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仕事の未来2023-2027(どうなる?これからの仕事)第4回

作成者: randstad|Mar 14, 2023 5:42:53 AM

12回にわたって、“仕事の未来2023-2027(どうなる?これからの仕事)”と題して、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2016年より2年に1度発行している“Future of Jobs Report”の最新版(2023年版)のレポートの要約をお伝えしています。

[連載]仕事の未来2023-2027(どうなる?これからの仕事)

 

このレポートは、世界の27の産業分野、複数の経済圏にまたがる全803社(雇用者総計1,130万人)による見通しや意見が反映されており、近い将来における世界の仕事・労働市場の変化を読み解くために必須の資料となっています。

第4回目の本稿では、グルーバルな労働市場の展望を論じた第3章「雇用の見通し」を扱いたいと思います。

 レポートの本文については、分量の都合で、日本語訳の全文ではなく、要約したものを記しています。また、レポート本体には、膨大なデータ、グラフが掲載されていますが、本稿には掲載はしておりません。それらを見てみたいという方は、ぜひ、レポートにアクセスしてみてください。

 

 

雇用の見通し

労働市場の変動率と変革のペース

「レイバー・マーケット・チャーン」(labour-market churn)という言葉をご存知でしょうか?

これは「労働市場からの離脱・解約率」(労働市場変動率)を指す概念で、労働者と雇用が再配置され、置き換わる割合のことを意味しています。もともとマーケティングの分野などで使われる“churn”(サブスクなどの解約率・定期顧客の離脱率)という言葉を転用したものと思われます。 

レイバー・マーケット・チャーンを調べると、構造的な労働市場の変化がわかります。つまり、全体の労働力人口を分母にして、予想される「新しく雇用される」数と、「離職・失職する」数を分子とした場合の割合です。上のブロックがたくさん集まった図表では、調査対象の雇用者67,300万人のうち、23%に相当する15,200万人が、労働市場の構造的な置き替わりの対象となることを示しています(図3.1参照)。ほぼ4人に1人が対象者になるということです。

 

図3.1 2023-2027年に失われる雇用と新たに生まれる雇用(雇用の置き換わり)

*世界経済フォーラム「仕事の未来2023」レポートp28の図を元に改変
*原出典:世界経済フォーラム「仕事の未来2023」;国際労働機関(ILOSTAT
*原注:世界経済フォーラムは、82,000万人の雇用者数で構成される世界のILO統計データから、67,300万人分の雇用者の労働市場展望を分析。

 解説:図の1マスは100万人分の雇用を表しています。分析によると、今後5年間で、8,300万人の雇用が失われる一方、6,900万人の雇用が創出されると予測される。これは、調査対象のデータ6億7,300万人の雇用者のうち、1億5,200万人の雇用(23%相当)が労働市場の構造的な置き替わりの対象となることを意味する。結果、正味で1,400万人(2%相当)の職が失われることになる。

 

 

 なお、「構造的な労働市場の変化による離職・失職」(構造的変動)には、労働者がプライベートな理由で転職するような場合は含まれていません。

 2023年から5年間の構造的変動率は、“Future of Jobs Report”の回答者から報告された、労働力の変化の絶対値を合計(雇用が失われる8,300万+雇用が創出される6,900万)したものを分子にして、各職種の現在の労働力全体の合計数で割って算出されています。レポートでは、これは、今後起こる「混乱」に関する総合的な尺度(成長と衰退の両方を含んだ)として解釈できると述べられています。

 本レポート= “Future of Jobs Report”では、今後5年間の調査対象企業の平均的な構造的なレイバー・マーケット・チャーン(労働市場変動率)を、どの経済部門か、どの国かを問わず、全体で23%と予測しています。繰り返しになりますが、これは、新たに創出される仕事・雇用と、破壊され失われる既存の雇用・仕事の両方を含んだ雇用の移動の合計が、現在の労働人口の23%に相当することを示しています。この分析によって、国や業界全体の純雇用数の変化だけでは見ることができない、労働市場の内部にある根本的な変化がわかるのです。

 

今後5年間に予想される「チャーン」(労働市場変動率)は、これからも、労働市場の構造的な再構成を継続することになる見込みです。 

本レポートの第1章では、宿泊・食品・レジャー、製造業、消費財小売・卸売、サプライチェーン・運輸、メディア・娯楽・スポーツの各分野の雇用水準が、世界的に2019年より悪化していることが示されました。

