本記事では、ランスタッド人事本部タレント部長の西野雄介をモデレーターに迎え、未来の働き手、当事者、そして支援者という多角的な視点から議論を展開した3つのセッションの様子をレポートします。
ゲスト:関西大学 学生団体 Your voice lounge とっちょさん
Your voice loungeは、当事者の学生・卒業生・教職員、そしてアライのコミュニティ作りを目的として活動しており、最近では大阪・関西万博ウーマンズパビリオン「WA」スペースで代表の方が講演するなど、さまざまな場面でご活躍されています。
まず、「就職活動において、自分らしくいられるかという点でどんな心配を感じるか」という問いに対し、とっちょさんは「例えば面接時の服装など、自分の性表現を自由にできる会社があれば良い」と、具体的な不安を挙げられました。企業側の目線や周囲の振る舞いを考えると、「暗黙の了解」を通す必要があり、「本当の意味で自分らしさを貫くのが難しい」という壁を強く感じているとのことです。
企業への期待については、社員向けの研修実施や、同性パートナーの福利厚生といった具体的な情報発信がされているかにも注視しているとコメントされました。しかし、多くの企業では「ヘテロセクシュアルで男女で結婚して」といった前提のキャリアパス・制度の話が中心であり、マイノリティについて言及している企業がほとんどない点については、「働き甲斐がありそうでも、そこら辺の理解があるかどうかで、入ろうという気持ちに影響します」と、シビアな視点を示されました。
また、福利厚生があっても「カミングアウトが前提」になっていたり、LGBTQ+を本当の意味で支える風土がある企業が少ないため、「制度はあっても雰囲気は変わっていない」というギャップがあることも指摘されています。
企業側が考える「多様性」と若年層の考える「多様性」にズレがあるかという議論の中で、とっちょさんは、大阪のレインボーフェスタ!に参加してくれる企業は素晴らしいとしつつも、「SDGsへの取り組みとして何かやらないと」という義務感が見えると残念な気持ちになるとコメント。やがてはLGBTQ+という言葉自体がなくなり、「マイノリティ」としてではなく、「個性」として見てもらえる時代がきたら嬉しいと、未来の働き手としての純粋な期待を語られました。
最後に、今後のビジョンとしては、孤独感を抱えている当事者はまだまだ多いため、アライコミュニティを広げていき、「一人じゃない」ということを伝えていきたいと締めくくられました。
ゲスト:Mr.Gay Japan 2023 DAIKIさん
DAIKIさんは、ESGコンサルタントとしてインパクト投資ファンドに関わる一方、LGBTQ+活動家としても活動されています。
「ご自身のキャリアや職場環境において、セクシュアリティが影響した出来事」について、DAIKIさんは強い影響はないとしつつも、間接的な影響として、特に、私生活での苦労(社会的困難、孤独など)を職場での相談相手に話せないという点で困難があり、仕事に影響が出たときに相談相手が限られてしまうのは大きな問題であると指摘されました。
DAIKIさんにとっての「自分らしく働く」とは、「ワークはライフに入る」という前提のもと、以下の2つが重要であると語られました。
職場や社会の意識については、多くの企業が当事者の包摂に取り組んでおり、「ゆっくりと良い方向に向かっている」と肯定的な見解を示しました。
そして、今自分らしさに悩んでいる人へは、「がっつり定義できなくても、今自分が好きなもの、嫌いなものが分かっていれば十分」であり、瞬間瞬間を楽しむ姿勢が大切だとエールを送りました。
ゲスト:認定NPO法人 虹色ダイバーシティ 長野友彦さん
長野さんはプライドセンター大阪の運営・イベント企画などを担当され、特に次世代の若者が差別や偏見に苦しまない世の中を作りたいという想いで活動されています。
まず、日本の職場の現状については、大企業と中小企業の間で取り組みに大きな差があることが指摘されました。また、最近の課題として、「社内制度が整っていても、すぐには職場の雰囲気が変わらない場合がある」というギャップがあり、研修や制度が整っていても、上司や周囲の無意識な発言で当事者を傷つけるケースは少なくありません。
長野さんが運営するプライドセンター大阪には、アウティングの被害に遭い転職を考えている方など、働く環境で悩む方の相談も多いのが事実です。そのため、孤独を防ぐための社内での相談窓口設置やアライグループの設立が急務であると提言されています。
一方でポジティブな変化として、以前は当事者が中心だった活動に、「アライ(支援者)の数が目に見えて増加」しており、企業の関心も高まっていると評価されています。
企業がインクルーシブな文化を根付かせるためには、「トップダウンとボトムアップの両軸」が必要であると強調されました。
個人へのメッセージとして、ランスタッドのブースでも配布された「レインボーストラップ」などを職場でも身につけ、「私はあなたの味方だよ」と示すアライとしての表明が大切だと述べられました。さらに、「失敗を恐れない姿勢も重要」であり、もし相手に失礼な言い方をしてしまっても、反省と謝罪をきちんと行い、次に活かすという繰り返しが、より良い職場環境づくりにつながると、リスナーへメッセージを送りました。
長野さんは最後に、「皆さん一人一人が自発的に小さな行動を日々起こしていくことが、やがて大きなムーブメント(社会変革)につながる」と、総括しました。
3つのセッションを通じて、学生、当事者、支援者という多角的な視点から「働く」と「多様性」について深い対話を行うことができました。
ランスタッドは、EDI&B(Equity, Diversity, Inclusion and Belonging)を積極的に推進しており、性的指向や性自認に関わらず誰もが公平な機会を提供するため、就業規則での同性パートナー同等扱いなど、包括的な取り組みを推進しています。
「世界で最も公平で専門性を備えた人材サービス会社」というビジョンを掲げるランスタッドは、今後もLGBTQI+コミュニティの皆さんがそれぞれの個性と能力を最大限に発揮し、働く喜びを享受できる社会の実現に貢献してまいります。
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