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『小さな組織から大企業まで実践に役立つ等身大のエンプロイヤーブランド』レポート③良い組織作りのために人事が果たす役割|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|Apr 25, 2022 3:00:00 PM

エンプロイヤーブランドとエンゲージメントは大きく関係すると、JAPAN CLOUD人事・採用ディレクターの千葉氏は言います。社員のエンゲージメントとエンプロイヤーブランドを高めるには、採用ミスマッチを防ぎ、個の発信を推しつつも全社をあげてエンプロイヤーブランディングに取り組む必要があります。

シリーズ最終回となる今回は、変化していく時代のエンプロイヤーブランディングのあり方と人事が果たすべき役割を、Q&Aを通じてご紹介します。

 

 

ゲストスピーカー
千葉 修司 氏

ジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社 人事・採用ディレクター


大日本印刷で人事総務を担当後、マーサージャパン、アクセンチュアにて組織・人材マネジメント、営業支援コンサルティングに従事。その後、セールスフォースのセールス・イネーブルメントに初期メンバーとして参画し、 マルケトでのセールス・イネーブルメント・人事責任者等を経て現職。

 

ファシリテーター
西野 雄介
ランスタッド株式会社 人事本部 タレントアトラクション部 部長

人材会社を経てシンガポールへ移住し、エンワールドのシンガポール法人にて経営人材ヘッドハンティングや同事業の経営を経験。帰国後は事業会社の人事・採用責任者等を経験し現職。Forbes JAPANのオフィシャルコラムニストとして、キャリアや組織についても発信。

 

候補者に伝わらないことを伝える手法

――求人広告やジョブスクリプションで情報を伝えるための工夫はありますか?

千葉:文言で伝えられないことは、実際に会うことでしか感じられないと思うんです。とは言え、面接の過程でそれが分かるのはもちろんハッピーですけれど、その前にお互いを知るのはすごく大事なのかなと思っています。そこで前職のマルケトでは、毎月社員座談会を開催していました。

ポイントは、座談会に参加していただいても、応募してもしなくても良いというところ。そしてその場には人事だけでなく一般の社員にも参加していただき、継続的に開催するという点です。

ここにマーケティングオートメーションの仕組みも活用して自社のタレントプールを作り、その方が自社のブログやホームページなどをどれくらい見ているかを可視化しました。ホットになってきた方に「座談会に参加しませんか」とご案内するオートメーションの仕組みも作りました。

そして月に1回くらいの頻度で座談会を開催し、1時間オフィスにお迎えするということをやっていました。当然ジョブディスクリプション(以下、JD)もご紹介しますけれど、それよりも伝わりますし、正しく伝えると適切なフィードバックをいただけます。

「今の私には難しいと思いました」「ぜひ、チャレンジしたい」「こんなギャップがありますが、どう思いますか」というように。30分の面接を一生懸命やるよりも、よほど伝わると思います。
 
 
 
西野:すごくいいですね。多くの会社、特に大きな会社は、かなり応募は集まるけれど、その中から実際に入社する数はすごく少数になる。入社する数以外の大多数の方々はお断りすることになるので、会社には深く関わっていただいたのに苦い経験をさせてしまう。そこも「苦い経験だったけれど良い会社に出会えた」と思っていただくことも重要なのではないかと思っています。これは難しいことでしょうか?
 
 
千葉:2つの観点があると思っています。1つは、候補者体験・評判。ご縁がなかったとしても、将来的にはお客様になっていただくかもしれないですし、良い候補者体験であるべきだというのは原理原則だと思うんですよね。我々の関連会社の1つは、必ずインタビューが終わった後に、候補者体験のサーベイが届くという会社もあります。そういった観点で大事だというのは1つあると思います。

一方でもう1つは、今じゃなかった、このポジションじゃなかった、でも「いつかご縁があるかもしれない」という場合。この3カ月ではご縁がなかったけれど、半年後あるいは1年後、あるいは2年後であれば、ご縁があるというケースは、比較的多い。事実として私も経験があります。そういった観点で、採用プロセスという出会いの経験をお互いが大事にすることはとても大切だと思います。

例えば中途採用の面接に来た方が「実は新卒の時に受けていました」「他の会社に行ったけれど、やっぱり御社で働きたい」というケース。リーガル上の問題があるかもしれないので簡単なことは言えないのですが、今の人事・採用の仕組みでは、10年後に面接に来られた方の情報はトラックできないし、していないですよね。

新卒・中途採用が分かれているのもあるかもしれませんが、こういった事例は現場ですごくあると思っています。履歴が残せるかどうかは置いておいて、そういった時に「その時検討していただいてありがとう」「どんな点で当社を忘れないでいてくれたのか聞きたい」という気持ちが持てるといいだろうというのは思います。

もちろん、どうしてもバックグランド的に定めたJDに合わないということもあるかもしれません。カルチャーフィットも含めてですね。経験上、そこはしっかり伝えてあげる方が将来的に候補者の方もハッピーになれるというのも感じます。

 

 

小さな組織こそ取り組むべきエンプロイヤーブランディング

――小さな企業でエンプロイヤーブランドが構築できておらず、スカウトや募集をかけてもなかなか返事がもらえません

千葉:同じ悩みを私も抱えています(笑)。セールスフォース・ジャパンやアドビで送っていたスカウトメールの返信率と、我々が送るメールの返信率は大きく違います。それはそうですよね。
しかしスタートアップや小さい規模だからこその魅力を最大限活かして、関連会社の社長が直接コンタクトしたりなど、工夫をしています。1:nではなく、1to1コミュニケーションだと反応も違ってきますよね。

