厚生労働省は4月17日、「いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について」を発表し、同日開いた障害者雇用分科会(山川隆一分科会長)に報告しました。それによると、3月末時点で実施企業は23法人、障害者の就業場所は125カ所あり、最も多いのは「農園」の91カ所で、「サテライトオフィス」が32カ所でした。
利用企業は延べ1081社以上、就業障害者は6568人以上に上っています。全国の都道府県労働局を通じてアンケート調査に加え、現場の聞き取り訪問も実施しました。
内容は利用のきっかけ・目的、業務内容、募集・採用、労働者の配慮業務量、雇用形態・期間・労働条件、勤怠管理など、職業能力の開発・向上の7項目について報告。
その結果、懸念事項として「在籍型出向の場合など、雇用率達成のみを目的にした利用」「利用企業が主体的に業務を選定・創出しようとしていない場合があり、その場合は障害者の特性や必要な配慮への確認が十分でない」「無期雇用転換ルールの回避策として活用されている可能性」を挙げました。
同時に、「障害者の特性を踏まえた業務選定、マッチングを通じて戦力化するノウハウを、他の全従業員の能力開発に生かせることができ、経営改善に貢献」「障害者自身が商品開発に参画することでヒット商品が生まれ、事業拡大に貢献」などのメリットも挙げました。
障害者雇用ビジネスは「代行ビジネス」と呼ばれ、障害者を雇用した企業が、代行会社に障害者を派遣し、そこで就労してもらう方式です。企業は法定雇用率をクリアでき、障害者は通常の賃金より高い賃金を得られることなどから、近年、急増しています。
しかし、「農園」など雇用企業と関係ない業務内容が多いことから、「雇用率達成だけを狙った禁じ手」などの批判も多く、国会は昨年暮れの改正障害者雇用促進法の成立に際して、「代行ビジネスを制限するよう、企業への指導を検討」を付帯決議に盛り込み、厚労省に対応策を打ち出すよう求めていました。
この日の報告に対して、出席委員からは「そもそも、行政は代行ビジネスを認めるのか」「雇用の質向上という点を考えると、懸念が強まる」など否定的な意見がある一方、「好事例とそうでない部分を明確に区分けして、提示してほしい」などの要望もあり、厚労省も事例を精査してパンフレットを作成する考えを示しました。
東京商工リサーチが4月17日発表した2023年「企業の人手不足に関するアンケート」によると、66%の企業で「正社員不足」を訴え、運送業などの業種で深刻なことがわかりました。調査は3~11日に実施し、有効回答の4445社分を集計。
正社員が「非常に不足」している企業は11.4%、「やや不足」は55.0%で、計66%を超えました。大企業ほど顕著で73.2%に達しています。これに対して、中小企業の「不足」は65.5%で、同社は「大企業に比べて中小は業種によって業況、受注回復に時間が必要な一面がある」ことを要因に挙げています。