事業を運営する上で人材の確保とそれにかかるコストは重要な要素です。
人材派遣サービスを利用している場合、派遣料金の最初の設定と契約更新時の料金改定に頭を悩ませられる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
ここでは、派遣料金の料金改定について、理由や背景などを踏まえて解説します。
派遣元である派遣会社から派遣料金改定の提案がされた時、派遣先人事担当者の方からいただくお声には以下のようなものがあります。
では、なぜ派遣会社は料金改定の依頼をするのでしょうか。理由は大きく分けて3つ考えることができます。
有効求人倍率はゆるやかではあるものの上昇し続けており、派遣会社は新規の登録者の採用、既存の派遣社員の雇用継続のためのコストが上昇します。
具体的には求人数が増えれば、求職者はより給与の高い求人に応募したり、転職を考える傾向にあり、有期雇用が多い派遣社員においてはその傾向が顕著です。民間の求人広告掲載においても求人数は2021年5月の急落以降、増加傾向にあり今後も続くことが予想されます。
同じ求人であっても全体の求人数が増えれば就業場所の立地(アクセス)、業務内容毎に求められる人材がマーケットにどれくらいいるかの希少性、その地域での派遣元および派遣先の知名度や評判(SNSやネット検索による情報の豊富さ、エンプロイヤーブランド(※1))など、求職者からよりシビアな目で見られることとなり、優秀な人材の確保と定着のために派遣社員の時給を適切な水準に設定するための見直しが必要となります。
2020年4月1日に改正労働者派遣法が施行されましたが、「同一労働同一賃金」の内容が中心となっており、派遣社員の待遇の見直しと改善がより一層求められています。
「労使協定方式」(※3)の場合、派遣社員の基準一般賃金は厚生労働省の局長通達で示される「職業業務安定統計」(※4)もしくは「賃金構造基本統計」(※5)をもとに決定します。これらは毎年更新されるため、現在設定されている賃金が基準一般賃金を下回る場合、昇給の必要があります。
また、派遣元の法的要件として、派遣社員に対する公正な評価を実施することが求められていますが、この評価にあたっては派遣先の評価を参考にして行うこととされており(※6)、評価結果により派遣元は派遣社員の昇給を行うことがあります。
法改正や労働市場変化に伴うシステム改修、システム導入、DX化、派遣社員向けの研修強化などの維持拡充のため料金改定を依頼することがあります。
では、派遣料金の改定をした時に派遣先が得られるメリットにはどんなものが挙げられるでしょうか。
一般的に派遣先の同一ポジションにおいて頻繁に派遣社員が変更されると、〔業務習熟までの時間がかかる〕〔派遣社員同士で業務引継ぎを行った場合、契約が重複する期間、派遣料金も重複する〕〔業務レクチャーに派遣先社員のリソース割かれる〕などのことから、同じ派遣社員が継続して就業する方が直接的、間接的にコストが抑えられると考えられます。
個別の契約毎の派遣料金だけではなく、保有する全ての派遣契約および中長期的な目線からも派遣料金を検討することが重要です。
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[著者プロフィール]
現在はインサイドセールスとしてランスタッドの全サービスをワンストップでご提案することを担当。国家資格キャリアコンサルタント。