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平均年収はどれぐらい?採用・人事担当者が知っておきたい転職事情

作成者: randstad|Dec 24, 2024 9:54:37 AM

企業が優秀な人材を確保するためには、待遇について考慮することが必要です。
今回は国税庁が公表している民間給与実態統計調査をもとに、各業界・職種の平均年収などをご紹介します。
あわせて、厚生労働省の雇用動向調査と転職者実態調査の結果を参考に、人材確保のために採用・人事担当者が考慮したいことについて考えます。

 

平均年収の推移-多いのはどんな事業所?

平均年収の増加率はやや鈍化

人材確保のためにも、まずは一般的な給与水準について把握しておくことが大切です。

国税庁が公表している「令和5年分 民間給与実態統計調査」の結果によると、民間企業に1年間勤務した給与所得者の平均給与は460万円で、前年を0.4%上回りました。

男女別では男性が前年比0.9%増の569万円、女性が同0.7%増の316万円で、平均給与は増加傾向にありました。
直近の3年間で比較すると増加傾向が続いていますが、増加率はやや鈍化しているようです。

ちなみに、「令和5年分 民間給与実態統計調査」をもとに計算した、中央値の人が属する平均給与の階級は、全体の平均が「300万円超 400万円以下」でした。

同階級の平均給与は351万円、男性の平均が「400万円超 500万円以下」で同449万円、女性の平均が「200万円超 300万円以下」で同251万円でした。

 

平均年収の推移(対前年比)

 

令和5年

令和4年

令和3年

全体

460万円(0.4%増)

458万円(2.7%増)

446万円(2.4%増)

男性

569万円(0.9%増)

563万円(2.5%増)

550万円(2.8%増)

女性

316万円(0.7%増)

314万円(3.9%増)

302万円(3.0%増)

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」平均給与の内訳を元に作成

 

 

平均年収に占める賞与の割合は前年並み

平均給与460万円の内訳を見ると、「平均給料・手当」の平均は前年比0.5%増の388万円(男性は同1.0%増の476万円、女性は同0.9%増の272万円)、「賞与」の平均は同0.3%減の71万円(男性は同0.8%増の92万円、女性は同0.7%減の44万円)で、平均給与に占める賞与の割合は18.4%(男性は19.4%、女性は16.1%)でした。

直近の3年間で比較すると、平均給与に占める賞与の割合はほぼ前年並みで推移しています。

 

平均給与の内訳 全体(対前年比)

 

令和5年

令和4年

令和3年

平均給料・手当

388万円

(0.5%増)

386万円

(2.4%増)

377万円

(2.1%増)

賞与

71万円

(0.3%減)

72万円

(4.2%増)

69万円

(4.1%増)

賞与の割合

18.4%

18.5%

18.2%

 

平均給与の内訳 男性(対前年比)

 

令和5年

令和4年

令和3年

平均給料・手当

476万円

(1.0%増)

472万円

(2.3%増)

461万円

(2.5%増)

賞与

92万円

(0.8%増)

92万円

(3.5%増)

89万円

(4.6%増)

賞与の割合

19.4%

19.4%

19.2%

 

平均給与の内訳 女性(対前年比)

 

令和5年

令和4年

令和3年

平均給料・手当

272万円

(0.9%増)

270万円

(3.4%増)

261万円

(2.8%増)

賞与

44万円

(0.7%減)

44万円

(7.6%増)

41万円

(4.3%増)

賞与の割合

16.1%

16.4%

15.7%

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」平均給与の内訳を元に作成

 

 

男性の平均年収は年齢とともに増加、女性は横ばいで推移

平均給与を年齢階層別に見ると、男性は年齢とともに平均給与も増え、「50歳~64歳」は「20歳~34歳」の約1.5倍に増加しています。一方、女性は年齢による差は少なく、310万円台から330万円台の範囲で推移しています。

 

年齢階層別の平均給与の推移

 

