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エンプロイヤーブランディング推進という人的資本経営|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|Aug 23, 2023 3:00:00 PM

地政学的リスクやインフレなど、さまざまな問題を抱えるアフターコロナの世界。世界の労働者は何を感じ、どのように行動しているのでしょう。また、企業は労働者から何を求められているのでしょうか。「エンプロイヤーブランド リサーチ2023」のレポート結果から、グローバルの労働市場の傾向と日本の特徴をレポートします。

 

《エンプロイヤーブランド リサーチ2023》

ランスタッドが20年以上にわたり続けている独自調査「エンプロイヤーブランド リサーチ」。今回の調査は32の国と地域において、およそ16万3,000人の回答者と16業界6,022社の企業を対象に、2023年1月にオンラインにて実施されました。 回答者は男女比を考慮した18〜64歳(一部地域では18〜67歳)の中から25〜44歳を中心に構成。職業は学生・就労者・求職者・無職とさまざまです。

 

世界の就労者が雇用主に求めるもの

従業員が雇用主を選ぶ理由トップ5

エンプロイヤーブランド リサーチ2023のグローバルレポートによると、従業員が雇用主を選ぶ理由のトップ5にランクインしたのは下記の項目です。

1位、給与水準・福利厚生
2位、ワークライフバランス
3位、雇用の安定
4位、快適な職場環境
5位、財務体質の健全性

給与水準・福利厚生は世界的にもっとも重要な要素であり続けていますが、近年は年を追うごとにワークライフバランスの重要度が高まっています。それは全世界に共通する傾向であり、給与水準・福利厚生との差を縮め、ほぼ同水準にまで迫りつつあります。

転職理由としてもっとも多く挙げられているのもまた、「ワークライフバランスを改善するため」という項目でした。より良いワークライフバランスを求める思いは、転職の動向にも影響しているようです。

 

業界としての魅力度トップはICT

グローバルでの業界の魅力度トップは情報通信(ICT)の62%で、自動車・土木が共に60%、生活消費財・ライフサイエンスが共に59%と続きます。自動車業界はAPAC・欧州・中南米では最上位を占めていますが、北米では第10位。反対にライフサイエンスは北米と欧州で第2位にランクインしているものの、APACでは第6位・中南米では第11位という結果です。

小売とサービス業界は、「その業界で働くために必要なスキルを自らが備えている」と考える就労者の割合が44%と、最も高い業界でした。これは敷居が低く入りやすい業界であると感じられていることの表れでしょう。 一方で化学品業界と建設業界は共に世界的に最低スコアの29%。APACではさらに低く共に26%でした。

また、生産や販売、運輸、サービス等の業務に直接従事している現業職系の就労者は、事務職系就労者よりも「魅力的である」と見なす業界が少ない傾向が見て取れます。これは「業界で必要とされるスキルを身に付けていない」という自覚があり、その業界の魅力度が劣るように思えることに原因があると考えられます。

 

世界では17%が失業への不安を抱いている

2023年1月時点の調査で、世界の就労者の15%が2022年下半期に転職しており、24%が2023年上半期に転職を計画していました。そして年内に失業する不安を抱いている従業員は17%に上ります。

転職の検討、あるいは実際に転職した最大の要因となっている「より適切なワークライフバランスの追求」は、世界の転職者の39%が転職理由として挙げています。これは、現在の職場でその希望が叶わないと思えば、従業員はより良い環境を求めて転職を選択するということです。ただしレポートからは、頻度に関わらずリモートワークを取り入れている従業員は、一切リモートワークをしていない従業員に比べ「雇用主がワークライフバランスをより積極的に支援している」と感じる傾向が強いことが見て取れます。

従業員のエンゲージメントを高め離職を防ぐためには、リモートワークの活用によりワークライフバランスに対する満足度を高めることが効果的に作用するでしょう。

「キャリアアップ」も重要な転職理由として第3位に挙げられています。就労者の実に73%が「キャリアの進展は重要である」と回答しており、この傾向は特にAPACと中南米の両地域で目立って多くなっています。

 

 

日本の従業員が転職する理由・留まる理由

世界に比べ転職が少ない日本の労働者

日本の国内レポートの結果を見ると、2022年後半に転職した人は6%、2023年上半期に転職を検討している人 は13%という結果でした。これは調査が実施されたすべての国と地域の中で最も低い水準です。

一方で、日本人のエンゲージメントもまた世界的に最低水準で、現在の勤務先で働き続けたいと考えている人も他の国と比べて少ないという調査結果があります(※1)。つまり日本では、勤務先への不満を抱えながら転職せずに働き続けている人が数多くいると考えられます。 2023年の今回の調査では、日本でも「解雇への不安」を感じている人の数が増加していました。これは今後転職活動をスタートさせる人が増える兆候とも言え、従業員の離職を防ぐための施策を検討する必要がありそうです。

