コールセンターにおいてのベストの職場環境とはどうあるべきでしょうか。キーワードは機能性と快適性の2つです。言うまでもなくコールセンターでの主役はコミュニケータの皆さんです。オペレーションルームの設計は、バックオフィスでサポートするスタッフ(正社員であっても)に多少の犠牲を払ってでも、コミュニケータ中心で考えるべきです。快適な環境でオペレーション業務が遂行できれば定着率向上にも大きく影響します。
設備投資にはある程度の限界はありますが、自社センターのファシリティが適切かどうか、チェックポイントを以下に示します。
オペレーションルームは明るく、仕事がしやすい空間でなければなりません。窓際で空調・湿度・採光・照明に配慮した業務スペースが必要です。室温は全館空調などの場合は調整が難しいですが、加湿器を使えば湿度とともに多少の調整はできます。照明も個人差はありますが、天井照明に光を拡散させるためのルーバーを付けたり、手元灯を付けるなどの工夫で調整できます。
プリントやFAXのために離席して数分かかってしまうのでは効率的によくありません。また、SV が自席でモニタリングして指示指導できる環境であったとしても、席を立つ場面は頻繁に起こります。仕事の動線を考慮した適切なレイアウトを考え、プリンタの複数増設、SVのヘッドセットのコードレス化などでこれらの問題の解決を図ります。
人材育成で重要な研修のための独立した研修ルームの設置は必須です。初期研修で活躍するAV設備も常備すべきでしょう。研修のない時間帯は食事休憩ルームとして転用することもできます。「ちょっとした打ち合わせスペースがない」という不満の声もよく耳にします。
また、オペレーションブースはシフトの関係もあり、共用であることが多いようですが、少なくともヘッドセットは個人専用にするか、マイクパッド交換が可能なものの方がよいようです。長時間キー入力業務時の手首への負担軽減のために「リストレスト」を支給するセンターも増えています。
長時間顧客対応をしているコミュニケータにとって、休憩時間は気分をリフレッシュする為に欠かせない時間です。給湯器や冷蔵庫、自販機、電子レンジなどはもはや当たり前。大型液晶テレビ、リラックスできるソファ、全身マッサージ器具などを常備するセンターも増えてきました。雰囲気も会員制のバーかクラブかと思わせるような間接照明を駆使したり、有線放送を入れてBGMを流したり、和室を用意したりと、様々な工夫を凝らしています。喫煙スペースもまだまだ必要でしょう。
非日常空間を演出することで気分転換に貢献し、ESにも影響してくるため、リフレッシュルームの造作はあなどれない重要要件です。
コミュニケータのリラクゼーションを増進する手立てとして注目すべき手段が、アロマテラピー、カラーテラピー、サウンドテラピーです。センター内に柑橘系の香りを漂わせると入力ミスが大幅に減るという実験結果もあります。センター内のカラーの使い方も重要で、原色系より中間色、寒色系より暖色系のほうが落ち着くようです。またアメリカでは多いのですが、センター全体あるいはブースごとに軽いBGMやホワイトノイズ(低周波数帯のフラット周期の雑音で、胎児は母親の体内でこれを聞いているようです。)を流しているセンターも増えてきました。
また、雇用対策の一環で託児所を併設するセンター、身障者を意識したバリアフリーのセンターも徐々に増えてきています。
これからのセンターファシリティを考える上では、人間工学や心理学、社会情勢や福祉面もしっかり研究すべき時代なのです。
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。