男性

女性

20歳~34歳

414万円

317万円

35歳~49歳

596万円

332万円

50歳~64歳

648万円

312万円

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査結果」企業規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額を元に作成

 

 

従業員数が多い事業所ほど平均年収が高くなる

続いて平均給与の推移を事業所の規模別で見ていきます。

従事員数が「10人未満」の事業所では全体の平均が382万円(男性476万円、女性272万円)、「10人~29人」では同421万円(男性518万円、女性293万円)、「30人以上」では同478万円(男性591万円、女性327万円)でした。

また、従事員数が「5000人以上」の事業所では同521万円(男性675万円、女性316万円)に達し、事業所の規模が大きくなるにしたがって平均年収が増加している様子が分かります。

ただし、女性に限定すると、従業員数が30人を超えるまでは増加傾向にありますが、その後は横ばいで推移し、「1000人~4999人」の349万円がピークでした。

 

事業所の規模別平均給与の推移

 

全体平均

男性

女性

10人未満

382万円

476万円

272万円

10人~29人

421万円

518万円

293万円

30人以上

478万円

591万円

327万円

30人~99人

425万円

513万円

309万円

100人~499人

447万円

536万円

326万円

500人~999人

494万円

602万円

348万円

1000人~4999人

527万円

654万円

349万円

5000人以上

521万円

675万円

316万円

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査結果」企業規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額を元に作成

 

 

資本金の額と平均年収は比例する

平均給与の推移を株式会社の資本金の額別で見ると、「資本金2000万円未満」では全体平均が386万円(男性469万円、女性267万円)、「資本金10 億円以上」では同653万円(男性767万円、女性410万円)に達するなど、男女問わず資本金規模が大きくなるほど平均給与が増えています。

ただし、「資本金2000万円以上5000万円未満」と「資本金5000万円以上1億円未満」では、大きな差異は見られませんでした。

 

資本金の規模別平均年収の推移(個人事業・その他法人除く)

資本金の額

全体平均

男性

女性

2000万円未満

386万円

469万円

267万円

2000万円以上5000万円未満

438万円

517万円

284万円

5000万円以上1億円未満

423万円

516万円

274万円

1億円以上10億円未満

481万円

588万円

315万円

10億円以上

653万円

767万円

410万円

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査結果」企業規模別の平均給与を元に作成

 

 

業種別の平均年収-最も高い業種は?

平均給与の推移を業種別に見ると、全体平均が最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の775万円で、「金融業、保険業」の652万円が続きました。

男女別では、男性は「金融業,保険業」が837万円、女性は「電気・ガス・熱供給・水道業」が559万円で最も高くなりました。

一方、「宿泊業,飲食サービス業」は全体平均が264万円、男性が359万円、女性が187万円で、いずれも最も低くなりました。

ちなみに、前年度の調査(令和4年分 民間給与実態統計調査)でも全体平均が多かったのは「電気・ガス・熱供給・水道業」(747万円)と「金融業、保険業」(656万円)で、「宿泊業,飲食サービス業」(268万円)が最も低くなりました。

 

業種別の平均年収の推移

 

全体平均

男性

女性

建設業

548万円

597万円

347万円

製造業

533万円

614万円

329万円

卸売業,小売業

387万円

523万円

252万円

宿泊業,飲食サービス業

264万円

359万円

187万円

金融業,保険業

652万円

837万円

461万円

不動産業,物品賃貸業

469万円

587万円

317万円

運輸業,郵便業

473万円

511万円

319万円

電気・ガス・熱供給・水道業

775万円

828万円

559万円

情報通信業

649万円

720万円

485万円

学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業

551万円

680万円

411万円

医療,福祉

404万円

558万円

347万円

複合サービス事業

535万円

622万円

359万円

サービス業

378万円

465万円

274万円

農林水産・鉱業

333万円

398万円

247万円

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査結果」業種別及び給与階級別の総括表を元に作成



 

転職で年収が増えた人の割合は?

