「初任給引き上げ」のニュースが話題となっています。自社も初任給を引き上げるべきか、引き上げを検討する場合の注意点などをご紹介します。
2024年4月初旬、入社式のニュースで目立ったトピックといえば、コロナ禍を経ての「○年ぶりの入社式」や、例年話題にのぼる「入社式でのユニークな取り組み」に加えて、「初任給の引き上げ」があったのではないでしょうか。中には、入社式の社長あいさつで初任給アップをサプライズ発表した企業もあり、大きな話題になりました。
人手不足が叫ばれる中、大手企業を中心に初任給の引き上げが盛んなのは、やはり「新卒人材の獲得」のためと言っていいでしょう。逆に、初任給が見劣りする企業には「優秀な新卒人材を獲得できないリスク」が付きまとうとも言えそうです。
ここは自社も、世間並みに初任給を引き上げるべきなのでしょうか?まずは初任給引き上げを検討するにあたって注意したいポイントを見ていきましょう。
まず他業種も含めた全国平均だけではなく、業界や競合他社の初任給相場を把握できているでしょうか。初任給が業界や競合他社と比較して高めであることは、優秀な新卒人材を獲得するために有利になるのは言うまでもありません。また初任給を含めた賃金が平均以上であることは、既存社員のモチベーションにも大きく影響します。せめて、競合他社に対して見劣りしない程度は目指したいところです。
相場をつかむには、下記のリンク先なども参考にしてみてください。
「採用のために初任給や、若手の給与のみを引き上げる」といったやり方は、給与を据え置かれて割を食う既存社員のエンゲージメント低下につながります。初任給の引き上げと併せて、組織全体でのベースアップ検討や、賃金制度改定を図らねばなりません。また中途採用者の給与水準も、不公平感が生まれないように注意したいところです。
「高めの初任給」を出すために給与制度などを調整しているケースも見られます。しかし「見せかけだけ」と取られかねない過度な調整は、判明すればイメージダウンにつながったり、早期離職につながったりとリスクも大きくなるでしょう。この「見せかけだけ」には、どんな例があるのか見ていきます。
とあるアパレル企業では、大卒で20万円台が平均とされる中で、破格の「初任給40万円」を打ち出しました。しかし、40万円のうち17万2000円は過労死ラインと言われる「80時間」分の固定残業代となっており、その是非について議論が巻き起こりました。
初任給は月給で示されることから、月給と賞与の割合を変えて初任給を引き上げたケースも見られました。初任給は上がる一方、賞与の額が抑えられ、結果として年収自体は変わらないというものです。月々の支給額が多めになることで納得してもらえるよう、しっかりとした説明が必要です。
初任給が高めに設定されている一方で、昇給ペースが低めの給与制度だと、勤続年数が長いほど割を食うことになります。給与だけを見れば、早々に転職されても仕方がない状況です。
採用サイトの検索ページで、一見優位な表示になるよう設定するケースも見られました。院卒など採用予定のない学歴対象者について高い初任給を設定し、一般の大卒学生が気づかず応募するのを狙うといったものです。これが判明すれば、応募者の心証が悪くなるのは避けられないでしょう。
初任給の引き上げは「自社も他社に追随すべきだろうか、しかし先立つものがない……」と悩ましいものですが、応募者が企業に求めるのは初任給だけではありません。
この会社は働きやすいか、福利厚生は充実しているか、どのようなスキル・経験が積めるか、将来のキャリアパスが描けるか、昇進の機会は設けられるのか……といった、給与以外の要素も慎重に検討されています。
採用マーケティングへの注力やキャリアパスの見える化、人事のしくみを整備することで「働きやすそう」「将来性があるので、いずれ給与は上がるだろう」という判断につなげることも重要です。
大手企業のように目につく初任給引き上げは、中小企業の経営状況では難しいこともあるでしょう。だからといって安易に「見せかけの初任給引き上げ」に走ることは、早期離職や企業イメージダウンはもとより、既存社員のエンゲージメント低下にもつながりかねません。初任給引き上げをマストとするより、まずは「さまざまな採用施策を打っていく中の1つ」として考え、無理や背伸びをせずに検討したいところです。
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