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米国の反DEIの流れで改めて問われるビジネスにおけるED&Iの重要性と覚悟
今さら聞けない「ED&I」とは?
公平性、多様性、受容・包括によって事業を成長させていく
ED&Iは「エクイティ(Equity/公平性)、ダイバーシティ(Diversity/多様性)、&インクルージョン(Inclusion/受容・包括)」の略称です。
性別や年齢、障がい、国籍、ライフスタイル、職歴、価値観などにかかわらず、それぞれの個性を尊重し合い、それぞれに合わせた支援を行いながら働くこと。またそれによってメンバーが共に成長し、事業を成功させていく考え方を指します。
DE&Iと略されることもありますが、ランスタッドは世界でもっとも公平で専門性を備えた人材サービス企業を目指しているため、あえてEquityを先頭に置き「ED&I」と称しています。
米国ではなぜ「反DEI」の動きが起こっている?
ED&Iへの取り組み縮小・撤退が大きな話題に
小売大手のウォルマートは、2024年11月にED&Iへの取り組みを縮小すると発表しました。またトヨタ自動車や日産自動車、フォードはED&Iを評価する企業平等指数への参加を取りやめると発表しています。2025年1月には米マクドナルドが発表したダイバーシティ目標を撤回。第二次トランプ政権が、連邦政府とその関係機関のED&I政策を廃止するなど、世界中でED&Iへの取り組み縮小・撤退が大きな話題となっています。
ED&Iそのものへの反発とは言えない側面も
この動きに大きな影響を与えているとされる政治評論家で活動家のロビー・スターバック氏は「ED&Iの取り組みは、白人男性などに対する逆差別につながる」と主張しています。「ED&Iの取り組みによってマイノリティが過度に優遇されてしまい、白人男性などのマジョリティがその影響を被っている」という考え方が背景にあると思われます。
このように、米国の反DEIの動きはED&Iそのものと反目するものではなく、急激な変化の中で極端な取り組みが生まれたことや、既得権益が脅かされたことへの不満や反発と見られています。
「ED&I自体がなかったことになる」可能性は低いと見られる
こうした動きが起こっている一方で、引き続きED&Iへの取り組みを進めているコストコやアップルなどの大手企業も見られます。また、取り組みを縮小・撤退した企業からも「多様性を重視する姿勢は変わらない」といった声が挙がっています。米国の動きに追随してED&Iの考え方や取り組み自体が廃れる可能性はおそらくそう高いものではなく、公平な環境が整わないことによる一時的な動乱はあるにせよ、世界的にED&Iを重んじる流れは大きくは変わらないと見られています。
ED&Iは日本企業にも重要なのか? 取り組みのポイントは?
イノベーションのチャンスを握っている
ED&Iへの取り組みは、日本企業においては社会的に担わなければならない「負担」と認識されてしまうこともあります。しかし、ED&Iへの取り組みを本来の意義に基づいて進めていけば、多様な人材が不安なく働けることで組織の心理的安全性が高まり、従業員は安心して多様な視点からのアイディアを提案できるようになります。つまり、企業にとってイノベーションのチャンスという事業成長のための「追い風」を吹かせることができるのです。
人材確保のために不可欠である
ランスタッドが実施した最新のグローバルリサーチ「ワークモニター2025:世界の働く意識調査」によると、「職場で判断や差別を恐れることなく自分の意見や立場を共有することができなかったため、仕事をやめたことがある」と答えた人の割合は、2024年の16%から2025年には27%に増加しています。地域別で見るとアジア太平洋地域では30%にのぼり、ラテンアメリカの32%に次いで多くなっています。「ED&Iへ積極的に取り組んでいるかどうか」は、働き手にとってその企業で働くかどうかを判断する重要なファクターになりつつあるのです。
また、人手不足がさらに加速すると見られる日本では、DXでの業務効率化と併せて、ED&Iの視点でより広く働き手を迎え入れ、それぞれが自分らしく活躍できる働き方で生産性を向上していくことも欠かせないでしょう。誰もが心地よく働ける職場は、企業が従業員へもたらす価値である「EVP(従業員価値提案)」にもつながります。
「課せられている」という意識を捨てることがポイントに
先の通り、ED&Iを社会的に課せられた「負担」や、情報開示のために一定水準を満たすべき「義務」と捉えていると「しかたなくやらされている」、「最低限の負担で済ませたい」といった感情から反動が起きやすくなります。本来の意義に沿ってED&Iへの取り組みを推進していくためには、ED&Iが企業として成長していくために重要であると気づくことが大切です。そのためにも、働き手や投資家などのED&Iへの関心の高さや、生産性への影響の大きさなどを実感できる客観的なデータを活用するとよいでしょう。
形だけのED&Iではなく、それぞれの個性に目を向けて
多様性を受け入れるとは「さまざまな境遇の人を雇う」形だけのことではありません。むしろ「それぞれの個性を柔軟に捉え、尊重する」意識こそが、多様性を受け入れる上での本質とも言えるでしょう。まずは自分の中に同質性への無用なこだわりや「変えたくない」意識がないか、問いかけるところから始めてもいいかもしれません。
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