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日本に在留資格を持つ外国人は、2023年6月末時点で322万3858人にのぼり、過去最多を記録しています。出入国在留管理庁によると、半年前の2022年12月末から4.8%、14万8645人増加し、コロナ禍前を上回る勢いです。
図表:アドバンスニュース作成
10年以上継続して日本で生活している「永住者」は88万178人(構成比27.3%、昨年末比1.9%増)で最多です。
次いで「技能実習」が35万8159人(同11.1%、同10.2%増)、高度な就労系の在留資格となる「技術・人文知識・国際業務(技人国)」が34万6116人(同10.7%、同10.9%増)、「留学」が30万5916人(同9.5%、同1.8%増)、朝鮮半島にルーツを持つ「特別永住者」が28万4807人(同8.8%、同1.4%減)、「家族滞在」が24万4890人(同7.6%、同7.5%増)、日系人と称される「定住者」は21万1561人(同6.6%、同2.2%増)でした。
コロナ禍の影響で大きく減少していた「技能実習」と「留学」が大きく回復しています。
図表:アドバンスニュース作成
中国の78万8495人(昨年末比3.5%増)が最多で、構成比は全体の24.5%を占めます。次いで、ベトナムの52万154人(同6.3%増)で構成比16.1%。21年にベトナムに抜かれた韓国は41万1748人(同0.1%増)で12.8%。フィリピンは30万9943人(同3.8%増)の9.6%、ブラジルが21万563人(同0.5%増)の6.5%、ネパールが15万6333人(同12.2%増)の4.8%です。
上位10カ国はいずれも前年末に比べて増加。また、昨年末に11位だったミャンマーが8位に浮上しています。
都道府県別にみると、東京都の62万7183人(同5.2%増)をトップに愛知県、大阪府、神奈川県、埼玉県が20万人台。千葉県、兵庫県、静岡県が10万人台で、この上位8都府県が全体の65.7%を占めます。
2023年7月1日時点の不法残留者数は7万9101人で、半年前の1月1日時点と比べて12.2%増加しています。国籍別では、ベトナムが1万6812人(構成比21.3%)で最も多く、次いで、タイが1万1472人(同14.5%)、韓国が1万769人(同13.6%)、中国が6788人(同8.6%)と続き、上位10カ国すべてで増加しました。
2019年をピークに、約2年にわたり在留外国人が減少する“コロナショック”に見舞われましたが、22年からは入国規制の緩和で急伸。旅行などの「短期滞在」を除く不法残留者の在留資格は、「技能実習」「特定活動」「留学」と続きます。
政府は、いわゆる「不良外人」の摘発や強制送還にも注力していますが、送り出し国に問題のある機関もあり、政府は不法残留が目立つ相手国の機関に対して受け入れ停止の対応をとっています。
1960年代後半から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価され、これを原型に1993年に制度化されました。
技能実習制度の目的・趣旨は、日本で培われた技能・技術、知識を開発途上国へ移転し、経済発展を担う「人づくり」に寄与する国際協力の推進です。技能実習法には、基本理念として「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と記されています。
期間は最長5年で、技能の修得は技能実習計画に基づいて実施。対象職種は87職種159作業です。
企業単独型と団体監理型の2つの方式があります。企業単独型が1.4%、団体監理型は98.6%と圧倒的に後者が主流です。
企業単独型=日本の企業(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式 |
引用:国際人材協力機構(JITCO)「外国人技能実習制度とは」
団体監理型=事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業(実習実施者)で技能実習を実施する方式 |
引用:国際人材協力機構(JITCO)「外国人技能実習制度とは」
団体監理型で技能実習生を受け入れるには、外国人技能実習機構に対し監理団体の許可申請と技能実習計画の認定申請、そして、入国管理局に対し在留資格認定証明書交付申請を順番に行う必要があります。
引用:国際人材協力機構(JITCO)「外国人技能実習制度とは」
国内での人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。改正出入国管理法によって在留資格「特定技能」が新設され、2019年4月から運用がスタートしました。2023年6月末現在、1号は17万3089人、2号は12人が就労しています。