転職により年収が増えるのか減ってしまうのかも気になるところです。

厚生労働省が発表した「令和5年上半期雇用動向調査結果の概要」をもとに転職後の賃金の推移を見ると、転職前より賃金が「増加」したのが38.6%、「変わらない」が26.4%、「減少」したのが33.2%でした。

年齢別では、「20歳から24歳」の43.7%が「賃金が1割以上の増加」と回答。反対に、「60歳から64歳」では59.8%が「賃金が1割以上の減少」と回答しており、若い世代ほど転職で年収を増やしやすいことが分かります。

 

転職で賃金が増えた人・減った日の割合

年齢

1割以上の増加

1割未満の増加

変わらない

1割未満の減少

1割以上の減少

20~24歳

43.7%

10.3%

23.6%

8.6%

10.6%

25~29歳

31.0%

16.8%

28.6%

7.1%

15.2%

30~34歳

32.8%

14.7%

19.0%

5.3%

27.4%

35~39歳

29.3%

11.5%

26.4%

10.0%

21.3%

40~44歳

29.8%

14.0%

27.6%

5.8%

20.3%

45~49歳

26.1%

11.9%

33.1%

9.0%

19.1%

50~54歳

18.6%

6.8%

36.3%

7.0%

31.1%

55~59歳

12.7%

17.5%

33.2%

6.9%

28.8%

60~64歳

7.9%

3.6%

18.3%

5.8%

59.8%

全体

27.2%

11.5%

26.4%

7.4%

25.8%

※自営業からの転職入社を含まないことから合計は100%になりません。

厚生労働省「令和5年上半期雇用動向調査結果の概要」転職入職者の賃金変動状況を元に作成



 

採用担当者が選考で考慮するポイントは?

転職者に即戦力を求める傾向が強い

転職者をどのような意図で採用しているのか、厚生労働省が発表した「令和2年転職者実態調査の概況」をもとに見てみましょう。

転職者がいる事業所に転職者の採用理由を聞くと、全体的に多かったのが「経験を活かし即戦力になるから」で、「専門的・技術的な仕事」と「管理的な仕事」でその傾向が強く見られました。

一方、「サービスの仕事」や「保安、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、その他の仕事」では「離職者の補充のため」という回答が多い傾向があり、人出不足を転職者の採用で補っている様子が窺えました。

 

転職者を採用した理由(複数回答3つまで)

 

専門知識・能力があるから

経験を活かし即戦力になるから

幅広い人脈を期待できるから

職場への適応力があるから

新卒者の採用が困難なため

離職者の補充のため

親会社・関連会社からの要請のため

管理的な仕事

40.7%

62.3%

12.2%

25.9%

9.3%

28.0%

5.2%

専門的・技術的な仕事

52.7%

66.1%

3.9%

26.7%

10.3%

44.6%

1.9%

事務的な仕事

17.5%

42.0%

1.3%

27.7%

7.4%

58.5%

2.2%

販売の仕事

13.4%

58.8%

9.0%

25.8%

12.6%

44.8%

5.0%

サービスの仕事

23.9%

54.9%

4.6%

29.5%

9.2%

61.6%

2.6%

保安、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、その他の仕事

20.8%

47.7%

4.6%

26.5%

12.8%

63.2%

2.6%

厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」転職者の採用理由を元に作成

 

 

転職者採用時の賃金は「経験・能力・知識」をもとに決定

転職者を採用する際の賃金や役職を決める際には、「これまでの経験・能力・知識」をもとに決めている事業所が74.7%で最も多く、ほとんどの業種で過半数を占めています。

次いで多かったのが「年齢」の45.2%でした。一方、「前職の賃金」を重視する事業所は少数派で、25.3%にとどまっています。

 

転職者の処遇(賃金、役職等)決定の際に考慮した要素(複数回答)

 