転職理由として日本で多く挙がった「インフレ補償の欠如」は、特に低・中学歴グループで割合が高く35%。日本では2番目に多い理由が「ワークライフバランスの改善」で、やはり日本でも重要度が高い項目となっています。

※1 出典:経済産業省 未来人材会議「未来人材ビジョン」(令和4年5月)p33〜34

 

 

個人のキャリアアップの重要性

日本では働き手の44%が個人のキャリアアップを重要視しています。この傾向は女性39% に比べて男性の方が48%と強く、18〜24歳の年齢層は58%と他の年齢層に比べてその志向を強く持っていることがわかります。

また、個人のキャリアアップを重視している人の5人 に1人が「成長の機会を与えられていない」と感じていることもわかりました。そして働き手の4人に1人が「仕事におもしろみを感じなければ転職する」と回答しています。

さらに日本では、アップスキリング/リスキリングの機会を重要視している働き手が75%に上ることも判明。それに対し、「雇用主が能力開発に役立つ機会を提供している」と感じている人は51%にとどまり、かなりのギャップが存在していることがわかります。APACでは69%が「その機会を与えられている」と回答しているのに対しても低い割合です。

 

 

人的資本経営でも重視されるスキルアップの機会

アップスキリング/リスキリングの機会を重要視する人が多数を占める一方で、多くの日本人は自ら学ばないことを示すデータもあります(※2)。終身雇用やジョブローテーション制度が当たり前だったこれまでの日本。その中で自律的にキャリアを考える機会を持たなかった人材のためには、アップスキル/リスキルの取り組みと、それに応じたリターンを会社が用意する必要があるでしょう。

人的資本経営においても、動的な人材ポートフォリオやリスキルへの取り組みが重視されています(※3)。そして当然ながら人的資本の情報開示においても、従業員への人材開発・研修の費用や受講率などの数値が求められています。エンプロイヤーブランディング活動の一環として従業員のキャリアアップを支援することは、人材戦略や企業の人的資本の向上と密接に関係しているのです。

従業員が求めるリスキルとキャリアップの機会の提供は、エンゲージメントを高めると共にエンプロイヤーブランドも向上させる効果が期待できます。しかしそれだけではなく、急速な社会変化への対応と新たな成長分野への事業転換を進める推進力となり、企業価値の向上にも寄与することでしょう。エンプロイヤーブランドの観点だけでなく、人材難の時代の人材戦略としても、先の読めない時代の経営戦略としても、従業員へのスキルアップやリスキルの機会の提供は重要と言えます。

※2 出典: 経済産業省 未来人材会議「未来人材ビジョン」(令和4年5月)p40 
※3 出典:経済産業省「人的資本経営に関する調査集計結果」(令和4年5月) 

 

組織を活性化させるエンプロイヤーブランディング

人材戦略とエンプロイヤーブランディングの密接な関係は下記のように整理できます。エンプロイヤーブランディングへの取り組みは組織を活性化させ、人的資本経営を推し進めることにもつながっていくことでしょう。

1、人的資本の最適活用

人材が持つ力を発揮できる環境を整え、その能力を引き出し最適に活用することは、人的資本の質を向上させることになります。さらに企業がエンプロイヤーブランディング活動を通して魅力的な雇用主であると示せば、今いる人材の離職を防ぐと共に採用力を高め優秀な人材を引き寄せることにつながります。

2、エンゲージメントとモチベーション向上

エンプロイヤーブランドが高い企業では、従業員は自分の会社に所属していることに誇りを持っています。その気持ちは企業へのエンゲージメントだけではなく、より高いモチベーションにつながり、企業は人材の能力・スキル・モチベーションを最大限に生かすことで事業の目標達成に向けて突き進むことができます。

3、企業文化と働きやすさの醸成

エンプロイヤーブランドランキングで上位にランクインする企業は、従業員のためにより快適な環境を整え、幸福感や満足度を高めるために努力していると言えます。その企業文化と働きやすい環境は従業員一人ひとりの成長を促進させて人材価値を高め、引いては企業価値の向上にもつながっていきます。

 

 

エンプロイヤーブランディングにレポートの活用を

エンプロイヤーブランドランキングの上位にランクインしているのは、どのような企業なのでしょうか。トップ5企業に共通しているのは、「社会的評価が高いこと」という項目。それが企業の魅力の背景にあるとも言えるでしょう。しかしトップ企業を目指そうと思っても、社会的評価は一朝一夕で高められるものではありません。

高い社会的評価を確立していくためには、長期にわたり活動し努力を続ける必要があります。一方で、目の前にいる人材に投資することも大切です。従業員のワークライフバランスやリスキルに対するニーズを満たし、地道に成果を積み上げていくことは、トップレベルのエンプロイヤーブランドの構築につながるでしょう。

企業の組織力向上や採用活動に貢献するだけでなく、働く人が真の力を発揮できる労働市場の創造にも貢献するエンプロイヤーブランディング。ぜひ最新のレポートをダウンロードし、日々の活動にご活用ください。