2022年の新年度を皮切りに、企業にとって対応が必要となるさまざまな新しい制度や改正法が施行されました。特に今年の春は、人事・労務、法務などに密接な「働き方関連」の変更点が目白押しです。4月から新しくスタートする法律、変わる法律について、前編に引き続き、企業の対応や準備が必要な情報をお伝えします。
育児・介護休業法を改正して、男性の育休取得を促進します。男性の育児休業取得率は、2020年で12.65%(雇用均等基本調査)まで上昇したものの、政府目標の13%には届かず、欧米を中心とする諸外国よりも低い水準にあります。このような背景から、男性の育児休業取得促進のために、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設などが制度化されます。
5つの改正の概要と施行期日を整理すると、
このうち、4月施行の(1)「企業による環境整備・個別の周知義務付け」は、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備。現行の育児休業と改正による新制度を取得しやすい雇用環境に整備することを企業に義務付けます。
また、(2)「有期雇用の取得要件緩和」は、有期雇用の育児休業・介護休業の取得要件のうち「企業に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件を廃止します。就業規則の変更も必要となる改正法だけに、4月を皮切りに計画を立てて進めていく必要があります。
プラスチック資源循環促進法は、4月から施行される新法です。製品の設計からプラスチック廃棄物の処理まで、そこに携わるすべての工程でプラスチック資源循環の取り組み(3R+Renewable)を促進します。国、企業、消費者のいずれにも役割が求められており、企業には主に4つの役割があります。
海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応をきっかけに、日本国内におけるプラスチックの資源循環を一層促進する重要性が高まっており、企業の関心や取り組みもさらに高まっていくと見込まれています。
民法改正に伴い、4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。親の同意がなくても、携帯電話の購入やアパートを借りられるほか、クレジットカードを作る、ローンを組んで自動車を購入するなどができるようになります。
一方、これまで未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には,原則として、契約を取り消すことができましたが、「18歳成人」になると、この対象から外れ、悪徳商法などによる消費者被害も懸念されています。主な変更点は2つあります。
①と②のいずれも20歳から18歳に引き下げ。「成年」と規定する他の法律も18歳に変更
従来までの婚姻開始年齢は、男性が18歳、女性は16歳でしたが、男女とも18歳に統一
日本の成年年齢は、明治9(1876)年以来、20歳とされていました。近年、憲法改正国民投票の投票権年齢や公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められるなど、18歳、19歳の方にも国政上の重要な事項の判断に参加してもらうための政策が進められてきました。
こうした流れを踏まえ、市民生活に関する基本法である民法においても、18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論が進められ、世界的な流れである「18歳」に引き下げることになりました。
2003年に制定された個人情報保護法は、個人情報を取り扱う事業者が順守すべき義務を定めたものです。その後、国際的動向や情報通信技術の進展、それに伴う個人情報を活用した新たな産業の動きを踏まえ、2015年以降はおおむね3年ごとに制度の見直しを行っています。
今回の改正は、国民の個人情報に対する意識の高まりや、技術革新を踏まえた個人情報の保護と利活用のバランス、越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応の観点から新ルールを設けました。ポイントは6つです。
改正前、本人が個人情報取扱事業者の保有個人データの利用停止や消去を請求できるのは、目的外利用されたときと不正の手段で取得されたときに限られていました。今後は、不適正な利用がなされたときも利用停止が請求できるように拡大しています。
改正法では個人情報取扱事業者に対し、個人データの漏えいが発生した場合の報告義務と本人に対する通知義務が新設されました。
従来まで、認定個人情報保護団体の業務は個人情報取扱事業者のすべての分野(部門)を対象とする必要がありましたが、改正法では特定の分野(部門)だけを対象にできるようになりました。事業者の自主的な個人情報保護への取り組みを推進しています。
イノベーションを促進する観点から氏名を削除して、他の情報と照合しない限り個人を特定できないように個人情報を加工した場合は、内部分析目的の利用に限定する等を条件に、開示・利用停止請求への対応等の義務を緩和しました。
措置命令違反、報告義務違反、個人情報データベースの不正流用をした個人及び法人に対する罰則が重くしました。措置命令に違反した個人に対しては、「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」から「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に強化されました。
日本国内にある者に係る個人情報を取り扱う外国事業者を報告徴収・命令の対象とし、罰則も適用されることになりました。