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ドライバー不足で物流業界は大混乱!:迫りくる「2024年問題」にどう対処する?|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|Aug 29, 2023 3:00:00 PM

2018年に「働き方改革関連法」が国会で成立して以来、「働き方改革」のための具体的な施策がどんどんと進められています。

「働き方改革」といっても、良いことばかりではありません。1年後の2024年(4月)からは、トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が始まり、物流業界に大きな混乱をもたらすことが予想されているのです。これが、いわゆる「2024年問題」です。

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「2024年問題」においてもっとも懸念されるのは、時間外労働の規制によって生じる全国的なドライバー不足です。現状においてさえ、すでにドライバーは不足しており、高齢化も進んでいます。問題はかなり深刻です。

目次

 

 

2024年問題」とは

最初に、「2024年問題」とは何か、ご説明しましょう。

「2024年問題」とは、ドライバーの時間外労働の上限規制(960時間まで)が始まることで生じる、さまざまな問題のことを言います。「物流の2024年問題」とも呼ばれています。この規制は、「働き方改革関連法」で定められたもので、ドライバー業務に適用が開始されるのが2024年4月1日となっています。

「働き方改革関連法」には多くの改正点がありますが、ドライバーの「時間外労働」の上限規制が、物流業界にもっとも大きな影響を与えると言われています。

もちろん、時間外労働の上限が設けられることで、無理な働き方から生じる問題(長時間労働に起因する脳や心臓の疾患、ドライバーの居眠り運転、それによる事故など)が減るなどのメリットもあります。令和3年度に脳や心臓の疾患により労災が認定された件数は、「道路貨物運送業」(トラックドライバーなど)が56件(全体の32.6%)で、断トツに高い数値となっています。だから、今回の規制の導入は、ドライバーの労働環境を改善するために必要な改革と言えるのです。

しかし、運送業などの雇用者側の頭を悩ます問題は尽きることがありません。まず、ドライバー1人当たりの走行距離が短くなります。長距離の物流が滞り、コスト高から、運賃も上げざるを得なくなります。個々の企業だけでなく、運送業界全体で売上が減少することも懸念されます。

雇用者側だけではありません。トラックドライバー1人当たりの走行距離が短くなることで、収入も減少するでしょうし、ドライバーの離職を加速させることにもなるでしょう。荷主側にも、運賃上昇による物流コストの転嫁が起こり得ます。

日本の物流業界は、これまで、「Amazonエフェクト」と呼ばれる物流・経済の変革により大きな影響を受けてきましたが、それと同等以上の混乱が生じることは避けられません。

物流業界は、ドライバーの労働時間を短縮化して、同時に給与水準はなるべく維持するという難問をクリアしなければならないのです。そのために必要なのは、徹底した業務の効率化です。

 

 

  どのような影響があるか

対策が必要な企業は全体の3割にも

「働き方改革関連法」の施行で、ドライバーの時間外労働は、年間960時間までとなります。これまではトラックドライバー等に関する時間外労働規制はなく、ドライバーの年間の拘束時間も「3516時間」と全業種の平均よりも2割長くなっていました(厚生労働省調べ)。そこで、今回の規制は、時間外規制だけでなく、年間の拘束時間も見直され、上限が3300時間になっています。

法定労働時間は、一般的な労働者と同じ、18時間(週40時間)です。年間52週で掛け算をすると、2,080時間が年間の法定労働時間となります。規制対象となる時間外労働は年間960時間ですから、2,0809603,040時間が事実上の年間の上限勤務時間になります。

一方、令和3年時点でのデータによれば、全体の21.7%の会社で、トラックドライバーの拘束時間がすでに3,300時間を超えています。3,040時間が実際上の上限とすると、それを大きく上回る拘束時間の会社は3割くらいに上る可能性もあります。つまり、全体の3割の会社は、何らかの対策を講じる必要があるということになります。

 

規制対象となる業務

2024年41日に時間外労働の上限規制が始まるのは、「自動車運転業務」です。具体的には、トラックドライバーのほか、タクシードライバーやバスの運転手も含まれます。

 

運送業に与えるマイナスの影響

① 運送会社の売上が減少

時間外労働時間の上限が960時間になると、長時間運転が出来なくなり、ドライバー1人当たりの走行距離が短くなります。とくに長距離の物流に影響がでるでしょう。企業側は、運賃を上げざるを得なくなりますので、荷主は発注を減らすかもしれません。こうして運送業者の売上が減少することにつながります。

