人事考課・評価で用いられるフィードバック。フィードバックには型があり、相手や環境に合わせて型を選択し意識することで、漠然とフィードバックするよりも効果を高めやすくなります。
ここでは主なフィードバックの型(フレーム)である「SBI型」「ペンドルトン型」「サンドイッチ型」について、それぞれの具体的な話の運び方や、気をつけるべきポイントをみていきましょう。
なお、フィードバックの目的や効果、使い分けのポイントについては前編でご紹介していますので、そちらもご参考ください。
SBI型とは、Situation(状況)、Behavior(行動)、Impact(影響)の頭文字を取ったものです。頭文字の順番どおりに「どのような状況下で」「従業員・部下の行動が」「どのような影響として現れたか」についてフィードバックを進めます。
SBI型フィードバックの流れ[状況] 時間や場所 「このまえ~」といったあいまいな表現は避けて、いつ・どこでの話なのかを明確にする (例)昨日の◯◯のミーティングの席で… ↓ [行動] 従業員・部下の具体的な行動・発言 主観や観測のない客観的な事実 (例)質問しにくい雰囲気だったが、疑問点をはっきりと発言してくれた。 ↓ [影響] 行動がどのような結果をもたらしたのか (例)あなたの発言をきっかけに、意見交換が活発に行われました。おかげで発展的な話ができ、生産性のあるミーティングとなったと感じています。◯◯さんはどう思いますか? |
SBI型は状況・行動・影響が整理されているため、相手が理解しやすいという利点があります。また、相手の行動がどのような結果につながったかが明確に伝わるため、内省につながりやすいでしょう。
SBI型はポジティブフィードバックにも、ネガティブフィードバックにも活用できます。しかし、ネガティブなImpact(影響)を伝える場合には、強い表現にしすぎないよう配慮が必要です。
心理学者のペンドルトンによって開発されたフィードバックの手法です。対話形式によって相手に自分の言葉で表現する機会をつくり、深い内省を促します。ペンドルトン型でフィードバックする際には1対1で行い、起承転結を意識するようにしましょう。
ペンドルトン型フィードバックの流れ[起] これから話す内容・テーマを共有する (例)昨日の◯◯のミーティングについて、話をしましょう。 ↓ [承] 良かった点 (例)あなたが疑問点をはっきりと発言してくれたことが、活発な意見交換につながりました。 ↓ [転] 改善点 (例)ただ、他の人が話している際に、納得していないのかな?という印象を受けました。どうしてだと思いますか? 前提知識が不足していたため、流し聞きしてしまったところがあったのかもしれません。それでは、どのような対策が有効だと思いますか? ↓ [結] 今後どうするのか・行動計画 (例)ミーティング資料には、議論の材料となるデータや、トレンド調査の結果などが記載されています。事前にしっかり読み解いて準備しておくと良いですね。会話の解像度が上がりますし、意見交換の良い材料になるはずです。 |
ペンドルトン型は相手の発言を促し、自身の言葉で考えて行動するというアクションが期待できます。また、次の方針を一緒に考えていくため、相手の納得感を得やすく信頼関係を構築しやすいことがメリットといえるでしょう。
サンドイッチ型フィードバックは、「ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ」のように、ポジティブでネガティブを挟むように伝える手法です。具体的に指摘したいネガティブなフィードバックがある場合に活用されます。シンプルな構成ですから、伝える側としても取り入れやすい手法といえます。
サンドイッチ型フィードバックの流れ[ポジティブ] (例)昨日のミーティングは、重たい空気でスタートしましたが、あなたの積極的な発言のおかげで生産性の高い会議となりました。 ↓ [ネガティブ] (例)ただ、みんなが活発に意見交換をしているときには、あまりピンときていなかったようですね。最近のトレンド動向や業界全体に対してのリサーチが、足りていなかったのかもしれません。 ↓ [ポジティブ] (例)臆さずに疑問を投げかけるのはすばらしいことです。より説得力のある議論にするため、事前資料やマーケット調査などの準備に時間をかけてみてはどうでしょうか? |
ポジティブな内容で会話を終えるため、モチベーションが低下しにくく、また、ネガティブな内容も受け入れやすいというメリットがあります。ただし、ポジティブフィードバックにネガティブフィードバックが埋もれてしまわないように留意しましょう。
フィードバックすべきことが発生してから、実際のフィードバックまでに時間が空いてしまうと、状況が変わっていたり、双方の記憶があいまいになったりして、効果が薄くなってしまいます。時間を空けずに迅速にフィードバックすることが大切です。
その後、従業員・部下の言動が改善されているかを確認するために、定期的なフードバックで双方の意識を合わせるとより効果的です。
抽象的で一方的なフィードバックは理解されず、相手を混乱させ、また「評価者から理解されていない」と感じてやる気を低下させる可能性もはらんでいます。評価者は適切な表現で具体的に伝えることを常に意識しましょう。
前述したフィードバックの型を意識すると、評価者は話すべきことを整理でき、受け取る側の状況理解や内省、納得感も促されます。ぜひ参考にしてみてください。
フィードバックが効果を上げるために、「実現可能なアドバイス」であるかどうかも、今一度確認してから伝えるようにしましょう。従業員・部下側のスキルが足りていなければ実行に移せないばかりか、これもまた「評価者から理解されていない」「無茶な要求をされた」といったネガティブな感情につながるリスクがあります。
従業員・部下の能力に合わせ、達成可能な範囲のアドバイスとなるよう心がけてみてください。すぐ行動に移せるように、具体的かつ細かい行動計画に落とし込み、相手の意見もヒアリングできるとなお効果的です。
フィードバックする際には、従業員・部下の反応も注意深くみておきます。評価者がアイコンタクトやあいづち、復唱、メモを取るなど、気持ちや意見に寄り添う姿勢を見せることで、話しやすいムードづくりが醸成されます。また、相手が内省や報告をしている途中で話を遮ったり、自分の意見を挟んだりしないことも大切です。
テレワークや効率化が進み、コミュニケーションが希薄になりやすい今こそ、意識的なフィードバックや信頼関係構築が肝要です。正しいフィードバックの知識に基づいて実践することで、従業員や部下の成長を促すことが可能となります。小さなことも「言わなくても伝わっているはず」と思い込まず、共有して前向きな行動促進につなげていきましょう。
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