「物価と賃金の好循環」が実現する兆しが見え始めています。連合が4月4日に発表した「春闘第3回集計」(2日時点)によると、賃上げ平均額は1万6037円、賃上げ率5.24%と5%台をキープし、物価上昇の2%台を上回っています。
5.24%の賃上げ率は昨年の同期より1.54ポイント上回っており、1991年当時の5.66%以来の高水準。企業規模別では、中堅・大企業で1万6363円(同5.28%)、同300人未満の中小1600組合で1万2097円(同4.69%)となっています。
回答済み企業の割合は中堅・大企業で7割、中小企業で4割程度と推定され、中堅・大企業はヤマ場を越えたとみられる一方、中小企業はこれからがヤマ場。中小の勢いが今後も持続するかどうかが、春闘後半の最大の焦点になります。
物価上昇は、やや落ち着きを取り戻しています。総務省の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合で2月は2.8%。1年前の3%台から昨年後半に2%台に下がったまま推移しています。2月の場合、「生鮮以外の食料」が5.3%、「家具・家事用品」が5.1%の高い伸びを見せた一方、「光熱・水道」はマイナス3.0%、「交通・通信」も2.9%の伸びにとどまっています。
これに対して、賃金はまだ伸びていません。厚生労働省の毎月勤労統計調査では2月速報値の伸びが名目1.8%増。実質1.3%減。名目賃金は26カ月連続のプラス、実質賃金は23カ月連続のマイナスという長期に及んでいます。賃金自体は伸びているものの、物価上昇がそれを上回り、国民生活の水準ダウンが続いている状態が2年近くも続いていることになります。
今春闘で「高額回答」が相次いだことで名目賃金が物価上昇を上回り、実質賃金がプラス転換するかどうか、政労使とも注視していますが、今年だけに限ればその可能性はかなり高まってきています。そのカギとなるのが、残る過半数の中小企業の回答、さらには労組のない中小・零細企業など"裾野"への波及効果です。それらを数字上で確認できる時期は早くても6月ごろになるとみられ、それまで2~5月の実質賃金が春闘効果でプラス転換するかどうか注目されています。
厚生労働省が発表した労働者協同組合の設立状況(4月1日時点)によると、1都1道2府27県で87法人が設立されていることがわかりました。新規設立が67法人、企業組合などからの組織変更が20法人となっています。2022年10月に労働者協同組合法が施行されてから、4月で1年半が過ぎましたが、設立数は順調に増えています。
労働者協同組合は地域社会の課題解決に向けた新たな組織形態。会社やNPO法人などより設立が容易で、就労も多様なことから、新たな働き方として注目されています。主な活動分野はキャンプ場経営、生活困窮者支援、高齢者介護、家事代行、子育て支援、清掃・建物管理などです。