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共創成功の鍵は「指揮者」2社の事例に学ぶイノベーションの最前線

作成者: randstad|Aug 19, 2025 4:34:22 AM

※2024年12月時点の情報です。

 

成功の鍵は「指揮者(コンダクター)」だった!2社の共創事例から学ぶ成功のポイント

ランスタッドのタレントトレンドレポート2025によると多くの企業は今、外部からの採用だけでなく、社内人材の発掘や活用を重視しています。一方で、企業の成長にイノベーションは不可欠で、トランスフォーメーションを実現し持続的な企業成長を遂げることを目指しています。しかしながら、既存の組織文化の中で社員の創造性を引き出し、事業成長に繋げることは容易ではありません。

そのような課題感を抱える企業が解決策を探るヒントとして、2025年7月23日、ランスタッドは「共創」をテーマにしたオンラインセミナー「トランプ関税時代を勝ち抜く、稼げる企業へ!共創で切り拓くイノベーション経営最前線」を開催しました。

セミナーでは、共創を実装し収益に結びつくイノベーション経営を実現している2社の成功事例を紹介。共通項として「指揮者」の存在と、企業文化を尊重する姿勢が挙げられました。ほかにも、チーム育成法やイノベーションに適した拠点開設などソフト面での取り組みも紹介されましたので、今回はその様子をお伝えします。

ランスタッドでは外部から共創人材の採用を検討している企業への、プロフェッショナル人材のご紹介も承っています。

 

 

 

【登壇者プロフィール】

  • ミカドテクノス株式会社 代表取締役社長 伊藤 隆志 氏
    1994年にミカド機器販売株式会社入社し、IT化時代の営業スタイルを構築。30名規模の中小機械装置メーカーを率いて世界のトヨタと共創し、世界初の技術を開発。
    ※ 2020年5月末現在。トヨタ調べ

  • 株式会社明電舎 DX推進本部 事業イノベーション部 部長 村松 勝 氏
    アジャイルと共創によるビジネスモデル変革に取り組み、共創の拠点となる「デジタル・ラボ」の開設にも携わる。社内ICT教育の企画やカリキュラム開発などにも取り組む。

  • ランスタッド株式会社 組織開発ディレクター 川西 由美子
    産業組織心理学に基づくイノベーションコンサルタントとして、さまざまな企業のチェンジマネジメントを支援。本セミナーではナビゲーターを担当。
 

 

【事例1】中小企業が挑む、大企業との「対等な共創」(ミカドテクノス)

ミカドテクノス株式会社 代表取締役社長 伊藤 隆志 氏は、トヨタ自動車株式会社との協業による異分野開発の経験を紹介しました。同社は30人規模の中小企業でありながら、トヨタの新技術「固相電析法(SED)」の提供を受け、環境負荷の低い新型めっき装置を共同開発しています。

当初、トヨタは複数の企業へアプローチしていたそうですが、その中でも小回りの利く意思決定、スピード感、そして既存業界構造にとらわれない柔軟な発想を持った同社がプロジェクトにマッチしたといいます。



職域を超えた柔軟な対応力

「面白そうだし、やってみよう」とトヨタの呼びかけに応じたミカドテクノスですが、当然既存事業があり、専属チームを組む余裕はありませんでした。そこで力を発揮したのが、同社の「組織力」と「現場力」。現場・技術・営業の距離が近いフラットな組織と、営業であっても装置修理・実験まで担う「多能工」が文化として定着していたことでプロジェクトを推進できたのです。

【ミカドテクノスの人と組織の力が武器になった瞬間】

  • 専属チームを組む余裕はない
  • 現場・技術・営業の距離が近いフラットな組織
  • 営業が装置修理・実験まで担う「多能工」が当たり前
  • トヨタとの基礎実験も、営業担当が中心となり対応
  • 通常業務が多忙な技術者に代わり「現場力」で挑戦
  • トヨタからの技術支援(めっきの基礎)を受けて成長

トヨタとの基礎実験も、通常業務が多忙な技術者に代わり、営業担当が中心となって対応。こうした挑戦を通じて、ミカドテクノスはトヨタからの技術支援(めっきの基礎)を受けて成長していったそうです。

 

共創にふさわしい組織風土の教育・醸成

また、ミカドテクノスの共創を支えたのは、社員への理念浸透教育でした。ミカドテクノスではボトムアップ型の組織であることを重視。若手社員にもまず「考える機会」を与え、失敗を許容し挑戦をたたえる空気を作り上げています。
こういった理念を浸透させるために、定期的に開催している勉強会では以下のような逆転の発想を取り入れたディスカッションを行ったといいます。

