障害者雇用促進法の施行規則改正に伴い、4月1日から企業などの障害者雇用の法定雇用率が引き上げられました。企業の場合は2.3%から2.5%になり、対象企業も従業員43.5人以上から40.0人以上に拡大。
近年、雇用数の増加を最大目標にしてきた流れに疑問の声も挙がっており、雇用の「質の充実」を重視する動きも活発になっています。企業以外では国・地方自治体も4月に2.6%から2.8%、都道府県の教育委員会は2.5%から2.7%にそれぞれ引き上げられます。
これまでは対象外だった短時間勤務者も対象になり、週10時間以上~20時間未満の勤務の場合、精神障害者と重度の身体・知的障害者は0.5人にカウントされます。障害者の中には長時間勤務は厳しいですが、短時間勤務なら就労できる人も多いため、特定の時間に発生する業務や短時間で終わる業務に就いてもらうことで、雇用増と法定雇用率をクリアできるメリットが生じます。ただ、就労支援A型事業所の利用者は算定対象になりません。
このほか、企業側から各種助成金が複雑化してわかりにくいとの指摘があることから、障害者雇用の経験やノウハウのない企業への相談援助、高齢障害者の雇用継続支援、ジョブコーチらによる定着支援の拡充などを強化、資金支援も拡充します。
また、来年度からは一定数を超える達成企業の「調整金・報奨金」が減額され、24年度の実績に基づいて計算されます。具体的には調整金の場合、支給対象者が10人を超えると超過人数分は1人あたり現行より6000円少ない2万3000円に、報奨金の場合は対象人数が35人を超えると超過人数分は同様に現行より5000円少ない1万6000円となります。
障害者の雇用数自体は増えています。厚労省の「障害者雇用状況」によると、23年6月時点で企業の雇用数は64万2178.0人(前年比4.6%増)と20年連続で増え、実雇用率も12年連続で伸び続けて2.33%(同0.08ポイント増)と法定雇用率を上回りました。身体・知的障害者が“高齢化”していることなどから、近年は精神障害者の雇用が急増しています。
しかし、全ての企業で雇用が増えているわけではありません。法定雇用率を達成した企業は半数の50.1%(同1.8ポイント増)に過ぎず、残る半数にあたる5万3963社は未達成。しかも、未達成企業のうち、1人も雇用していない企業が3万1643社あり、これらの比率は同法施行以来、ほぼ変わっていません。障害者雇用は、意識の高い企業とやる気のない企業に二極化しているのが実情です。
未達成企業の比率が下がらないのは、法定雇用率を引き上げると、引き上げ前の達成企業でも引き上げ後は未達成企業になるケースもあるためですが、問題は雇用ゼロ企業も容易に減らないこと。達成企業は
「不足分の人数×5万円」の納付金を毎月政府に支払わなければなりませんが、100人未満の企業は納付金の対象になっておらず、これがゼロ企業の減らないひとつの要因になっています。