年齢

学歴

前職の賃金

前職の役職

これまでの経験・能力・知識

免許・資格

全体

45.2%

11.0%

25.3%

5.5%

74.7%

37.3%

鉱業,採石業,砂利採取業

46.7%

8.5%

24.2%

2.7%

77.2%

55.3%

建設業

61.4%

3.5%

38.3%

4.6%

77.8%

36.5%

製造業

56.4%

16.8%

30.6%

5.5%

76.9%

17.7%

電気・ガス・熱供給・水道業

40.9%

33.7%

14.4%

5.1%

54.8%

22.9%

情報通信業

54.2%

16.0%

43.3%

8.4%

81.0%

17.1%

運輸業,郵便業

31.8%

1.9%

14.8%

2.5%

62.4%

49.3%

卸売業,小売業

48.7%

12.1%

24.2%

6.7%

74.5%

34.8%

金融業,保険業

46.6%

22.6%

23.0%

7.4%

57.8%

8.7%

不動産業,物品賃貸業

54.1%

15.4%

22.6%

3.8%

65.6%

43.4%

学術研究,専門・技術サービス業

57.9%

24.0%

30.3%

10.4%

83.2%

40.9%

宿泊業,飲食サービス業

41.7%

0.6%

24.7%

4.4%

89.8%

32.7%

生活関連サービス業,娯楽業

36.1%

5.9%

22.5%

6.8%

71.8%

13.2%

教育,学習支援業

33.0%

26.3%

17.1%

8.4%

70.4%

38.9%

医療,福祉

34.3%

12.9%

25.4%

4.0%

76.3%

62.9%

複合サービス事業

30.9%

19.7%

4.2%

3.3%

49.7%

23.8%

サービス業(他に分類されないもの)

40.9%

6.1%

17.1%

4.3%

60.7%

37.1%

厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」転職者の処遇(賃金、役職等)決定の際に考慮した要素を元に作成

 

 

高額な報酬だけでは不十分なことも。多様な魅力で人材を惹きつける体制(環境)構築を

優秀な人材を確保するため、平均年収を上回る報酬を提示することは有効な手段ですが、それだけでは不十分です。社員が職場に魅力を感じる要素、つまり、エンプロイヤーブランディングを高めて、報酬以外の魅力も引き出していくことが大切です。

具体的には、充実した 福利厚生の提供や、ワークライフバランスが実現しやすい職場環境、キャリアアップの機会を提供するなど、心理的、職務的な側面からもアプローチすることが重要です。

また、ランスタッドが20年以上にわたり続けている独自調査「エンプロイヤーブランド リサーチ」では、従業員が雇用主を選ぶ理由として以下の項目を上位に挙げています。

 

従業員が雇用主を選ぶ理由

1位 給与水準・福利厚生
2位 ワークライフバランス
3位 雇用の安定
4位 快適な職場環境
5位 財務体質の健全性

 

近年、ワークライフバランスは重要度が高まっているため、採用ブランディングを通じて積極的にアピールしたいポイントです。

多様な人材を受け入れて能力を発揮させる“ダイバーシティ&インクルージョン”の取り組みなどもあわせてアピールできると、転職者からも魅力的に映るはずです。

 

まとめ

平均年収は増加傾向にあり、高い専門性が求められる即戦力のハイクラス人材ほど売り手市場の傾向を強めています。そのような中で優秀な人材を獲得するためには、能力やキャリアに応じた業界の相場を事前に把握し、応募者にとって魅力的な賃金を提示することが重要です。

さらに、エンプロイヤーブランディングに取り組むなど、報酬以外の魅力を引き出すための施策も組み合わせていくことで、効果的な人材の確保につながるはずです。

 

ランスタットでは採用戦略の参考となるさまざまな情報をメールマガジンでも発信していますので、ぜひお役立てください。また、状況に合わせたさまざまな人材紹介サービスを提供していますので、お気軽にご相談ください。