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リフレクションとは 人材育成に役立つフレームワークと実践例

作成者: randstad|Aug 21, 2024 12:00:00 AM

経験や行動を客観的に振り返り分析する人材育成方法「リフレクション」。具体的なフレームワーク・実践方法や、実践の際の注意点などをご紹介します。

 

リフレクションとは

人材育成におけるリフレクションとは、経験や行動を振り返り自ら再評価することで自己成長を促すメソッドのひとつです。そのプロセスを通じて弱みや強み、気づき、改善点を見出すことを目的とし、習得することで学びの質の向上が期待されます。

リフレクションの理論の基盤を固めたのはアメリカの哲学者であるジョン・デューイ(1859-1952年)とドナルド・アラン・ショーン(1930-1997年)です。デューイは経験からの学びを重視し、ショーンは実務における反省と改善の重要性を説きました。このため、アメリカではビジネスや看護などさまざまな分野でリフレクションが根付き、実践されています。

 

反省との違い 

リフレクションと反省は、経験や行動を振り返るという点は共通していますが、フォーカスする中身が異なります。

反省は同じことが起きないように改めるという色が強く、過ちや失敗といったうまくいかなかったことにフォーカスします。一方で、リフレクションは良い・悪い関係なく、客観的に振り返って学びにつなげるため、失敗体験も成功体験も振り返りの対象です。

 

フィードバックとの違い 

リフレクションとフィードバックでは、評価者・被評価者が異なります。フィードバックは、上司から部下へ、あるいは、人事から従業員へのように、他者から評価を受けて成果や目標、進捗を共有するものです。一方で、リフレクションは己を振り返るために主体的に行われます。

以下の記事では、効果的に行うために知っておきたいフィードバックの目的と効果、ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバックの使い分けをご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。

フィードバックとは 人材育成や業績アップにつなげる話し方のポイント【前編】

 

 

リフレクションを取り入れることにより期待できる効果 

①客観的に分析する力を習得できる

リフレクションは行動や結果を感情的にならずに振り返ることで、主体的に学ぶ姿勢が身につきます。たとえば失敗から学べば繰り返すリスクを避けやすくなり、成功から学べば自身の強みの発見などにつながるでしょう。

 

チームやプロジェクト全体の生産性が向上する

リフレクションを繰り返すことにより、主体的に学ぶスキルが身につき、従業員一人ひとりの生産性の向上が期待できます。個々が自分に必要なことや求められることを見つけられるようになり、指示待ちではない自律的な行動を促せます。

 

リーダーに必要な能力を育てる

継続的な自己の振り返りにより、メンタル面などの人間的な成長が期待できます。さらに、客観的であろうとする姿勢が身につくので、他人やチームに対する分析、対応力の向上といった、リーダーに不可欠な能力の強化にも有効です。

 

 

リフレクションの実践的な4つのフレームワーク

リフレクションを効果的なものとするために、さまざまなフレームワークがあります。ここでは代表的な4つのフレームワークと、その実践例を解説します。

 

【1】KPT [KeepProblemTry] 

KPTは、KeepProblemTry3つを用いて振り返るフレームワークです。「Tryは行動(Action)である」という意味からKPT(A)と表記されることもあります。

IT業界のアジャイル開発(※)などで活用されてきた歴史があり、現在は他分野でも広く利用されています。特にプロジェクトやチーム運営において、現状把握や次にするべきことをメンバー間で共有・認識するのに効果的です。

※アジャイル開発…アジャイルは「素早い」の意。小単位で「計画・設計・実装・テスト」を繰り返して開発を進めていく手法。従来よりも短期間の開発が可能となる。

KPTは「現状把握」と、「次のアクションを導き出すこと」に主眼を置きます。Keepではさらなる改善点がないか、Problemに対する解決策はあるのか、それぞれを深堀りし、最終的にTryに落とし込むサイクルを回していきます。

Keep:良かった点を保持・継続

Problem:問題や課題の発見

Try:改善する、試す

KPTの例1

[Keep] 作業状況を共有するアプリを導入し、クライアントからの急な変更依頼もスムーズに共有できるようになった。
[Problem] 人によって残業時間に大きな差がある。
[Try] 誰でも作業できるタスクを共有し、分担できる残作業を見える化する。

KPTの例2

[Keep] チームミーティングを通じてプロジェクトの進捗状況を確認できている。
[Problem] ミーティング時間が予定よりも長引くことが多い。
[Try] ミーティングの前にアジェンダを共有し、効率的な進行を図る。

 

【2】KDA [KeepDiscardAdd]  

