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ソフトバンク・ランスタッド特別対談 後編:なぜソフトバンクは「全社員」を動かせるのか —— 250万個のAIエージェントを生んだ「数の哲学」と、変革を牽引する人事の実行力

作成者: randstad|Jun 16, 2026 12:30:01 AM

※本記事は2026年4月23日時点の情報です。

 

2025年、ソフトバンクが全社で展開した「1人100個のAIエージェントを作成する」プロジェクト。

この圧倒的なアウトプットの背景には、単なるAI活用を超えた、同社の「組織を動かす力」の真髄が隠されていました。

ランスタッド エリアマネージャーの長部智樹による、ソフトバンク 人材戦略部 部長の大神田賢翔氏へのインタビュー後編では、AIという巨大な変化をいかにして組織の「文化」へと昇華させたのか、その核心に迫ります。

インタビュー前編はこちらから

 

目次:

 

 

250万個のAIエージェント創出プロジェクト:全社を動かす「仕掛け」と人事の役割

 

「1人100個」の大号令。なぜ社員は圧倒的な"数"の挑戦に納得したのか

長部:ランスタッドのグローバル調査「ワークモニター 2026」では、AIエージェント関連のスキル需要が前年比1587%と爆発的に増えています。日本市場でも「AIをどう使いこなすか」が焦点ですが、貴社の「全社員で1人100AIエージェントを作成する」という取り組みは群を抜いています。なぜ、これほど高いハードルを設定し、やり切ることができたのでしょうか。

大神田さま:振り返ると、いくつか原動力があったと感じています。

まず1つ目は、宮川(代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏)による「1人100個」という挑戦状です。「理屈より、まずは使い倒して限界を知るのが一番」という明確な方針がトップから打ち出されたんです。しかも言葉で発信するだけでなく、全社員が参加するオンライン朝礼の中で、自らエージェント作成を実践して「こうすればできる」と見せていたのがよかったですね。

2つ目として、孫(創業者 取締役の孫正義氏)が、期間中に応援メッセージを寄せてくれたのも大きかったですね膨大なアイデアを出してきた人ですから「起業家は持っているアイデアが10個だけか、1,000個あるかで見えてくる世界がまったく違ってくる」という言葉の説得力が飛び抜けているんです

「なぜ数が必要なのか、それは数が質に転換するからである」という本質的な意味付けが共有されたことで、社員の中で取り組みが「数をこなす作業」から「自らの可能性を広げる挑戦」へと昇華されました。

(出典:ソフトバンク株式会社 提供資料/2026年4月23日取材時点)

 

長部:取り組むことの意義が伝わるとモチベーションも変わりますね。とはいえ、2万人規模の組織でその熱量を維持するのは至難の業です。IT部門ではなく人事部門が強力にリードされた点も非常にユニークですね。

大神田さま:ソフトバンクの人事は、CHROから「人事のミッションは人と事業をつなぐこと」ということを言われ続けています。その考え方の中で、AIカンパニーを目指すソフトバンクにとって、AI活用は人事が関わるべき「一丁目一番地」と位置づけるべきものかなと私も自然と考えました。

長部:なるほど。ちなみにこのハードな取り組みの中から「毒舌ギャルGPT」といった、かなりユニークなエージェントも誕生したと伺いました。

大神田さま:実は私もよく使っているんですよ(笑)。「この資料どう思う?」と聞くと、「マジ意味分かんないんだけど」とはっきり言ってくれるんです。人間から言われたらムッとすることでも、AIだと素直に「あ、そうか」と受け入れられる。AIとの新しい関係をもたらしてくれるといいますか。

まずは面白がって使ってみるという「遊び心」を許容する文化があったからこそ、AIが特別なものではなく、日常の「相棒」として定着したのだと感じています。

 

 

管理職の進化と「真のリーダーシップ」

 

AIエージェントの活用で管理職の仕事は「分析」から「改善アクション」へ

長部:弊社のグローバル調査「ワークモニター 2026」でも「日本のZ世代の約4割は上司よりもAIに相談をする」というデータが出てきています。その中で、人間にしかできないようなマネジメントの役割や、上司の介在価値についてどのようにお考えですか?

大神田さま:AIがどんどん進化していく中で、上司も部下も一緒に変わっていかなければならないのは大前提ですが、十分共存できると私自身は思っています。

部下側は「AIに相談して終わりではなく、そこで論点を整理してから上司に相談してみる」、逆に「上司と相談してなんとなく内容が分かったところから、AIに相談するプロンプトを自分で書いてみてさらに深める」など、いろいろな使い方が考えられると思います。

上司側に求められることは、「メンバーとしっかりと向き合う」、「ミッションを明確にする」など、実は今と大きくは変わらないように思います。そこにAIをどう取り入れてパフォーマンスにつなげていくか。AIも自分に与えられたリソースの1つとして、活用法を考え続けないといけないですね。

長部:貴社では管理職向けのAI活用支援なども実施されているのですか?

