厚生労働省が10月6日発表した毎月勤労統計の8月速報値によると、労働者1人あたり現金給与総額は28万2700円(前年同月比1.1%増)で20カ月連続のプラスとなりました。しかし、物価上昇分を差し引いた実質賃金指数(20年=100)は83.0(同2.5%減)で17カ月連続のマイナスとなり、賃金上昇の勢いは限定的です。マイナス幅は1月の同4.1%を最大に、その後は2~3%前後で推移。春闘の賃上げ効果の出る5月は一時的に0.9%に縮小しましたが、7月以降は賃上げ効果が浸透していません。
基本給など所定内給与は25万1463円(同1.6%増)で、残業代などの所定外給与は1万8619円(同1.0%増)、ボーナスなどの特別給与は1万2618円(同5.4%減)でした。雇用形態別の総額は、正社員が中心の一般労働者は36万6845円(同1.2%増)、パートタイム労働者は10万3312円(同2.9%増)です。
産業別で伸びたのは、「不動産・物品賃貸業」の33万9182円(同5.8%増)と「金融・保険業」の39万7978円(同5.7%増)の5%台にとどまり、「鉱業・採石等業」は36万5046円(同17.4%減)、「学術研究等」も40万410円(同2.7%減)のマイナスとなりました。月間総実労働時間は132.3時間(同0.0%)の横ばい。月末の常用労働者数は5249.6万人(同1.8%増)で、パートタイム比率は31.94%(同0.09ポイント増)となっています。
東京商工リサーチが10月10日発表した2023年度上半期(4~9月)の全国企業倒産(負債1000万円以上)は4324件(前年同期比37.7%増)、負債総額約1兆5960億円(同8.3%減)となり、件数は2年連続で増え、上半期としては19年度以来4年ぶりの4000件台となりました。
要因としては「ゼロゼロ融資利用」が333件、「物価高」が334件など。コロナ禍などで業績回復の遅れた企業の「息切れ」が目立ちますが、売上増に伴う資金需要に対応できない企業倒産も一段の押し上げ要因となりつつあります。
件数の多かった産業は「サービス業他」の1468件(同42.1%増)がダントツ。次いで、「建設業」が資材高騰などで852件(同41.1%増)と続きます。1991年以来、全10産業で前年同期を上回りました。負債額ではパナソニック液晶ディスプレイとユニゾホールディングスの2社が1000億円を超えました。
労働政策審議会の雇用環境・均等分科会は10月12日、パートタイム労働者らの「年収の壁」を緩和する雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案について、厚生労働省案を「おおむね妥当」と了承しました。公布・施行とも今月下旬の予定。専業主婦ら被扶養者の第3号被保険者が厚生年金・健康保険の負担を避けるため就業調整する「106万円の壁」、国民年金・健康保険の負担を避けるために就業調整する「130万円の壁」に対して、手取り収入が減らないよう雇用保険から企業に助成する内容です。