KDAはKeepDiscardAdd3つを用いるフレームワークで、個人のリフレクションとしてはもちろん、プロジェクトやチームでも活用しやすく、わかりやすいステップで構成されています。日々の短い振り返りとしても習慣にしやすいでしょう。

Keep:良い結果・傾向が見られるため、継続していくこと

Discard:良くない結果・傾向が見られるため、止めること・捨てること

Add:新しく取り入れること・始めること

KDAの例1

[Keep] ボリュームのあるタスクを細かく分けてリストを作成するようにした。
[Discard] 小休止せずに没頭する(結果的に生産性が落ちている)
[Add] 30分に1回はデスクから立ち上がる。タイマーを使用する。

KDAの例2

[Keep] 顧客からの高評価を得た営業トークを引き続き活用する。
[Discard] スプレッドシートによる手作業でのデータ管理が効率を下げている。
[Try]  CRMシステムを導入して顧客データを一元管理し、効率的な営業活動を支援する。

 

【3】YWT [やったこと→わかったこと→次にやること]

YWTは「Y:やったこと」「W:わかったこと」「T:次にやること」で振り返ります。日本独自のフレームワークであり、「やったこと(Y)がどのような結果になったとしてもそれは財産であり、次に活かすことこそが大切」と捉えます。

したがって、YWTにおいては「反省」「チェック」「コントロール」を禁句とし、Yは業務や評価ではなく、事実としての行動を軸とすることを特徴としています。

Y:やったこと

W:わかったこと

T:次にやること

YMTの例1

[Y:やったこと] 社員研修にeラーニングを導入した。
[W:わかったこと] 多くの社員が研修に参加し、完了率も90パーセント以上であった。
[T:次にやること] インタラクティブなセッションを増やし、参加者同士の交流を促進する。

YMTの例2

[Y:やったこと] 新商品Aの販売告知にSNSを利用した。
[W:わかったこと] 商品情報を出すだけではSNSユーザーからの反応は期待できない。
[T:次にやること] 商品Aのターゲット層に向けて、具体的な利用方法を発信してみる。

 

【4】経験学習モデル [経験→省察→抽象化→実践] 

経験学習モデルでは、具体的な経験から得た教訓を抽象化することにより、他でも活用できる学びを獲得し、流用可能かどうか試してみる、というサイクルを回します。

4つのステップで成り立っており、ある場面で得た固有の学びを、汎用性の高い応用できるものに進歩させることを目的とします。

ステップ1. 具体的経験:仕事上の経験(失敗・成功どちらでも)の成果や行動内容を整理する

ステップ2. 内省的観察(省察):「客観的・主体的・俯瞰的」を意識してさまざまな角度から振り返り、新たな発見や気づきがないか探る

ステップ3. 抽象的概念化:発見や気づきを他のシーンでも活用できるように抽象化する

ステップ4. 能動的実験(実践):抽象的概念化に基づき、次のアクションを決める

経験学習モデルの例1

[具体的経験] a社・b社・c社の営業に成功した。

[内省的観察(省察)] アプローチの仕方、相手の反応など、プロセスから3社の共通項を見つける。

[抽象的概念化]「 営業成功のポイント3か条」を作ってみる。

[能動的実験(実践)] 導き出した3か条をベースに、新規営業先への働きかけを行う。

経験学習モデルの例2

[具体的経験] 新しいプロジェクト管理ツールを実際のプロジェクトで試用し、動作を体験した。

[内省的観察(省察)] ツールの使用感や利点・欠点について意見を共有した。

[抽象的概念化] 共有されたフィードバックをもとに、ツールの使用における課題や改善すべき点を理論化した。

[能動的実験(実践)] 入力の仕方やタイミングに個人差があったため、業務に則したルール策定を検討する。

 

 

リフレクションを実施する際の注意点 

リフレクションを行う際、効果的な学びの機会とするために、以下の点に留意しましょう。

 

  1. 成功も失敗もバランスよく振り返りましょう。
  2. ポジティブな事柄を振り返ることで、自己肯定感を高めます。
  3. ネガティブな事柄も次の行動を見据えて前向きに捉えます。
  4. 客観的な事実をもとに状況を把握します。
  5. 感情に左右されず、事実に基づいて行動しましょう。
  6. リフレクションは継続的に行いましょう。

 

 

リフレクションを人材育成に役立てよう

リフレクションはネガティブな事柄の振り返りである「反省」や、他者からの評価を受ける「フィードバック」とは異なるものです。従業員の自主性を育てるメソッドであるため、他の人材教育プログラムと組み合わせることでより良い相互作用も見込めます。

 漠然とした振り返りではなく、リフレクションの方法を体系的に習得することで、その本来の効果を発揮します。本記事で解説したフレームワークを参考に、人材育成にお役立てください。

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