 本レポートの分析によると、2023年から2027年にかけての離職率は、サプライチェーン・運輸業とメディア・娯楽・スポーツ業では平均より高い(回答者が5年間の構造的離職率をそれぞれ29%と32%と見積もっている)見込ですが、宿泊施設・食品・レジャー、製造業・小売業、消費財卸売業では平均より低くなっています(図3.2)。

 また、通信・メディア、娯楽・スポーツ、金融サービス・資本市場、情報・技術サービス業界では、先端テクノロジーの進展によって転職が加速するため、それを反映してか、比較的高い変動率が予測されています。

 

順位 業種 離職率
1位 メディア、娯楽、スポーツ  32%
2位 政府・公共部門 29%
2位 情報技術、デジタル通信 29%
3位 不動産 27%
4位 金融サービス 26%
5位 サプライチェーン・運輸 25%
6位 非政府組織・会員制組織 24%
7位 教育・研修 23%
7位 介護、パーソナルサービス、ウェルビーイング 23%
7位 農業・天然資源 23%
7位 専門サービス 23%
8位 インフラ 22%
8位 健康・ヘルスケア 22%
9位 消費財小売・卸売 21%
10位 エネルギー・素材 19%
10位 製造業 19%
10位 自動車・航空宇宙 19%
11位 宿泊、食品、レジャー 16%

 

 

雇用の増加と減少 

雇用の増加や減少は労働市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。それをトータルで概算するため、“Future of Jobs”のレポートでは、データが入手可能な国におけるILO(国際労働機関)のデータに基づき、職種の増加予測とこれらの職種に従事する労働者総数の推定値を比較しています。 

以下の図3.43.5は、最も大きな増加が予想される職種と、最も大きな減少が予想される職種に関するデータを示しています。調査結果によれば、2023年から2027年にかけて最も高い増加を示すのは、農業機械オペレーター、大型トラック・バス運転手、職業教育教師となっています。 

一方、雇用が最も減少すると予想されるのは、データ入力事務員、事務・役員秘書、経理・簿記・給与計算事務員となっています。これら3つの職種を合わせると、予想される雇用崩壊の半数以上を占めることになります。

 

3.4  最大の雇用増加

 5年間の総増加数(単位:百万人)
*出典:世界経済フォーラム「仕事の未来 2023」レポートより
ILO職業別雇用統計および調査対象企業から報告された雇用増加率に基づいて算出

 

 

  3.5  最大の雇用減少

5年間の総減少数(単位:百万人)
*出典:世界経済フォーラム「仕事の未来 2023」レポートより
ILO職業別雇用統計および調査対象企業から報告された雇用増加率に基づいて算出

 

総括すると、世界経済フォーラムによる分析では、今後5年間に6,900万件の雇用が創出され、8,300万件の雇用が失われるとしています。つまり、5年で計1,400万件の雇用が世界の労働市場からなくなります。これらの変化を計算すると、データが得られる限りでの現在の世界の労働人口のうち、実に23% が構造的な労働市場の変化を受けると推定されるのです。

 

第3章「雇用の見通し」のまとめ

  • マクロな社会経済のトレンドと先端テクノロジーの進展により、今後5年間で、雇用が創出されるケースと、反対に雇用が失われるケースの見通しは、職種や業種によってまちまちである。 
  • 本章では、予想される労働市場の変化を定量化するために、「レイバー・マーケット・チャーン」(labour-market churnchurnとは元々サブスクリプションなどの「解約」という意味)=「労働市場変動率」という概念を用いる。本調査の結果は、新たな職種の創出や既存の職種の廃止に伴う企業の雇用構造の変化から生じる、「構造的な労働市場の変化」を定量化して表している(同じ職種に就いている既存の従業員に代わって、新入社員がその職務に就くような場合を除く)。

 本章の分析では、2023年から2027年の間に調査対象企業が報告した従業員構成の予測される構造的変化を用いて「労働市場変動率」を推計している。

 

世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2016年より2年に1度発行している“Future of Jobs Report”の最新版(2023年版)のレポート第3章の要約、いかがでしたでしょうか?次回もおたのしみに!