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リスキリングとは?今リスキリングが必要とされる理由とリカレント教育との違い|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|Sep 23, 2021 3:00:00 PM

注目が高まっている「リスキリング」。

その理由は、単なる社会人の学び直しではなく、人材の再配置・再活用、IT人材不足解消やDX人材の育成などにつながる施策だからです。世の中の流れが加速度を増し、価値観や生活様式・働き方が多様化する中、企業が生き残っていくためには従業員のリスキリングが欠かせないと考えられています。過去の知識や技術があっという間に陳腐化してしまう現代。今リスキリングが必要とされる背景と、近ごろ頻繁に耳にする「リカレント教育」との違いも解説していきます。

 

 

リスキリングとは

リスキリング(Reskilling)とは文字通り、職業能力における再教育や再開発を意味しています。なぜこの言葉が近年にわかに注目を集めるようになったのでしょう。それは、「第4次産業革命」とも呼ばれる世の中の革新的な変化が背景にあります。

これまでの産業構造が根本的に変化し、かつての主力産業の衰退や業務のロボット化・デジタル化が一気に進みました。それに伴い、企業は大量の余剰人員を抱えることに。しかも多くの企業は、斜陽に差し掛かっているこれまでの事業の延長線上ではない、新たな事業を開拓できるイノベーション人材を求めています。
その一方で、急速に進んだDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応できるIT人材不足は深刻な状況に陥っています。

例えば、これまでテレビを主力商品として開発・製造していたメーカーが、テレビの生産をストップさせ、代わりにロボット技術の開発に事業移管する、といったイメージです。
こういった場面で直面するのが、もう必要のなくなったスキルしか持たない従業員の処遇と、新事業で必要とされる新たなスキルを持つ人材の不足。その時、余剰となった人材を再教育(リスキリング)して再配置し、新たな雇用機会の創出につなげるというのがリスキリングの考え方です。

 

リスキリングと「リカレント教育」「生涯学習」の違い

リスキリングは「リカレント教育」と同一視され、単なる社会人の学び直しと誤解されることもあります。しかしそれは似て非なるもの。リカレント教育と混同されやすい「生涯学習」との違いも併せてご紹介します。

 

リカレント教育とは

リカレント(Recurrent)とは、「循環する」「繰り返す」という意味。学校教育から離れて社会人になった後に再び教育機関で学び直し、就労と教育のサイクルを繰り返すことです。
かつての日本人は、学校を卒業して就職し、定年まで働いてリタイアするという“一方通行”がほとんど。 それが高齢化や定年年齢の引き上げ、ライフスタイル・働き方の多様化などにより、就職した後も新たな知識・スキルを身に付けるために学び直したり留学したりするという、“循環する”生き方を選ぶ人が増えてきたのです。リカレント教育は、ライフサイクルに合わせた柔軟な生き方・働き方を選ぶための方法として注目されています。
 

リスキリングとリカレント教育の大きな違い

リスキリングは、新規事業などで「これから必要となる知識」や「今は社内に保有している人がいないスキル」を身に付けてもらうため、会社が従業員に対して施す再教育です。
それに対しリカレント教育は、今の自分の仕事で必要となる専門知識を身につけたり、求められるスキルを磨いたりするために、従業員自らが大学などの教育機関で学び直すこと。能力向上や福利厚生の一環としてリカレント教育を推奨・支援している企業もありますが、主体は従業員本人です。
 

生涯学習とは

リカレント教育と生涯学習とでは、学ぶ目的がまったく異なります。仕事に生かすための知識やスキルを学び直すリカレント教育に対し、生涯にわたり行うあらゆる学習すべてを包含するのが生涯学習。 その範囲は、教育機関での学びだけに限りません。
この世に生を受けてからすぐ家庭で得た学び、スポーツ活動や文化活動で得た学び、ボランティア活動や趣味なども生涯学習の対象になります。人が豊かな人生を送るために得られる学びすべてが生涯学習なのです。



 

今リスキリングが重要視される理由

事業移管や新たな事業開発など、痛みを伴う変化を迫られているのは、決して製造業の現場だけではないでしょう。あらゆるビシネスのDXが進み変化していく現状で、「自社は関係ない」「自分のポジションは影響ない」と言い切れる人はいないはずです。今リスキリングが重要視されている理由は、大きく2つあります。

 

業務移管とリスキリング

企業の戦略は、時代の変化に合わせて変わっていきます。かつて花形だった部署が衰退し、消滅するのは決して珍しいことではありません。前述した通り、その際に余剰人員となった従業員の雇用を守り、活用するための手段となるというのがひとつ目の理由です。
リスキリングに取り組んだ従業員は、一度は余剰人員とみなされても解雇されることなく仕事を継続でき、企業は採用活動をすることなく人材不足を補うことができるのです。
 
技術の進歩は早く、あらゆるスキルはすぐに時代遅れになります。当事者にとって、自らのスキルが古くなっているという事実を受け入れるのは難しいことかもしれません。
しかしリスキリングを成長の過程として捉えられなければ、従業員は職を失い、企業は衰退していくでしょう。どの業界の企業も時代の変化に伴うリスキリングに着手する必要に迫らせており、それが将来の安定へとつながるのです。

 

DX(デジタルトランスフォーメーション)とリスキリング 

リスキリングが重視されているもうひとつの理由として、DX への対応があります。DXとは単なるデジタル化・効率化ではなく、企業の製品やサービス、ビジネスモデル、そして組織そのものを変革させること。事業構造の変化に伴い、これまでと全く違うスキルがすべてのプロセスにおいて求められることになります。
DXは一部のIT技術者だけが対応すれば良いというものではありません。今いるすべての従業員たちが、会社の変化を理解し、新たな知識やスキルを身に付け、新しい仕組みに順応して業務を行い、利益を上げていく。企業がDXに本気で取り組もうとする時、すべての従業員のリスキリングが求められるのです。自社の従業員が現在保有しているスキルは何か、これから必要となるスキルは何か。それを可視化させ、ギャップを埋めるリスキリングプログラムを用意する必要があるのです。

