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人材活用のヒント コールセンター編 第11回 教育研修プログラムのあり方|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|May 10, 2019 3:00:00 PM

1.初期教育の重要性

コミュニケータを採用してから一人前に育てるためには最低でも半年から1年かかると言われています。逆に言うと、半年頑張れたコミュニケータはよほどのことがなければ離職に至る確率が少なくなるということです。 ではどうすれば半年頑張れる人材を確保維持できるのでしょうか。重要なのは初期教育のあり方なのです。

多くのセンターでは、初期研修において電話応対の基本、業務知識、端末操作研修などに1~2週間費やしています。金融系のセンターなどでは基礎教育だけで1~2ヶ月かけることも珍しくありません。毎日、研修漬けの生活です。こういった短期詰めこみ型の初期研修体制からはそろそろ脱却すべきでしょう。教える側のインストラクターも教わる側の受講者も初期研修だけで疲弊してしまうのです。研修途中で脱落していくコミュニケータがいかに多いことか。担当インストラクターでさえ自信喪失で退職していきます。現場の事実が証明しています。

初期教育においてなぜマインド教育に注力しないのか、をいつも疑問に感じます。つまり、会社の方針や経営理念、センターの方向性や運営ポリシーなどを初期の段階で「熱く」語らなければ人はついてきません。

 

2.初期教育プログラムのポイント

例えば、初期教育で1週間の期間があるとすれば、マインド教育に25%は時間を費やすべきです。注力すべきプログラムは以下の通りです。

  • 帰属意識の醸成
    会社の経営方針、センターの位置づけ、運営方針、顧客対応ポリシーを徹底的にアピールすべきです。自分がこのセンターで働くことでどんな社会貢献ができるか、自分自身の人間的成長にどれだけ役立ちそうか、自分の夢の実現にどれだけ近づけそうか、といったことを理解してもらうためのプログラムです。社長もしくは役員陣からの直接の一言も重要です。
  • 同期意識の醸成
    面接採用を通して同期で研修に入った方たちは自ずと同期意識が生まれるはずです。ともに学び、ともに切磋琢磨しながら成長していく仲間である、という感覚をうまく意識付けできれば相互の励ましあいや、いい意味での競争意識も生まれます。初期段階での昼食会や懇親会の実施はあなどれません。
  • CSマインドの醸成
    インバウンドであれば、顧客対応とはどういうものなのか、サービスとはどうあるべきなのか、を理解しなければなりません。CSを題材としたビデオや書物に触れることで、感想を相互にぶつけ合ったり、自分自身の過去の実体験(良い体験、いやな体験含めて)を述べ合ったりすることで客観的なCSマインドが理解できるようになります。

机上の理屈では実感しにくいのであれば、同業他社へのミステリーコールを研修の一環として実施することをお勧めします。「顧客体験」を実際にすることで、肌で感じてもらうことができます。感想・フィードバックを全体で共有すれば自らの立ち位置が見えてくるものです。

 

3.年間の育成プログラムサイクル

教育育成は初期段階で一度やればいいというものではありません。初期研修しか行なっていないセンターが多いのは残念です。フォローアップ研修を定期的に実施しているセンターは定着率もよく、品質も生産性も高いようです。年間プログラム展開の考え方は以下の通りです。

  • プランニング
    1. (1)お客様対応の基本方針
    2. (2)研修目標の設定
    3. (3)研修テーマの設定
    4. (4)研修スケジュールの設定
    5. (5)評価基準・評価制度の決定
    6. (6)フィードバック方法の検討
    7. (7)現状スキルの把握(傾向・スキル)
    8. ⇒テープチェックの実施(現状把握)
  • 初期教育(座学&実技)
    1. (1)コミュニケータの役割と心構え(マインド教育、CS教育)
    2. (2)応対基本スキルの習得(コミュニケーションマナー)
    3. (3)一般業務知識研修(商品・サービス知識)
    4. (4)端末操作研修
    5. (5)総合ロールプレイング
    6. ⇒センター実務、OJT
  • フォローアップ研修 ※最低3~6ヶ月に一度の実施
    1. (1)基本スキルの確認、維持と向上
    2. (2)ロールプレイング、テープチェック (研修による徹底訓練)
    3. (3)個々の長所・短所を明確化
    4. (4)カスタマー心理の理解
    5. (5)アップセリング・クロスセリング
    6. (6)イレギュラー対応、クレーム対応訓練
  • 検証・評価
    1. (1)受講者個々のレポート提出
    2. (2)コミュニケータカルテ(個人評価票)の作成
    3. (3)フィードバックと個別面談・指導
    4. (4)スキルマップ(スキル別評価)
    5. (5)実施報告レポート作成
    6. (6)次期研修テーマの開発
    7. ⇒自社センター独自のコミュニケータスキル像の確立および維持

 

著者プロフィール

コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)

コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。

*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。