大神田さま:例えば、昨年までは管理職が自分でエンゲージメントサーベイの結果を分析して自部署の組織改善検討をしていたのですが、今年は人事がレポート分析用のAIエージェントを作って、利用をアナウンスしたんです。すると社内のAIエージェント利用トレンドでも1位になるほど、管理職が盛り上がって活用しました。

分析作業に使っていた時間をAIに任せて短縮できるうえに、その後の改善アクションもAIに相談しながら検討できるので、人ならではの"考える"時間が増えて、改善アクションに深さが出たのではないかと思っています。

 

変化に飲み込まれない唯一のスキル。AIを使いこなし、自ら判断する力を磨く

長部:弊社の「高需要スキル調査 2025」では、「人間にしかないようなコアスキルへの需要がどんどん高まっている」という分析結果が出ています。例えば「求められるスキル」の首位は「正確性」から「リーダーシップ」へと変わっています。「不足している人材」のトップも「レジリエンスを持った人材」でした。

AIが活躍の場を広げている中で、今後、人が磨いていくべき能力はどんなものだとお考えですか?

大神田さま:分析結果には大変共感しています。その上で私自身は「変化に対応する力」「自ら考え、判断する力」を磨くべきではないかと考えています。

重要なスキルは年々変化していく。「今はこのスキルが大事らしいから磨こう」という考え方だと、それがすぐ陳腐化してしまいかねない状況にあるのではないでしょうか。

AIの進化をしっかりと理解して、自分の役割やスキルを変化させていける力は、これからの激動の時代に大事なことかと思います。そして、AIも1つのツールとして使いこなしながら、AIに流されず自分で考えて判断する力は今後も不変なのではないでしょうか。

 

 

 

報酬よりも「仕事の意義」。Z世代の心を動かす、人事のメッセージング

長部:価値観が多様化しているZ世代に対して、彼らを職場につなぎとめるための独自の工夫やリテンション施策などはとられていますか?

大神田さま:ソフトバンクでは世代や年齢を前提に考えず、「『挑戦と成長』を後押し」という人事ポリシーを誰に対しても掲げています。ただ、Z世代の新しい考え方を人事施策や事業経営に取り込んでいくこと自体の重要性は非常に感じています。

ポジティブ心理学の権威、セリグマン教授が提唱するウェルビーイングの指標「PERMA」でも触れられていますが、今の若者はこれまでの世代のような物質的な消費や報酬よりも、「M(Meaning):人生や仕事の意義・意味」を非常に大切にする傾向があります。「その仕事にどんな意義があるのか」「なぜ自分がやるのか」という、物質世界を抜けた先にある充足感を求めているんです。

だからこそ我々も、人事施策を社員に発信するにあたって、例えば「なぜ1人100個もAIエージェントを作ってほしいのか、その結果どうなってほしいのか」ということを今まで以上に伝えていくべきだという議論を人事内で重ねてきました。そうでなければ、Z世代から選ばれる会社になっていかないのではないかと思います。

 

 

これからの企業に求められる、「人的資本経営」に向き合う姿勢

 

長部:今後、企業と個人が選び選ばれる対等な関係にシフトしていく中で、これからの企業に求められる姿勢とはどのようなものだとお考えですか?

大神田さま:「人的資本経営」に本気で向き合うことに尽きますね。ソフトバンクが考える「人的資本経営」は「会社の成長と社員の成長を循環させて、両輪で相乗効果を生む」ということ。会社が成長すれば成長した分だけ、社員にも成長機会が生まれると思いますし、社員が成長するということは、会社の実力が上がっていることにもつながります。

これからは社員側も「会社に任せる」のではなく、「会社というチャンスを有効活用して自ら成長していく」姿勢が必要になってくる。会社だけが変わるのではなく、会社も社員もお互いに変化していく、成長していくことが大事だと思います。

 

 

経営・人事・個人が三位一体で機能する「エコシステム」

今回の対談を通じて、ソフトバンクが持つ「底力」の正体が見えてきました。それは、単に先進的なツールがあるからではなく、経営・人事・個人が三位一体で機能する「エコシステム」にあります。

まず、人事が「挑戦と安心」の舞台を整えた上で、自ら「人と事業をつなぐ部隊」となって現場を動かす策を練る。そこにトップが「社員に響く言葉」で施策の意義を1本の線につなぐ。そうして信頼の醸成された舞台を、社員が自らの成長のために「使い倒す」。このエネルギーの循環こそが、変化をチャンスに変えるソフトバンクの強みです。

「人的資本経営」が問われる今、ランスタッドもこうした「自律的に動く組織づくり」のヒントを、皆さまと共に考えていければ幸いです。

 

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