② ドライバーの給与水準が低下

トラックドライバー1人当たりの走行距離が短くなることで、収入も減少するでしょう。運送業でもとくに中小企業では、「歩合制」(売上=運賃の一定割合を給料として受け取る)のところも多く、運賃が下がることは、給与の下落に直結するのです。

また、走行距離を稼ごうとするあまり、法定速度を超えるスピード運転をするドライバーも出てこないとは限りません。今のままの状況では、「働き方改革」の目的とは裏腹に、ドライバーの離職を加速させることにもつながりかねません。業界全体の人材不足がさらに進むことにもなるでしょう。

③ 運賃上昇と荷主の負担増

困るのは、ドライバーや運送業者だけではありません。運賃が上がれば、荷主側に物流コストの転嫁が起こます。運賃の上昇は、荷主の配送コスト増につながり、最終的には、商品への価格転嫁がなされるでしょう。政府も、Amazonや楽天などに見られる「送料無料」の表示を規制しようとしています。

 

 

ドライバーの時間外労働の実態

実際に、ドライバーという職種につく人たちは、どれくらい働いているのでしょうか。

あくまで平均値ではありますが、国のデータ(総務省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」)によれば、全産業に比べ、とくにトラックドライバー(大型)(中小型)の「所定内 実労働時間数」、「超過 実労働時間数」が長時間になっています。平均して、大型トラックドライバーは年間420時間、中小型トラックドライバーは372時間の時間外労働をしており、年間360時間を上回っていることがわかります。

 すでに指摘したように、全体の21.7%の会社で、トラックドライバーの拘束時間が3,300時間を超えています。つまり、1,000時間を軽く超える時間外労働をしているドライバーが、相当数いるということになります。

  

表:運送業・物流業の平均労働時間

  年齢 所定内
実労働時間

超過労働(月)

超過労働(年)

所定内
月給
全産業平均

43.2歳

165時間

10時間

120時間

30万円

トラック(大型)

49.4歳

176時間

35時間

420時間

27万円

トラック(中小型)

46.4歳

176時間

31時間

372時間

36万円

タクシー

59.5歳

166時間

16時間

192時間

20万円

バス

51.8歳

159時間

28時間

336時間

24万円

改善基準告示見直しについて(参考資料)|厚生労働省 より一部改変

 

 

2024年の具体的な規制内容

「働き方改革」とは、そもそも労働者の健康や経済的利益を守るための改革です。厚生労働省のパンフレットには、働き方改革は「長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置」だと書いてあります。

この考え方を受け、「働き方改革関連法」の影響を受けているのは、ほぼすべての業界にわたります。すでに、大企業では、201941日から、中小企業では202041日から、時間外労働の上限規制が始まっています。

現行法でのルールは、以下の通りとなっています。

◎法定労働時間

・労働時間は、 18時間、週 40時間以内=「法定労働時間」(労働基準法)
・休日は少なくとも週に 1

◎時間外労働

・労働基準法で定められた「法定労働時間」を超える労働

◎時間外労働のルール

・月45時間/年間360時間

 

ただし、労使が合意して、「特別条項付き」の「36(さぶろく)協定」(労働基準法第36条に定められた労使協定)を締結することにより、上限を超えた時間外労働を可能とすることもできます。以下の通りです。

○特別条項を利用した時間外労働のルール

①年間720時間

②時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

③時間外労働と休日労働の合計について、複数月平均(「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」)で、ひと月当たり80時間以内

④時間外労働が月45時間を超えるのは、年間6か月を限度とする

 

しかし、運送業や建設業においては、時間外労働の規制が適用にならないという「猶予措置」がありました。その猶予がなくなるのが、「2024年」ということです。2024年4月1日からは、以下の通りとなります。

◎特別条項(36協定)を利用した時間外労働のルール【運送業界】

①時間外労働の上限は、年間960時間

しかし、以下の規制は適用されない。

②時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

③時間外労働と休日労働の合計について、複数月平均(「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」)で、ひと月当たり80時間以内

④時間外労働が月45時間を超えるのは、年間6か月を限度とする

 

上記のように、2024331日までは、トラックドライバーなどの自動車運転業務に対する時間外労働の上限規制は猶予されていますが、202441日からは、年間上限960時間の時間外上限規制が開始されます。ただし、ほかの業種の規制はもっと厳しい720時間です。

注意しなければならないのは、トラックドライバーには、「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」「時間外労働と休日労働の合計について、複数月平均で、ひと月当たり80時間以内」「時間外労働が月45時間を超えるのは、年間6か月を限度とする」といった、他業種では適用される規制が除外されている点です。