「Q.どのようなことをすれば顧客が愛想を尽かしてミカドの商品を買わなくなるでしょうか?」

例えば…
・不良品ばかり納入する
・納期遅れを繰り返す
・電話の応対が悪い
…etc

顧客に愛され、生き残れる会社になるには、まず「逆の状況」を突き詰めて考え、それをやらないようにすればよい……こうしたユニークなワークショップなどを通じて、全社的な思考変革を促し、共創にふさわしい組織風土を育んでいたのです。

 

組織と組織を対等につなぐ「指揮者(コンダクター)」

後のディスカッションで、共創における「指揮者(コンダクター)」の必要性を問われた伊藤社長は、「共創では組織対組織の関係となるため、方向性を整理し調整する指揮者(コンダクター)の存在が欠かせない」とし、自社の場合は営業部門の責任者がその役割を担ったと紹介しました。
トヨタ側にも同様にコンダクターが存在し、両社の責任者同士が密に連携したことで信頼関係が構築され、共創が円滑に進んだと強調。その中でも特に、トヨタの担当者が小規模なパートナー企業であっても自らと対等に扱い、信頼と心遣いを示したことが成功の鍵だったと振り返ります。

 

 

【事例2】大企業を変える「アジャイル」と「ハイブリッド組織」(明電舎)

株式会社明電舎 DX推進本部 事業イノベーション部 部長 村松 勝 氏は、DX推進の一環としてアジャイル開発を導入した背景と成果を紹介しました。

 

従来のピラミッド型とアジャイルの共存を実現

まず同社は従来の縦割り・ピラミッド型の組織体制では、変化への迅速な対応や、新たな顧客価値の創出が難しいと判断したといいます。そしてコロナ禍を契機に、遠隔監視システムの開発にアジャイルを試験導入し、少人数・短期間での成果創出を実現しました。

 

以降、同社では「共創を前提としたアジャイル開発」が正式に採用されました。例えば、沼津工場の変電所更新プロジェクトでは、社内関係者に加え、現場作業員や他部門との対話を重ねることで、実装可能性の高いソリューションを共に作り上げたのです。
そして現在も、旧来のピラミッド型組織の一部に開発拠点「デジタル・ラボ」を軸としたアジャイル開発チームを共存させ、双方の文化に敬意を払いながらお互いが共創へ向かうことを志しています。

 


 

人脈やアイデアを惜しみなく投じる「指揮者(コンダクター)」

後のディスカッションで、共創における「指揮者(コンダクター)」の必要性を問われた村松氏は、自社では組織のマネージャーではなく、熱意を持った元エンジニアが共創を推進する「指揮者(コンダクター)」となって、社外の技術やパートナーを発掘していったと紹介しました。また、同社のコンダクターはプロジェクトが進んでも共創の場には直接介入せず、次なる新たな出会いやアイデアを提供するスタンスだったといいます。

 

 

明日から実践できる「共創」への一歩

ミカドテクノスは中小企業ならではのフットワークの軽さだけでなく、チャレンジに寛容な社風・教育が大きな強みとなって、大企業と対等な“共創”を実現できたのではないでしょうか。明電舎は「ピラミッド型か、アジャイルか」の2択にとらわれず、ハイブリッドな在り方を探っていったところに強みが感じられます。


困難な共創を成功させ、成果を上げるための土台

規模も業種も異なる2社ですが、ディスカッションでは多くの共通点が見られました。
モノを作るだけでなく、顧客価値の提供を追求する「コト売り」への意識、共創にゴールはなく、常に変化に対応し終わりなきバージョンアップが必要になること、そして何より、両社が口を揃えたのが、共創のための「場」の重要性です 。
明電社の「デジタル・ラボ」やミカドテクノスが共創を具体化するためにお客様に貸し出している「レンタルラボ」のような物理的な空間は、「まず一緒にやってみる」という姿勢を体現し、信頼関係を築くための足場となります。


イノベーションは「人」が起こす

セミナー全体を通じて、規模感の違う企業の人々がお互いの立場に深い敬意を持っている様子や、それでいて考え方に共通する部分、同じ志を持つことは大変印象的でした。そして、共創の「指揮者(コンダクター)」のありようも、こうした姿勢に少なからず影響しているであろうことが窺えます。
ランスタッドでは、貴社のイノベーションをけん引する「指揮者(コンダクター)」となり得るプロフェッショナル人材のご紹介も承っています。ぜひご相談ください。