無期労働契約への転換について[ランスタッドニュース]

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【労務・コンプライアンスノート】第13回: 無期労働契約への転換について

昨年の8月に改正労働契約法が成立し、今年の4月1日から施行されます(一部は既に昨年8月10日から施行されています)。

注目されている改正後の同法第18条は、有期労働契約を5年を超えて反復更新すると労働者の希望で無期労働契約に転換する権利が発生することを主たる内容にしています。

マスコミも注目するこの内容を少し詳しく取り上げましょう。

これまで何度も有期労働契約を更新されてきた事業主にとっては、どの労働契約から数えて5年なのかが不安です。この条文の効力は、施行後に就労の初日がある有期労働契約からです。

図1では、「有期労働契約ホ」のように施行日をまたぐ契約は5年に算入されず、施行後に初日がある「有期労働契約ハ」「有期労働契約へ」が対象になります。



続いて、労働者が無期労働契約に転換を希望する権利が発生する時期を確認しましょう。2013年4月1日から数えて2018年4月1日以降だと考えているなら、それは誤りです。

実は、図2のように、その契約の末日が5年を経過すると明らかな「有期労働契約チ」の初日から、労働者に無期労働契約転換を希望する権利が発生します。しかも、この権利は形成権であり、相手方(事業主)の承認の如何によらず、労働者の意思表明とともに発生する権利です。

したがって、無期労働契約転換の権利発生後に労働者の継続雇用を拒むことは、常用雇用労働者を解雇する時と同じ扱いになります。



多くの企業が、無期労働契約者を増やすのか、それとも有期労働契約を通算5年を上限に満了する制度を整備するのか、悩んでいることでしょう。

景気の先行が見えないのに、定年まで就労いただくことを前提に労働者に多数在籍いただくことは、事業主にとって労働力の需給調整がうまくいかずに余剰人員を抱えるかもしれないという不安を抱かせます。

一方、5年以内に有期労働契約を満了して更新しない制度を導入すると、優秀な労働者が定着せず、年々応募者が減少して逆に肝心な場面で人材不足に直面する可能性もあります。

法改正を受けた新しい人事制度は、各企業の今後のビジネスの見通しとリンクしながら策定されるのでしょうが、需給の変動に対応できる派遣労働者の活用もぜひご一考ください。

(2013.3.22 掲載)


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労務コンプライアンスノート本コラムでは、多様な人材を活用する企業人事部門の皆さまが、コンプライアンスに則った適正な形で人事・労務業務を遂行いただけるよう、ランスタッド顧問社労士がバラエティに富んだ労務トピックスを分かりやすく解説いたします。

特定社会保険労務士 田原 咲世 (たはら・さくよ)

1968年大阪生まれ。立命館大学修士課程修了後、旧労働省に入省し、労働基準法・男女雇用機会均等法・派遣法改正などを担当。2008年3月まで北海道労働局の需給調整指導官として活躍。2008年4月から札幌で北桜労働法務事務所を経営。特定社会保険労務士として、労働関係法を中心とした指導を行う。現ランスタッド、顧問社労士。

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