 



リスキリングを行うメリット

実際にリスキリングを行っていくことは、企業にとって3つの大きなメリットがあると考えられています。

 

採用コストの削減

高度な知識やスキル、業界の知見を持つ人材を新たに大量採用しようとすると、莫大な予算を要します。しかも社外から即戦力を採用しようにも、優秀な人材は奪い合いになっているのが実情。その方法はまったく現実的ではないと言えるでしょう。
そこで社内人材をリスキリングにより活用すれば募集・採用コストを抑制することができ、余剰人員の解雇を回避することもできます。

 

組織文化の継承

新たな人材を外部から招き入れて従業員が入れ替わると、それまで蓄積されてきたノウハウや伝承されてきたスピリット、部署内での暗黙知などが断絶してしまいます。組織をゼロから作り直す覚悟が求められ、社内の文化や風土は一変してしまうでしょう。
これまで社内で活躍してきてくれていた人材をリスキリングすることは、過去から今までにわたり従業員が作り上げてきた文化を壊すことなく継承するということ。新規事業やDXといった変化を、自社の文化を生かしたかたちで実現できるのです。

 

業務の効率化

DXを推し進めることで業務フローの改善や効率化につながれば、既存業務の生産性が向上します。さらに、これまで人の手で行ってきた作業が機械化されることで職を失う可能性がある従業員をリスキリングすることも、業務の効率化に貢献するでしょう。
例えば長く現場で作業を担っていた従業員を、機械化した業務の管理者としてリスキリングします。新しく運営管理やシステム管理のスキルを身に付けることで、これまでの経験を活かしながら、さらなる効率化やトラブル対応の役割を担ってもらうのです。企業は人材を有効活用することができ、従業員は解雇されることなく業務に携わっていくことができる。リスキリングは企業と従業員の両者にとってメリットがあるのです。



 

リスキリングの社内への導入方法

学び直しをすること、学び続けることは、従業員が長期的に生き残っていくためにも欠かせません。自社にリスキリングを導入する際は、環境を整備するのと同時に従業員自身にもその価値を理解してもらう必要があります。その上で、企業はリスキリングに取り組む従業員を支援・評価する仕組みづくりを行っていきます。

 

スキルギャップの見える化

従業員が事業移管や機械化などで業務を失う場合、あるいは従業員自身が働きにくいと感じている場合、会社側が求めるスキルと従業員が保有するスキルのギャップを見える化する必要があります。
しかしそれは従業員自身では判断できず、アナログな情報管理では網羅できません。HRテックや外部サービスを導入し、明確にどのスキルが不足しているかを分析したり、スキルを保有していながら埋もれている人材を発掘したりできる仕組みを構築しましょう。

 

 

リスキリングに必要な再教育プログラムを用意

新しい業務において必要となるスキルを従業員に示し、再教育を施します。さまざまな教育プログラムがオンラインで受講できるため、そういったサービスを活用するのが効率的。特にDXやIT人材といった分野のリスキリングは、オンラインプログラムが充実している分野です。
ここで重要なのが、従業員が業務時間内にプログラムを受講できるように制度や環境を整えること。これにより、従業員が感じる「再教育させられている」という不満をやわらげ、「業務内でスキルが習得できる」という前向きな思考に変化しやすくなります。

 

スキルを公平に評価する

従業員が会得したスキルや個人のパフォーマンスを公平に評価する制度を策定しましょう。自社の戦略的に重要なスキルを保有する者には手当を出すなど、従業員のモチベーションを上げる仕組みが学びを促します。座学で学んだスキルを実地で定着させる、社内インターンなども良いでしょう。
公平な評価でステップアップを後押しすることで、余剰人員とみなされていたリスキリング対象従業員が、いつしか自社にとって欠かせない人材へと変化を遂げることになります。

 



リスキリング、キャリア開発で悩んだら

従業員が自発的に前向きなキャリアを設計しリスキリングに取り組むためには、会社の支援体制が必要不可欠です。キャリアの中で従業員自らが次のステップを見据えて動き出せるよう、ランスタッドでは潜在能力を引き出す専門能力開発プログラムのご提供や、生き生きと働ける魅力的な職場を目指す組織開発の支援プログラムをご用意。キャリア開発のサポートを行っています。

 

ランスタッドがキャリア開発ソリューションにおいて重視しているのは、従業員の学びと能力開発を施策の中心に置くこと。キャリアコーチングとメンター制度で支えられた一連のマイクロラーニング体験を通し、優秀な人材がより大きな目的とエンゲージメントを得られるように導きます。人による手厚いサービスと、高い技術を用いたプラットフォームとを組み合わせ、オンラインのみのキャリア開発プログラムでは得ることができない独自の学習と開発の機会をご提供します。

 

 

今取り組むべきリスキリング

変化の早い現代社会において、リスキリングなしに存続し成長し続けることは、企業側にとっても従業員にとっても難しいということが鮮明になりつつあります。人材の解雇や離職を防ぎ、流動的な世の中で勝ち残る組織をどう形成していくのか。
離職率・定着率の改善から組織開発に至るまで、ランスタッドにお気軽にご相談ください。「どこから手をつけて良いのかわからない」といった漠然としたお悩みでも、共に解決の糸口を探り最適なソリューションをご提案いたします。

 

 

[参考]
経済産業省リスキルとは:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf