東京商工リサーチが発表した2022年度賃上げ調査によると、賃上げを実施した(予定を含む)企業は82.5%の高率でしたが、賃上げ幅は3%未満の企業が7割を占める低い水準にとどまっていることがわかりました。
賃上げをした企業は6204社中5120社で、前年度の70.4%から大幅に増え、「官製春闘」当時の17年度の82.7%に次ぐ水準。ただ、企業規模別では大企業の88.1%に比べ、中小企業は81.5%と6.6ポイントの差がつきました。産業別では製造業が87.3%で最も高く、農林漁業・鉱業が60.7%で最低でした。
一方、実施企業2832社の賃上げ率は「1%以上~2%未満」が33.4%で最も多く、「2%以上~3%未満」が31.9%。1%未満も含めると3%未満が69.8%の多数を占めました。総務省の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は4月から4カ月連続で2%を上回っており、今秋以降にも食品などの断続的な値上げが見込まれるだけに、実質賃金が
プラスになるかどうか極めて不透明な情勢です。
厚生労働省が発表した毎月勤労統計の7月速報値(従業員5人以上)によると、労働者1人あたりの現金給与総額は37万7809円(前年同月比1.8%増)で7カ月連続のプラスでした。しかし、物価上昇分を差し引いた実質賃金指数(2020年=100)は115.6(同1.3%減)で、4月以降4カ月連続のマイナスとなりました。エネルギー価格の高騰などによる物価上昇が本格化しているのに対して、賃金の上昇が追いつかない局面が7月も続いており、春闘の賃上げ効果はほとんどみられません。
就労形態別の現金給与額は、正社員が中心の一般労働者が50万828円(同1.7%増)、パートタイム労働者も10万6167円(同3.0%増)。残業代などの所定外給与が一般労働者は2万6281円(同4.5%増)、パート労働者も2800円(同11.5%増)と増えました。また、夏のボーナスが各15万5829円(同2.7%増)、5708円(同9.9%増)と増えています。
産業別の伸び率では、コロナの行動制限解除を受けて「夏休みレジャー」に備えた「飲食サービス等」が同13.0%増と6月に続いて二ケタ増となりましたが、それ以外はそれほど伸びませんでした。「複合サービス」の同1.5%減など、16産業のうち4産業でマイナスです。
月間総実労働時間は139.8時間(同0.2%減)で、3カ月ぶりの減少。常用雇用者数は5162.8万人(同1.1%増)で、パートタイム比率は31.29%(同0.06ポイント増)でした。