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求職者からの注目も高い「年間休日」とは? 平均や最低ラインの算出、増やすことのメリット・デメリットを知る

作成者: randstad|Jul 3, 2024 12:00:00 AM

企業の1年分の休日数を指す「年間休日」。企業における休日の考え方や、年間休日を増減させることのメリット・デメリット、注意点などをご紹介します。

 

年間休日とは

「休日」とは労働者にとって「働く義務のない日」のことで、「年間休日」は企業の1年間分の休日の合計のことを指します。休日には「法定休日」と「法定外休日」の2種類があります。詳しく見ていきましょう。

 

法定休日とは

「法定休日」とは、労働基準法で定められた休日(労働基準法第35条)であり、すべての企業が厳守すべきものです。従業員に対し、週1日以上、もしくは4週間4日以上の休日を付与する必要があります。もしも法定休日に従業員が働いた場合は、35%以上の割増賃金を支給する必要があります。

 

法定外休日とは

「法定休日」ではない休日は「法定外休日」と呼び、就業規則等により企業独自で決められた休日のことです。「所定休日」とも呼ばれます。代休や振替休日も「法定外休日」に含まれます。

「法定外休日」に従業員が働いた場合、労働基準法による規定がないため、法律上は割増賃金が発生しません。ただし、法定労働時間(18時間、週40時間)を超えて働いた場合は25%以上の割増賃金を支給する必要があります。

 

 

「休日」と「休暇」の違い

前述の通り、労働者が働く義務がない「休日」に対し、「休暇」とは働く義務がある日に会社が「その義務を免除する日」のことです。「休暇」にも法で定めた「法定休暇」と、それ以外の「法定外休暇」があります。具体的な例を見ていきましょう。

 

休暇には法定休暇と法定外休暇がある

労働基準法や育児・介護休業法などで定められた休暇を「法定休暇」といいます。

年次有給休暇、産前産後の休業、育児休業、介護休業、看護休暇などが該当します。

「法定休暇」に含まれない休暇は、「法定外休暇」となります。

バースデー休暇、リフレッシュ休暇、病気休暇、ボランティア休暇など、企業独自の休暇が該当します。

関連記事「押さえておきたい法定休暇と、メリットが大きい会社独自の特別休暇制度

 

 

休暇中の賃金の支払い

年次有給休暇は、文字どおり有給の休暇ですので、取得しても賃金は減額されません。それ以外の休暇に対する賃金の有無(有給・無給・一部支給等)は、就業規則などの会社と労働者間の任意の定めによります。

関連記事「有給休暇の基本ルール 有給付与日数・タイミング・期限・管理方法をおさえよう

 

 

年間休日の最低日数の計算方法

ここからは、年間休日の最低日数の計算方法を解説します。

まず、労働時間は労働基準法第32条により、「1日の労働時間は8時間以内、週の労働時間は40時間以内」と定められており、これを「法定労働時間」といいます。

例えば18時間働くとすると、5日間で40時間労働に到達します。したがって、週の残りの2日は休日に設定する必要があるというわけです。

 

最低年間休日の計算式

最低年間休日は、以下の計算式で算出できます。ただし、算出した年間休日の日数は最低ライン、つまり、労働基準法ギリギリであることは念頭に置いておくべきでしょう。

【最低年間休日 計算式】
(週の労働時間×52週間※)÷1日の労働時間=1年間の労働日数
365日-1年間の労働日数=最低年間休日数
※52週間…1年間の週数
 
【計算例】
18時間(週40時間)勤務の場合
40時間×52週間)÷8時間=260
365日-260日=105
→年間休日の最低日数は105

 

 

年間休日の平均日数は?

