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副業・兼業容認へ企業は動くか ガイドライン改定の効果は?
来年3月期決算企業の発表から本格的に始動
厚生労働省が7月に告示した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定版は、企業に対して従業員の副業・兼業を認めているかどうか、認めていない場合はその理由を開示するよう求めています。この動きは、日本企業に根強い正社員中心の「メンバーシップ型」労働慣行に風穴をあける試みの一つとして注目されています。副業・兼業については2018年1月に策定したガイドラインですでに枠組みを示しており、20年9月には複数の企業で仕事をする場合の労働時間の通算管理方法を明瞭化しています。
ガイドラインには、会社員の副業・兼業は原則自由なことや、企業側は社員が「企業秘密の保持」などの要件を満たしていれば、禁止や制限はできないことなどを定めています。副業・兼業の可否は基本的には法律で決めるものではなく、各企業の裁量に任され、就業規則で定めているのが一般的。法的には本業と副業を通算した労働時間管理や労働安全衛生上の責任の所在などに限定されます。
政府が副業・兼業を推進する理由は「労働者が適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図ることを促進するため」であり、副業・兼業を通じて成長分野への人材移動を促す狙いがあります。しかし、広がりは鈍く、岸田政権が今年6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン」の中に「副業・兼業の拡大」を盛り込み、企業に対して情報開示を促すことにしたもの。来年の3月期決算企業の発表から本格的に始まる見通しです。
戦後、多くの日本企業は終身雇用と年功序列を前提にした「メンバーシップ型」の労働慣行を中心に据えてきたため、社員のキャリアアップや賃金アップなどは自社内で“完結”できましたが、もはやそれが不可能になってきたことを認めようとしない姿勢が見え隠れします。
副業・兼業によって新たなスキルを身に着け、テレワークの普及を通じて自社以外の企業との接触や人脈を広げる機会が増えれば、政府が狙う「成長分野への人材移動」につながるきっかけにはなり得ます。副業の制限・禁止の理由を開示することが実質的に義務化されることで、その企業が社員のキャリア形成にどう臨んでいるかを測るバロメーターとして活用することも可能です。
「物価高倒産」が急増、7月最多の31件
帝国データバンクが8月8日発表した「物価高倒産」動向調査によると、7月の倒産は31件発生し、5、6月の20件台からハネ上がりました。今年1~7月の累計でも116件に達し、前年の年間138件を大きく上回るペースで増え続け、過去5年でも最多ペースです。
「物価高倒産」企業は、原油などの燃料・原材料などの仕入れ価格の上昇、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった「値上げ難」などで法的整理となった企業と定義。今年の場合、運輸業の33件と建設業の27件で、卸売業の18件、製造業の15件などが続きます。同社は「今後は卸売りや小売り業種でも増える可能性がある」と予想しています。