・特定技能1号=相当程度の知識または経験を要する技能を持つ外国人に与えられ、在留期限は最長で5年 ・特定技能2号=熟練した技能を有する外国人に与えられ、在留期限が更新できるため、条件を満たせば長期の滞在や家族の同伴が可能 |
(1)介護(2)ビルクリーニング(3)素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業(4)建設(5)造船・舶用工業(6)自動車整備(7)航空(8) 宿泊(9)農業(10)漁業(11)飲食料品製造業(12)外食業
受け入れ企業に義務付けられている1号外国人に対する支援(支援計画書の作成など)について、その業務を代行する機関です。業界団体や社会保険労務士、行政書士など、支援計画書の作成ができる個人・団体であれば、原則として登録できます。
外国人技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべき――。政府の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」は2023年の秋、現行制度の廃止と実態に合わせた新制度の創設を盛り込んだ報告書を公表しました。
新制度のポイントは、現場実態に即した制度の弾力化と実習生の待遇改善、そして特定技能との連動性です。
図表:アドバンスニュース作成
●目的
人材育成機能は維持しつつ、人材確保も加えて実態に合わせる
●職種
技能実習の87職種159作業を改編して、特定技能の12分野に合わせる。技能実習期間が終わった後、特定技能へのスムーズな移行ができないという課題があったため、どの職種でも「特定技能1号」に移行できるようにする
●受け入れ見込み人数
人手不足状況の確認や受け入れ見込数の設定は、様々な関係者の意見やエビデンスを踏まえる仕組みを設け、プロセスの透明化を図る
●転職(転籍)
現行制度では技能実習生が職場を変更する「転職(転籍)」を認めていないが、新制度では「同じ職場で1年以上就労し、ある程度の日本語が話せるなどの要件を満たせば本人の意向で転籍ができる」とする
引用:出入国在留管理庁HPより抜粋
●監理団体・登録支援機関
いずれも許可要件を厳格化する。外部監査の強化や受け入れ企業数に応じた職員の配置、相談対応体制の整備も加える
●日本語能力
一定水準の日本語能力を確保できるよう、就労開始前の日本語能力の担保方策及び来日後において日本語能力が段階的に向上する仕組みを設ける
政府は2024年の通常国会に関連法案の提出を目指しています。そこで、技能実習制度の廃止と新制度移行への経過期間を含む「新たなスキーム」の詳細が確定します。
一定の専門性・技能を有する新たな外国人材の受け入れと、日本で生活する外国人との共生社会の実現に向けて、政府は法務省や文部科学省、厚生労働省など関係するすべての省庁と連携し、一丸となって取り組みを進めています。
現在、「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を策定して、毎年、内容をブラッシュアップしています。
(1)円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育の取り組み
(2)外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制の強化
(3)ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援
(4)共生社会の基盤整備に向けた取り組み
就労を目的とする外国人の受け入れ拡大を狙い、政府は人道的な批判が絶えなかった技能実習を再構築して、特定技能との連動を軸にした制度づくりを進めています。政府の方向性は「外国人との共生社会の実現」にあり、日本で生活する外国人に「嫌われる」就労と社会環境を改善するため、制度の弾力化と生活面などソフト面を充実する考えです。
技能実習との連動性を高める特定技能については、トラックやタクシー、バスの運転手といった自動車運送業を新たな受け入れ分野として追加する流れが固まるなど、企業と地域社会は「共生社会」に向き合い、関連する情報にアンテナを高くしてスピーディに対応する必要があります。
これから5年を待たずして、在留資格を持って日本で生活する外国人は400万人を超える見通しで、高度人材の迎え入れを含め私たちの職場の“景色”はさらに変わっていきます。成長を続ける企業にとって、外国人の採用と活用は必須の人事戦略となりそうです。