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これからのキャリアに欠かせないのは、「学び(ラーニング)」である(前編)|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|May 26, 2022 3:00:00 PM

学ぶことをしないと生き残りさえも難しくなる?

先に結論を言いますと、学ぶことをしないと良いキャリアを積むどころか、生き残ることさえも難しくなります。
「社会人になってまで勉強するのは面倒だ」、「何を勉強したらいいの?」、「目の前の仕事を真面目にこなしていればなんとかなるさ」と思われている人が多数派かもしれないですよね。

ですが、これだけ変化の激しい時代に、学生時代に学んだ知識と、社会人になって実務で得たスキルと経験だけで、キャリアの最後まで走り抜けるのか、継続的に学ぶことなしで大丈夫なのかというと、まず無理です。
今回は、より良いキャリア構築に欠かせない、これからの「学び」について考えていきます。

テーマが大きいので、前編と後編の2回シリーズでお届けします。
では前編として、社会人の学びの実態と、なぜ今、学びの必要性が叫ばれているのかを見ていきましょう。

 

【社会人は学びが嫌い?】

そもそも、社会人である私たちは学ぶことが嫌いなのかどうかの実態を見ていきます。

総務省「平成28年(2016年)社会生活基本調査」によると、社会人の1日あたりの平均勉強時間は、なんとおよそ6分です。まったく勉強をしない社会人95%以上を除くと、平均勉強時間は約160分です。
1日平均で6分というのは衝撃的ですが、95%以上が勉強時間ゼロということも驚きですよね。

何事においても事実を客観的に知ることが大事です。何を勉強と定義するのかが不明確な点があることを割り引いても、いったん社会人になるとほとんど自主的な勉強をしていないという事実を受け止めなければなりません。
勉強の基本を読書だと考えて、文化庁の調査から、私たちの月当たりの読書量を示すのが下の図です。

 

(文化庁「平成30年度「国語に関する世論調査」の結果の概要 から引用)  調査対象:全国16歳以上の男女

 

10年というスパンで推移を見ても、1か月にまったく本を読まない人が半数近くいることと、読書量が減ってきていることが、この調査結果からわかります。

ネットニュースは頻繁に読む(見る)けど、本は読まないという人が多数派になっているのだとすると、勉強時間も読書量も、ほぼ日本の社会人のリアルな平均像が示されていると言えそうです。

では、社会人はほとんど学ぶことをしていないのかと言うと、そんなことはありません。働くという行為の中には、少なからず学びという活動が含まれているからです。

有名なところでは、トヨタのカイゼン活動、ホンダのワイガヤがあります。そこまで大袈裟なものでなくても、直面する課題や問題の解決策を考えるなど、職場の中で仕事を通じて私たちは学習しています。

これも学びと考えていいんですよと言われたら、「学び」は、そこまで嫌なものでも、辛いものでもないでしょう。

よくよく考えてみると、ほとんどの社会人、いや人間が嫌いなのは「勉強」です。興味がなければ理解もできない授業を強制的に受けさせられてきたことがトラウマになってしまって、勉強=苦痛という構図が出来上がってしまっているのです。

企業では「研修」という言葉を使い、人事部や人材開発部という部門が受講の機会を作っていますが、喜んで受けたいと思っている人も、社員が進んで受けたいと思うような研修も多くないことは、人事の責任者をしていた立場から痛いほど感じていました。

結局、学生時代の勉強というワードが、社会人向けに研修という用語に変わっただけで、本質は同じで「やらされている」からです。

であるなら、逆も真なりで、好きなことを追求するために、知識を得たり、スキルを獲得したりすることは嫌いではなく、むしろ進んでやるとも考えられます。

言葉遊びではなく、嫌いで苦手なことを強制される「勉強」から、好きなことをもっと知りたい、うまくなりたいという好奇心によって突き動かされる「学び」へと考え方をシフトすることができれば、違う景色が見えてきます。

もうひとつ重要なことがあります。仕事の中に学びがあることをしっかりと認識することです。

座学よりも仕事を通じてのほうが、学びを苦痛と感じないことが多いことと、なにより、仕事をすることで学ぶ時間のほうが圧倒的に長いうえに、学びの質に大きな影響を与えるのは、仕事を通じた学びだからです。

学びは、私たちが固定観念を持っている勉強よりも、領域を広く取っていいし、広く取るべきなんです。

 

【なぜ今、学びが求められているのか】

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)- 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン教授 他)が発刊された2016年前後から、「学習(ラーニング)」という言葉をよく目にするようになりました。

ぱっと思いつくものだけでも、オンライン学習(eラーニング)、生涯学習というビジネスパーソンならほぼ知っている用語から、やや専門的になると、体験学習、経験学習、学び直し、アンラーニング、越境学習、アクティブ・ラーニングなど、枚挙にいとまがありません。

なぜ今、学びが求められているのかというと、働ける(働かなければならない)年齢が引き上げられてきていることと、それに輪を掛けて、使える知識やスキルの陳腐化が速くなっていることが理由として挙げられます。

それだけではなく、企業が終身雇用を保証できなくなってきていることも大きな要因です。

長く勤めている会社で「働かないおじさん」にならないためにも、転職先などの次の環境にうまく適応するためにも、学びは不可欠です。

若い人はというと、現実的な仕事に対する価値観を既に持っています。

ミドル・シニア世代を反面教師としているところを切り取るなら、滅私奉公的な考えではなく、いい意味で自分のやりがいを重視していますし、保守的な考えを持ちつつも、終身雇用を信じていないので、成長意欲が高いです。

世代に関わらず、若い時には成長したいという気持ちを多くの人が持っているものですが、彼らのそれは出世のためというより、学んで成長しないと生き残れないという切実な理由から来ています。

ここで前編は終わりです。

社会人の学びの実態と、なぜ学びが必要なのか、わかっていただけたでしょうか?

後編は、学ぶことが困難で、かつ学ぶことの切迫度が高い、ミドル・シニアに焦点を当てて、学びの姿勢と学び方について、話をします。

 

 

本記事の後編はこちら

これからのキャリアに欠かせないのは、「学び(ラーニング)」である(後編)
https://services.randstad.co.jp/blog/hrhub20220624
 

 

 

[著者プロフィール]

牧田 潤 (まきた じゅん)

ランスタッド株式会社 ライズスマートジャパン事業本部 キャリアコーチ/ライフコーチ

 
大学で経営学(専攻:経営戦略・組織論)を学び、卒業後は日系大手電機メーカーに入社し人事プロフェッショナルとしてのキャリアを歩み始める。その後、さまざまな業界の日系・外資大手企業、スタートアップ、外資系中小企業で人事リーダーとしての実務を経験し、現在はランスタッド株式会社 ライズスマートジャパン事業本部のキャリアコーチ/ライフコーチとして、人生100年時代のビジネスパーソンの生き方、働き方を支援している。

コーチング、カウンセリングの資格を活かしたコミュニケーションと、経営陣と社員の双方の視点を持ちつつ、状況を俯瞰して人と組織に関する施策を立案・実行する戦略的思考を強みとしている。