どこのセンターでも優秀で長続きする人材を求めています。品質が安定し、採用育成にかかる時間もコストも抑えられるからです。
一昔前ならコミュニケータ募集広告を出すとそれなりの応募がありました。ところが昨今では一定のエリアにコールセンターが林立し、それぞれが人材を取り合っているという状況が発生しています。10名の募集に対して応募が100名あればじっくりと吟味できますが、応募が20名では自ずと限界が出てきます。
母数形成がままならない状況では何らかの手立てを考えなければなりません。安易に時給を上げればコストに影響します。採用基準を下げて甘くすると対象者の幅は拡がりますが、品質が向上しない、離職者も一向に減らない、新人の採用育成にまた工数を取られる、という負のスパイラルに陥ります。
センター現場で今活躍しているスタッフは、どんな資質や特性を持っていて、応募時にどの媒体のどのキャッチフレーズに惹かれたのか、を知っておけば、自社センターが必要とする人物像が明確になり、ターゲットにより募集媒体も絞れます。もちろん過去の媒体の効果測定データの蓄積と分析が重要なことは言うまでもありません。また、今のスタッフがどの辺からどんな交通ルートで通っているのかをマッピングすれば、思わぬエリアから通ってくれていることが判明する場合もあります。いつも同じエリアに同じ募集広告では雇用市場を枯渇させるばかりか、その地域での評判を悪くし、センターのイメージ低下にもなりかねません。
日本のコールセンターの多くはアウトソーサーや派遣会社を活用しています。
しかし、センター管理者は、採用はベンダー任せで関知していない、採用エリアや面談方法すらまったく知らないというケースが多く見受けられます。過去のアンケートでは115社のうち23.6%が「採用には関与していない」という驚くべき回答を寄せています。またインハウスでも、半数の企業が「採用してみないと適性がわからない」「適性を見極めるツールがない」という問題点をあげています。ほとんど「勘と経験」に頼って採用しているのが現状なのでしょう。配属後のOJTで育成を任されるSVやトレーナーの苦労は計り知れません。
センターとしては、何を基準に採用の成否を決定するのかを明確にし、採用テスト、ロープレ診断ツール、面接チェックシートなどの採用ツールを整備し、誰が採用担当になってもブレがないようにすることが重要なのです。さらに、SVやトレーナーが面談に立ち会うなど、現場を巻き込むことも重要です。
応募者は複数のセンターを比較しています。仕事内容と採用条件やシフト条件を提示し、合わせられない人は不採用というセンターも多く見られます。肝心なのは、そこで働けばキャリアアップになりそう、働き甲斐がありそう、自分の夢の実現に近づける、という感覚を持ってもらうこと。つまり、こちらが選ぶのではなく相手に選んでもらうことです。そのためには、会社の方向性、センターの位置づけ、ビジョンやポリシーを明確に語り伝えることが必要です。
コミュニケータを正しく育成するためには、入社動機があとあと大きく影響します。そして、初期導入研修では「同期意識」「帰属意識」「CS意識」の醸成に注力し土台をしっかり根付かせること。就業後のフォローアップ研修を年間の育成プログラムとしてプラニングすること。モニタリングとフィードバックの徹底により常に品質と心の状態を“見守る”ことが肝心なのです。
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。