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いつまでに・誰に伝える? 派遣社員の契約更新を「しない」ときに守るべきルール
派遣社員の契約を更新しない場合は、1ヵ月以上前に派遣元への申告が必要です。
雇止めと途中解除の違いや、雇止め法理、3年ルールなど、押さえておきたいルールをご紹介します。
「派遣社員の契約更新をしない」、いつまでに・誰に伝えるべき?
派遣社員との契約を更新しない場合、以下の(1)もしくは(2)のいずれかに該当すると、派遣元(人材派遣会社)は派遣社員に「契約期間満了の30日前までに」事前予告する義務が生じます。
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したがって、派遣先企業が契約を更新しないと決めたときには、1ヵ月以上前に派遣元へその旨を伝えなければなりません。
なお、更新契約が3回未満、あるいは、雇用期間が1年以下の場合は事前予告の義務がありません。しかし、労働者の就業機会確保のため、余裕をもって予告することが望まれます。
「雇止め」と「中途解除」の違い
契約期間満了のタイミングで契約更新しないことを「雇止め」、契約期間満了を待たず期間中に解約することを「中途解除」といいます。後述しますが、「中途解除」はやむを得ない事由がなければ認められません。
「雇止め」か「中途解除」かで、派遣先企業がすべき対応は異なります。違反するとトラブルにつながりかねないため、それぞれのポイントを押さえておきましょう。
契約期間満了(雇止め)によって契約更新しない場合のポイント
契約期間が満了する場合は、派遣元による雇止めが可能です。30日前の事前通告義務が生じる派遣社員の場合は、派遣先企業もそれを見越して余裕をもって雇止めする旨を伝えましょう。
一般的に、契約満了時期が近づくと派遣元から連絡がきますから、そのタイミングで契約を更新する・しないを伝え、所定の手続きを行えばOKです。
派遣社員は雇止め理由の明示を求めることができる(雇止め理由の明示)
派遣契約を更新しない場合、派遣社員はその理由の明示を求めることができます。これに応じるため、派遣元が派遣先企業に対し情報提供を求めることがあります。派遣先企業は情報提供ができるよう、派遣社員の勤務状況や、雇止めの理由となる行動、対応した履歴などを記録しておきましょう。
雇止めの理由は、契約期間満了とは別の理由が必要です。とはいえ、「客観的で合理的な理由があり、社会通念上からも相当である」ことが証明できれば問題ありません。以下に、正当と認められる雇止め理由の例を示します。
【正当と認められる雇止め理由の例】
・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
・担当していた業務が終了・中止したため
・事業縮小のため
・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため 等
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厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」より引用
中途解除ができるのはやむを得ない事由のみ
契約期間満了で終える雇止めとは違い、契約期間中の契約解除(=中途解除)は原則としてできません。
ただし、やむを得ない事情(経営悪化・業務縮小など)がある場合に限り、中途解除が可能です。ある程度の猶予期間を設けて派遣元に中途解除の申し入れを行うようにしましょう。
また、派遣元および派遣先企業は、中途解除となった派遣社員の生活が守られるよう対応しなければなりません。派遣先企業においては、以下のような対応が求められます。
【派遣社員の中途解除にあたり、派遣先が講じるべき措置】
・派遣社員の新たな就業機会の確保(関連会社への就業あっせんなど)
・就業機会の確保ができない場合は、派遣元に生じた損害を賠償(休業手当相当額)
・契約解除について相当の猶予期間を設けて申し入れなかった場合は、賃金相当額以上を派遣元に賠償
・派遣元と協議し、そのほか適切な善後処理を講じる
・派遣元から請求があったときは、中途解除の理由を明示する
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押さえておこう!契約更新に関わる3つのルール
派遣労働契約は、労働契約法や労働基準法などが関わりあっており非常に複雑です。そのため、派遣先企業として問題ない対応だと思っていても、法的には問題となることがあります。
ここでは派遣契約更新に関わる代表的な3つのルールについて、知っておくべきことを簡単にご紹介します。
雇止め法理
有期労働契約においては、派遣元が更新しない場合は契約期間満了で雇用が終了します(雇止め)。「雇止め法理」とは判例上のルールで、労働者保護の観点から雇止めに対して一定の制限を課したものです。
以下の①か②いずれかの要件を満たす有期労働契約の場合、「雇止め法理」の対象になります。
