政令業務における直接雇用契約申込義務に規制緩和

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【労務・コンプライアンスノート】第5回: 政令業務における直接雇用契約申込義務に規制緩和

改正派遣法では、「みなし雇用制度」が導入されて大きな注目を集めています。これは、違法な派遣受入を行った派遣先が、受入時と同内容の労働条件で派遣労働者と労働契約を締結することを義務づけたものです(派遣労働者が労働契約の締結を希望しない場合は除きます)。

この制度は、派遣先に対する一種の規制強化ですが、逆に規制緩和されて「派遣先による直接雇用契約の申込義務がなくなった」という部分もあります。それは、政令業務に派遣労働者を受け入れた場合の、直接雇用契約の申込義務の部分です。

改正後の派遣法概要
第40条の5 政令業務で3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている場合であって、同業務に配置するため派遣先で労働者を募集する場合は、公募より先に当該派遣労働者に直接雇用契約の申込をしなければならない。ただし、派遣労働者が派遣元に期間の定めなく雇用されている場合はこの限りではない。

朱字の部分が今回の改正で加わった新しく追加された部分です。

もともと派遣元と期間の定めのない労働契約を締結している派遣労働者であれば、一定年数を超えた派遣就業後であっても派遣先へ転籍することが必ずしも雇用の安定に繋がるとは言い難く、直接雇用契約の申込対象から除外したものです。

一方、第180回国会に提出された「労働契約法を改正する法案」では、5年以上有期労働契約を締結した後に、使用者は労働者に無期労働契約の申込を行う義務を課す内容となっています。

使用者は、無期労働契約者を増やすことで労働者数やコストを調整することが難しく、労働者は無期労働契約転換後は雇用確保のため当初業務とは異なった業務への配置転換や転勤を余儀なくされる可能性もでてきます。

もし、有期労働契約で受け入れている労働者が従事している業務内容が政令業務であれば、直接雇用ではなく派遣労働者として受け入れることも、今後は選択肢として考えたいものです。

使用者は労働者派遣契約単位で無期労働契約者を増やすことなく長期の需給調整が可能となり、派遣労働者も転勤や配置転換の心配なく、派遣元との安定した労働契約下で専門の分野において活躍いただける可能性が拓けます。

(2012年8月掲載)


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労務コンプライアンスノート本コラムでは、多様な人材を活用する企業人事部門の皆さまが、コンプライアンスに則った適正な形で人事・労務業務を遂行いただけるよう、ランスタッド顧問社労士がバラエティに富んだ労務トピックスを分かりやすく解説いたします。

特定社会保険労務士 田原 咲世 (たはら・さくよ)

1968年大阪生まれ。立命館大学修士課程修了後、旧労働省に入省し、労働基準法・男女雇用機会均等法・派遣法改正などを担当。2008年3月まで北海道労働局の需給調整指導官として活躍。2008年4月から札幌で北桜労働法務事務所を経営。特定社会保険労務士として、労働関係法を中心とした指導を行う。現ランスタッド、顧問社労士。

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