他業種では、すでに、ドライバー業界よりもずっと厳しい時間外規制が敷かれているわけです。運送業の「2024年問題」では、これまで、いかに運送業界の労働時間が長いかという事実があぶりだされた格好になりました。

 

 

法律に違反したときの罰則

では、202441日以降に、時間外規制に違反してしまった場合はどうなるのでしょうか。

法律では、企業などドライバーの使用者が、時間外労働の上限・特別条項に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。また、36協定を締結しないまま時間外労働をさせた場合も同様です。

対策が必要な問題は、時間外規制だけではありません。

2023年4月以降は、中小企業の月60時間超えの時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%と引き上げられます。

さらに、月60時間を超える時間外労働を、深夜(22:005:00)の時間帯に行う場合には、深夜割増賃金率の25%に、時間外割増賃金率50%が加えられ、計75%となります。すでに大企業はこの賃金率が適用となっていますが、中小企業もと同じ割増賃金率になったことになります。中小企業の人件費の比率はさらに高くなることが予想されます。

トラック業界は、中小企業が99%を占めると言われています。割増賃金率のアップは、ドライバー等の人件費が増加する要因にもなります。「時間外規制の上限に達しなければよい」という考えだけでは、まだ甘いと言わざるを得ません。

 

 

2024年問題」への対応策

ドライバーの確保

 2024年問題」で一番深刻なのは、やはりドライバーの不足です。時間外労働時間の上限規制により、1人で配送できていた荷物のために、2人、3人のドライバーが必要になるからです。運送業者が今までの配送量をこなすには、ドライバーの効率性を高めるか、シンプルにドライバー数を増員するか、そのどちらか、もしくは両方が必要になってきます。

ただし、ドライバーの効率化・配送業務の効率化には限界があります。やはり、どの時点かで、ドライバーの増員を検討することになるのは必至です。

たしかに、全国的にドライバーの人手不足は深刻な状況になっています。ドライバーの有効求人倍率は、令和4年のデータでは2.01倍です。ドライバーを確保せよと言っても、それほど簡単なことではないのは事実です。

しかし、方法はあります。人材採用の魅力化とアウトソーシングです。

まず魅力化については、他社にさきがけて待遇改善を行なう必要ができてきます。ドライバーの給与はもともと安いと言われています。全産業の平均賃金と比べ、大型トラックドライバーは約5%、中小型トラックドライバーにいたっては、約12%も低い状況です。運行管理や配車業務などの「事務面」での効率化も徹底して行い、事務効率化による人件費の余剰分をドライバーの確保に充てるのが、現実的な解決策になるでしょう。

また、ドライバーの確保のために、勤務形態についても検討する必要があります。いわゆる「勤務間インターバル制度」の導入を進めていきましょう。

勤務間インターバル制度とは、当日の勤務終了時間から翌日の始業時間までの間に、一定の時間を確保する制度です。それにより、労働者の休息時間を十分に確保しようとするのが狙いです。

ドライバーの中には、終業から次の始業までの間が短く、睡眠不足で運転せざるをえない人も多くいると思います。勤務間インターバルを設けることで、ドライバーの体と心の負担を大幅に軽減することが可能になります。

運輸業界における自動車運転手の「一定時間以上の休息期間」は、これまで「8時間以上」の確保が必要とされていました。しかし、時間外労働の上限規制が適用される2024年に向けて、「11時間以上」が努力義務となることが決まっています。

もちろん、現状では、「勤務間インターバル制度」の導入は、まだ法的には「努力義務」にすぎません。しかし、労働時間の削減とドライバーの確保の観点からは、ぜひとも導入が望ましい制度と言えるでしょう。

そして、ドライバー確保の決定打になりうるのが、ドライバーの派遣採用です。

 

 ドライバーの派遣採用ならランスタッドにご相談ください

2024年問題」は目の前に迫っています。「来年から始めればいい」などと、のんびり構えている余裕はありません。

業務の効率化、デジタル化、人材確保など、さまざまな検討課題があります。

とくに、ドライバー人材の確保は、直前では間に合いません。いまから、しっかりと準備を始める必要があります。

ドライバーの働き方にも多様化が求められています。また、荷主の業種ごとの繁閑を予測しつつ、適切な人材を確保する必要性もますます必要になってきています。

ランスタッドでは、ドライバー人材確保のため、以下のソリューションを提供しています。

1.募集・採用支援

 ・季節変動や景気・繁閑に柔軟に対応した人材支援を行ないます。

2.ドライバーの研修・教育

・コンプライアンス意識、プリ意識の高いドライバーを育成します。

3.ドライバーの派遣

 ・研修済みの即戦力ドライバーを、必要な時期に派遣します。

 

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