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※2.いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、契約期間の満了時に更新年数や更新回数の上限などを使用者が一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに合理的な理由の存在が否定されることにはならないと解されます。
厚生労働省「労働契約法改正のポイント」より引用
要件①か②のいずれかに該当し、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は雇止めが無効となり、これまでと同一の労働条件で契約が更新されます。
「雇止め法理」の適用には、派遣社員による有期労働契約の更新の申し込みが必要です。この申し込みとは、派遣社員が雇止めに反対する意思が派遣元に伝わればよく、「(雇止めは)イヤだ、困る」と言うなどでもかまわないと解釈されています。
派遣法の3年ルール
「派遣法の3年ルール」とは、「有期雇用の派遣社員は、同じ職場で働けるのは原則的に最大3年まで」とする制限のことです。派遣3年ルールとも呼ばれます。
「派遣法の3年ルール」のポイントは、以下の3点です。
・「派遣先事業所単位の期間制限」と「派遣労働者個人単位の期間制限」がある
・3年ルールに抵触する日、つまり3年を迎える日の翌日を「抵触日」と呼ぶ
・「抵触日」には派遣社員は引き上げていなければならない
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「派遣先事業所単位の期間制限」とは
「同一の事業所に対して派遣できる期間は3年が限度」とする制限です。例えば、ある事業所で派遣社員Aが2年間働き、新しく派遣社員Bを受け入れる場合、派遣社員Bは基本的に1年間しか働いてもらうことができません。
3年を超えて派遣社員を受け入れたい場合は、経過する前に派遣先企業の事業所の過半数労働組合等から意見を聞くことで、さらに3年間延長できます。以降は3年ごとの意見聴取で延長が可能です。
なお、ここでいう事務所の定義は、「工場、事務所、店舗等、場所的に独立していること」など、雇用保険の適用事業所の定義と基本的に同じです。
「派遣労働者個人単位の期間制限」とは
「同一の派遣社員を派遣先企業の同一の組織単位(いわゆる課やグループ、チーム)に対し派遣できるのは3年が限度」とする制限です。例えば、ある事業所の庶務課で派遣社員Aが働く場合、3年を超えて庶務課へ派遣社員Aを派遣することはできません。
同じ派遣社員に働いてもらいたい場合は、その派遣社員の意思を確認した上で、「派遣先企業が正社員に登用する」「組織単位(課など)を変える(異動したにもかかわらず業務内容が同じなのは違反となる)」「派遣元が派遣社員と無期雇用契約を結ぶ」などの対応が必要です。
派遣3年ルールの例外
「派遣先事業所単位の期間制限」と「派遣労働者個人単位の期間制限」において、以下のようなケースでは期間制限がかかりません(期間制限の例外)。
・派遣元に無期雇用されている派遣社員
・派遣社員が60歳以上(3年経過時点で60歳以上であればよい)
・終期が明確な有期プロジェクト業務
・日数限定業務(1ヵ月の勤務日数が所定の基準以下)
・産前産後休業、育児休業、介護休業などを取得する労働者の代替要員としての派遣
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無期転換ルール(5年ルール)
企業と契約期間に定めがある労働者(派遣社員、契約社員、パート、アルバイトなど)の間で契約期間が5年を超えると、労働者に無期転換申込権が発生します(労働契約法第18条)。無期転換申込権の発生後、労働者が無期転換の申し込みをした場合、会社はこれを断ることができません。これがいわゆる派遣の「5年ルール」です。
つまり、派遣契約の場合は、同一の派遣元で有期労働契約が更新され通算5年を超えたとき、派遣社員自身が派遣元に申し込むことによって無期労働契約に転換でき、派遣元はこれを拒否できません。
派遣元と派遣社員との契約上のルールなので、派遣先企業には無関係のように思えますが、派遣社員が無期労働契約になると同一の派遣先で3年以上働けるようになります。なお、常用型派遣(派遣元から見て正社員もしくは契約社員)は、そもそも無期労働契約なので無期転換ルールの適用外です。
厚生労働省「無期転換ルールのよくある質問(Q&A)」より引用
人材派遣の相談は、信頼できる人材派遣会社へ
派遣社員の生活や雇用機会を守るため、派遣社員の雇用には一定のルールが設けられていますが、その仕組みは複雑です。信頼できる人材派遣会社を選ぶことはもちろん、雇止め法理・派遣法の3年ルール・無期転換ルール(5年ルール)などを正しく理解しておくことが、トラブルの防止につながります。
契約更新について検討する際には、現在の契約書の内容をチェックするなどして、どのような条件になっているか確認してみるとよいでしょう。また、派遣社員の勤怠や行動、指導内容などの履歴を保管しておくことも大切です。