厚生労働省が5月末に発表した「雇用分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談実績」によると、2022年度にハローワークに寄せられた相談件数は225件(前年度比19件減)で、過去5年間の最少となりました。内訳は「合理的配慮の提供」が188件(同1件減)、「障害者差別」が37件(同18件減)と差別関連が大きく減ったのが要因です。これまでは年間250件前後で推移していました。
差別に関する内容では「募集・採用時」が23%、「賃金」が13%を占めています。合理的配慮に関するものでは「上司・同僚の障害理解不足」が25%、「業務内容、業務量」が18%、「相談体制、コミュニケーション」が13%など(複数回答)となっています。
解決策としては障害者雇用調停会議における調停申請が9件、労働局による紛争解決の援助申し立てとハローワークによる雇用主への助言が各1件でした。障害者雇用促進法では雇用主に対して、雇用した障害者に対する差別禁止や合理的配慮の提供義務を定めています。
厚労省は相談実績の公表と併せて、2022年度の「ハローワークを通じた障害者の職業紹状況」を発表しました。それによると、新規求職申し込みの23万3434件(前年度比4.2%増)に対して、就職件数は10万2537件(同6.6%増)となり、就職率は43.9%(同1.0ポイント増)と2年連続で伸びています。求職、就職とも件数はコロナ前の水準に改善していることがわかります。
就職件数の障害別内訳は身体が2万1914件(就職率37.7%)、知的が2万573件(同57.8%)、精神が5万4074件(同43.8%)など。いずれも就職率は前年度を上回っています。障害者雇用の多い医療・福祉、製造業、その他サービス業、卸・小売業などで求人が増えたことが要因です。
障害者雇用は新たなフェーズに入ります。厚生労働省は本年度(23年度)から5年間にわたる「障害者雇用対策基本方針」を5月に定めており、(1)障害者雇用の質の向上に向けた事業主責務の明確化(2)雇用施策と福祉施策の更なる連携強化(3)障害者の多様な就労ニーズを踏まえた働き方の推進(4)障害者雇用の質の向上――などを掲げて企業に浸透を図ります。
背景には、来年4月からの法定雇用率のアップをはじめ、障害者雇用にとって就労拡大が一段と進む見通しです。同時に、就労の選択肢拡大、職業能力の向上、精神障害者をはじめとする職場の定着率の向上、短時間労働の法定雇用率への算入など、新制度のスムーズな運用が企業に求められていることがあります。