それからアウトバウンドを行う前提として、「受け皿」が無いとダメだと思っています。社長がなぜこの会社を立ち上げたのか、就任してどんなことを思っているのか、あるいは参画していただいた社員はどんなメンバーがいて、どんな気持ちで働いているのか。アウトバウンドメールを開封した方がサーチできる場を準備する。「等身大」を見せる場作りは、小さければ小さいほど早くからやっていくべきなのではないでしょうか。

紹介やリファラル、エージェント様からの紹介、ダイレクト応募など、これらに対するブランディングはMECEにきれいに整理できる関係ではないと思っています。ブランドが高まると、どのルートからも応募が増えたり、重なったりする。そこを目がけて早いタイミングから、今いらっしゃる社員の方々の等身大を見せにいく。あるいは、少しでも接点を持てた方にそれを理解していただくためのコンテンツを作っていく。

例えば、ある関連会社の社長が今いる20人の社員向けに作った、自分が作りたい会社や価値基準をまとめた5ページ程度の資料があります。最近それを少しだけアップデートして候補者の方にお渡ししたところ、一層強く会社に興味を持っていただき、とても効果がありました。
 
 
西野:ネタは色々なところに散らばっている。それをいかに加工して、いかに外に出しいくかも、1つのポイントですよね。
 
 
千葉:マーケティングも一緒ですよね。初期のフェーズはマーケティングもなかなかリードが取れない、イベントをやってもなかなか見込み顧客は来ない。でもコンテンツを作るところからはじめて一生懸命やっているので、本当に一緒だと思っています。

 

 

さまざまなブランディングの形と人事の役割

――現場に出ている社員の帰属意識が強まらない傾向があり、社員が会社に愛着を持つための工夫を伺いたいです

千葉:以前私が属していたコンサルティングファームでは、今も昔も一定の離職率があると思いますし、各プロジェクトごとにお客様先常駐型の働き方をしていました。でも社員の帰属意識は比較的高かったと思います。ただしそれは、皆が会社に対する帰属意識というパターンだけではなく、お客様への帰属、信頼するパートナーやマネージャーへの帰属というものもあったと思います。

仮に自社ではなくお客様に対する帰属意識が高いのだとすれば、私はそれでも良いと思っています。そのお客様を大事にする会社なのだというブランディングをもっと強くしていった方が良いのではないでしょうか。お客様にコミットメントすることが自分の会社にとっても大事なのであり、そういう人材を求めていると思い切り振っても良いと思います。
自社とつながってくださいということだけがメッセージではないと思うんですよね。色んな形のエンゲージメントがあって良いのではないでしょうか。

 

――従業員が等身大の自分を発信していく時、人事が積極的に関与してプッシュしていくべきでしょうか、環境整備に徹し注視するべきでしょうか

千葉:前者だと思います。積極的に関与していく中で全部をやらずに、「任せる」「待つ」というアクションが必要。人事が良い組織作りにコミットメントしてくれていると、事業サイドはそれをすごく感じると思うんですよね。それはとても大事なことですし、良い組織作りをリードしていくという意志を感じてもらえます。逆も然りですが。

同時に、人事だけの活動だと思われないための仕組みと最初のコミュニケーションは、すごく大事だと思います。いかに黒子としてリードできるか、いかに座組を作るか。押す引くではなくて、そのコーディネーターとしてどう動くかを考えることでしょうか。

 

 

これからの“等身大”エンプロイヤーブランディングと人事の役割

千葉:今回お伝えしたかったメッセージを、5つにまとめました。

本日のまとめ

  • 雇用主と従業員の関係が変化:「主従」→「対等」
  • エンプロイヤーブランディングは「個」の発信力が一層強まる
  • ポイントは「等身大」=各個人が、なぜそこで働くのか
  • 「会社の成長」=「個の成長」の関係性がエンゲージメントの鍵
  • ミスマッチ防止のために上記をいかに「採用」「育成」に組み込めるか

 

千葉:前提としては、雇用主と従業員の関係が変わってきているということ。その中で、エンプロイヤーブランディングは「個」の発信力が一層強まると思っています。そうした時に、それはコントロールできるものではないので、等身大でありつつ「各個人がなぜそこで働いているか」ということが重要になります。

そのWhyに答えるのは、会社と個人の成長がイコールの関係性であったり、会社の成長を喜べるということ。これがエンゲージメントの鍵です。そのエンゲージメントを高めるには、ミスマッチ防止のためにも、会社の成長と個人の成長をいかに採用やオンボーティングの仕組みに落とし込めるかです。

人事の役割とは何かと問われると、「会社と個人の成長をイコールできる会社を作ること」と、今私は考えています。

 

西野:ありがとうございます。会社と従業員の関係は、会社によるとは思いますが、対等になる方向に向かっているのは間違いないと思います。ご参加いただいている皆様のヒントになれば幸いです。

あっという間に時間が過ぎて、すごく楽しかったです。千葉さん、ご感想を一言いただけますか?
 
 
 
千葉:思った以上に等身大にしゃべりすぎて、これが皆様のお役に立つ内容だったかどうかが不安なんですけれど。あ、今回のテーマにあった、等身大の私のブログもあるのでよかったらご覧いただけたら嬉しいです。
https://japancloud.jp/organization​​
 
でも途中で「私を通してJAPAN CLOUDの雰囲気が伝わる」とおしゃっていただいて(注:「エンゲージメントに直結するジョブディスクリプション」参照)、人事がそういう役割になれるというのは良いことかなと、話を伺って思いました。ありがとうございました。
 
 
 
西野:本日はありがとうございました。
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