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ワークライフ・ラボ:週休3日制、こうすればできます JTBにみる大胆な働き方改革
第2回ワークライフ・ラボ
会社から「週休3日、取れますよ」と言われたら、あなたは取得しますか。「3日も休んで何をしようか」「給料はどうなるんだろう」と思いはあれこれ……。というのは“昭和の発想”かもしれません。ランスタッド主催の無料ランチタイム・ウェビナー「ワークライフ・ラボ」(通称ワクラボ)は8月31日、旬の話題「週休3日制も可能!?新たなJTBワークスタイルとは」をテーマに取り上げました。
ナビゲーターは中央大学大学院(ビジネススクール)の佐藤博樹教授。タイトルのとおり、先進事例としてJTBから常務執行役員(人事担当働き方改革担当)渡辺健治さんをお招きし、ランスタッドから社長兼COOの猿谷哲さんが参加しました。
まず、佐藤さんが「週休3日制」について、制度的な類型を説明。普通は1日8時間、週40時間で、5日働いて2日休み。この標準タイプを発展させて休みを1日増やすもので、一つの方法が週32時間の所定労働で給与を5分の4に減らす方法。もう一つは変形労働時間制を導入し、1日の所定労働時間を10時間として週の所定労働時間を変更しない方法があります。これは通勤時間が短い人や在宅勤務が多い働き方では可能性があります。しかしそれ以外では1日10時間労働はきつそうです。もちろん1日の所定労働時間が7時間など短い場合では、週の所定労働時間を変えずに週休3日制を導入しやすいでしょう。
ただ、働き方が多様化して、例えば働きながらビジネススクールなどで勉強したい人や、夫婦共働きで夫と妻が別々の休日を1日取れば育児なども楽になり、週休3日のメリットが生まれて、働く人の生活時間を豊かにできるわけです。
そこで、週休3日制に踏み出したJTBの渡辺さんに取り組みぶりを解説してもらいました。その前提として、新型コロナで大打撃を受けた旅行業界の苦境ぶりを説明。これまで、米同時多発テロなど何度かの有事災害を経ながら、旅行者が順調に増え続けてきたことから、「旅行産業=平和産業」と強調。それが新型コロナの世界的拡大によって、アウトバウンド需要(日本から海外)、インバウンド需要(海外から日本)とも2020年は激減しました。さらに、日本の場合は厳しい水際対策などで、今現在も需要は回復していません。
出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計・法務省「
この厳しい状況に対して、JTBでも新卒採用の中止や人材の流出など、深刻な事態に直面しました。社員の安定した定着化のためにもアフターコロナを見据えたグループのワークスタイル変革を適時打ち出したのです。具体的には、転居転勤の伴わない「ふるさとワーク」、副業を可能とするガイドラインの制定、自律型創造型人財の育成を目指して最大2年の休職が可能な「自己成長支援休職制度」の制定、そして週休3日を可能にする「勤務日数短縮制度」など、思い切った内容が並んでいます。
勤務日数短縮制度は「年間所定労働時間=1800時間」という一律の働き方だけでなく、社員のワークライフバランスを支援して効率的に成果をあげることを目指したもので、労働時間を年間1620~1260時間に短縮する5パターンを用意。個々の社員の都合に応じてパターンを選択し、その分の給与を減額します。そのうち、年間1440時間、勤務日数が最大201日、休日数164日以上が週休3日のパターンとなり、このパターンを選ぶ社員が多いそうです。
渡辺さんによると、勤務日数短縮制度を含む一連の変革は、アフターコロナを見据えた長期的な政策で、そのためには「会社が変わる」「社員がワークスタイルを自ら変える」ことが重要であり、斬新な内容に社内だけでなく、就活生ら関心も非常に高いそうです。
(編集部の声:就活生に限らず、“リベンジ旅行”にうずうずしている社会全体の関心も高そう。「週休3日」用に、とっておきのツアープランをぜひ教えてください)
渡辺さんの話を受けて、猿谷さんはランスタッドが2017年から導入している「フレキシブルワーキング(フレワク)制度」を説明。働く時間や働く場所にとらわれない柔軟な働き方を目指して、勤務時間を午前7時~午後10時の間に設定できる「スーパーフレックス勤務」を導入したのに続き、20年2月からはオフィス勤務と在宅勤務を選べる制度を全社で実施しました。
スーパーフレックスは労働意欲の高まりや生産性の向上、在宅勤務はワークライフバランスの改善効果があり、なによりも優秀な人材の獲得・定着に結び付いて、週休3日で働いている社員もいます。一方で、スーパーフレックスは社員の働き方の意識改革、在宅勤務はチームエンゲージメント維持・向上やメンタルヘルスといった課題が出てきており、組織によるバラつきも見られるといいます。
このため、猿谷さんはポール・デュプイCEOと一緒に支店を回って趣旨徹底を図る「ロードショー」も実施中だそうです。
(編集部の声:日系企業がなかなか踏み切れない施策ですが、支店回りというコミュニケーション重視の姿勢は洋の東西を問わず、大事なことなんですね!)
この後、3人から相互に質問が飛び交いました。
「週休3日の場合、社員の自己管理に問題は起きないんですか?」(佐藤さん)
「最大の問題はコミュニケーション不足にあるので、マンツーマンで話し合います」(猿谷さん)
「人事担当内では人事企画チームが主体的になり調査などを重ねまして、とにかく環境変化に順応する人事制度に前向きに積極的に取り組むようにし、“お堅い人事部”をやめました」(渡辺さん)
「社員が自ら働き方を変える、という動機は何だったんですか?」(猿谷さん)
「制度を作るのは会社ですが、活用するのはあくまでも個々の社員。週休3日で働いている社員の場合、自分のワークライフバランスを真剣に考えている人が多いです」(渡辺さん)
最後に、佐藤さんが「これまで会社が持っていた働く場所や労働時間に関する人事権の在り方が変わってきていますね。企業もビジネスモデルを変えながら、新しい働き方を導入していく努力が必要な時代になったということなのでしょう」と結びました。
ワクラボ、次回以降のお知らせ
第3回は9月15日(木)12時10分から、「テレワークをやめる企業と続ける企業~近未来社会の働き方と法」です。ゲストは神戸大学法学研究科の大内伸哉教授。コロナ禍で一時期広がったテレワークも、今は縮小傾向にあります。気鋭の労働法学者と佐藤さんの対談は、そんなテレワークが定着するかどうか、興味深い内容になりそうです。
第二回ワークライフ・ラボ 登壇者
渡辺 健治
猿谷 哲
取材・編集 アドバンスニュース