センターで言われているコール品質とは何でしょうか。電話がすぐにつながり、保留もなく1コールで完結する。これはサービスレベル(SL)と一線完結率の管理でチェックすべき問題です。それ以上に重要なのは、お客様の質問や知りたいことに対して正しく、迅速にお答えできるスキルを培う。そして電話をしてよかったと満足していただく。これが本来の品質です。さらに、単に満足していただくだけではなく、感動をしてもらえる応対がこれからのセンターでは求められます。
コール品質=トークスキルと短絡的に捉えてしまうセンターがまだまだ多いようです。
お客様に感動してもらえるかどうかは第一声に占めるところが大きく、そのコール全体の雰囲気は、お客様が最初に耳にするコミュニケーターの挨拶、初頭効果に左右されることが多いのは事実です。笑顔の感じられる「笑声=Smile Voice」がまず基本であることは言うまでもありません。
多くのセンターで使われているモニタリングチェックシートを見ると、発音や発声、挨拶の仕方、言葉遣いや話し癖、聞き方・話し方の適切さ、語尾の扱い方、会話スピードや間の取り方、敬語の使い方など表面的なトークテクニックのチェックに終始し、できているか否かの判定で終わっていることが多いようです。
しかし、お客様に真にありがとう、と言ってもらうためには、表面的なスキルチェックだけでなく、「心情の理解」や「追加質問の適切さ」といった項目も加え、CSを意識した顧客視点でのチェックが大切なのです。お客様は「一所懸命」「親身になって」対応してくれるセンターに感動するのです。
「リアルタイムのモニタリングは、コミュニケーターの応対を盗み聞きしてアラ探ししているようで気が引ける。」「自分がされたくないことは人にもしたくない。」とはっきり言うSV。「聞かれていると『間違った案内をしたら怒られる』と妙に緊張してしまう。」「聞かれていると思うと落ち着かない。」というコミュニケーター。
これらは、モニタリングへの抵抗感の典型例です。なぜモニタリングが必要なのか、その根本を正しく理解しないとこの抵抗感は払拭できません。
モニタリングは「お客様へのミスオペレーションを防ぐ」ための適度な緊張感と、「会社はいつもあなたを温かい目で見守っています」という安心感を醸成します。つまり、お客様とコミュニケーターのために必要な作業なのです。その背景にはコミュニケーターとSVとの信頼関係がなければなりません。
そこで重要なのがフィードバックです。せっかく評価チェックしても正しくフィードバックができていないセンターも多いようです。フィードバックは、個々のコミュニケーターの得手不得手をSVが認識し、マンツーマンでテープを一緒に聞きながら「本人に気づいてもらう」ことから始まるのです。できていない部分を叱咤する。指摘して矯正を促すのではなく、「本人の気づき」を誘発し、「ともに考えて」行動を起こしてもらうことがポイントです。納得のいかない指摘をされても人は決して動きません。
次回引き続き、QAのしくみ作り、チェックシートの見直し、カリブレーション、ベンチマーキングについて解説します。
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。