最低年間休日は計算式で算出できますが、実際に休日が付与される平均日数はどのくらいなのでしょうか。

厚生労働省が発表した「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、1企業あたりの年間休日数の平均は110.7日でした。企業規模が大きいほど、年間休日数が多い傾向にあります。

 

年間休日の平均日数(令和5年)

企業規模
1企業あたりの平均年間休日数 
1,000人以上
116.3
300~999
115.7
100~299
111.6
30~99
109.8

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概要」を加工して作成

 

 

年間休日数の推移

以下は、直近10年間の1企業あたりの年間休日日数を、会社規模ごとにグラフ化したものです。2021年まではゆるやかな右肩上がり、2022年でいったん減少したものの、2023年に再び増加していることが見てとれます。企業規模に関わらず、年間休日は増加傾向にあるようです。

 

平均年間休日総数の経年変化(規模別)

厚生労働省「就労条件総合調査」平成26年版~令和5年版の「年間休日総数」より1企業平均年間休日総数を元に作成

 

 

法定労働時間を超えて労働させる場合の取り決め「36協定」とは

先述した「1日の労働時間は8時間以内、週の労働時間は40時間以内」の「法定労働時間」を超えて時間外労働をさせる場合には、36(サブロク)協定の締結、および、所轄労働基準監督署長への届け出が必要です。36協定は、労働基準法第36条に基づく労使協定を指します。

36協定を結ぶと、原則として「月45時間、原則年360時間までの時間外労働」が認められます。また、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1ヵ月、1年あたりの時間外労働の上限」を決める必要もあります。

ただし、従業員にとって休日は、心身を休めて健康でいるために、また仕事へのモチベーションや企業への信頼においても大切な要素です。36協定は臨時的だったり突発的であったり、やむをえない事情の場合にのみ活用できるものと捉えておきましょう。

 

 

罰則付きの上限(時間外労働の上限規制・時間外労働の上限の例外)

36協定には、時間外労働の上限(限度時間)が設けられており、限度を超えると罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性があります。

限度時間は月45時間・年360時間となっており、月45時間を超えることができるのは、年間6ヵ月までです。

ただし、繁忙期や緊急時対応など、臨時的な特別の事情がある場合に限り、労使間で「特別条項付き36協定」を締結することにより、例外として以下の上限まで時間外労働が可能となります。

特別条項付き36協定で認められる、例外的時間外労働の上限

  • 720時間以内
  • 複数月(26ヵ月)の時間外労働(休日労働含む)平均が80時間以内
  • 単月(1ヵ月)の時間外労働(休日労働含む)平均が100時間未満

 

 

年間休日を増やすことのメリット・デメリット

年間休日を増やすと、従業員がしっかりとリフレッシュし、プライベートを充実させることにつながります。従業員のストレス軽減、体力の回復、生産性の向上といったメリットや、さらには仕事へのモチベーションアップやエンゲージメント向上が期待できます。

また、年間休日日数の多さは従業員にとって重要な要素のひとつなので、求人への応募者(求職者)が集まりやすくなる可能性があります。

デメリットとしては、休日が増えると従業員1人あたりの稼働時間が短くなるため、生産量や売上が低下する可能性があります。残してしまったタスクを挽回するために従業員が仕事を持ち帰るのでは、本末転倒と言わざるを得ません。

休めないほど従業員一人ひとりの負荷が高いのであれば、稼働時間の短縮をサポートするIT技術や外注の利活用、従業員の増員など、経営戦略の検討を推進する必要があります。

 

 

年間休日を減らす場合のメリット・デメリット

年間休日を減らすということはそれだけ就業時間が長くなるため、資格取得や社員教育などの育成に時間をかけやすくなるのがメリットです。高い意識を持つ従業員のモチベーションアップやスキルアップも見込めるでしょう。

デメリットとしては、年間休日数が多い同業他社に転職される可能性、求職者が集まりにくい、従業員がリフレッシュできず生産性が低下する、長時間労働による心身の不調のリスクなどが考えられます。

 

 

年間休日は業務の効率化や福利厚生などと合わせて検討する

年間休日日数は、業務効率や生産性、従業員のモチベーションやエンゲージメントに関わる重要な項目です。

ただし、やみくもに休日を増やせばいいというわけではなく、業務の効率化など生産性を上げるための施策もあわせて検討する必要があります。反対にすでにある休日を減らす場合には、従業員への健康配慮や、休日以外の福利厚生面での施策が求められます。

「働く場としての魅力・価値」のことを「エンプロイヤーブランド」といいます。年間休日日数は重要な構成要素のひとつですが、従業員・求職者が求めるものはそれだけではありません。エンプロイヤーブランドの構築において、「雇用する側が提供するもの」と「雇用される側が求めるもの」のギャップを理解することは非常に重要です。

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