでもっぱら民間主導で進んでいた「人材育成」に政府が乗り出す意義は大きいとみられます。
「物価高倒産」倍増の159件、22年度上半期
帝国データバンクが発表した「物価高倒産」動向調査によると、22年度上半期(4~9月)は159件に上り、これまで最も多かった21年度上半期の75件の2倍以上になったことがわかりました。
業種別では建設業が40件で最も多く、次いで運輸・通信業が37件、製造業が29件、卸売業が24件など。
全体の7割を負債額5億円未満の中小企業が占めています。政府の総合経済対策の効果がすぐ表れるかどうかは不透明な部分も多いことから、同社は「年末にかけてさらに増える可能性がある」と予想しています。
「物価高倒産」は原油などの燃料、原材料などの仕入れ価格上昇や、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できない値上げ難などによる倒産です。