厚生労働省は今秋、「無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルール等に関する実態調査」の結果を公表しました。それによると、労働契約法に基づく「有期通算5年で無期転換」について「知らない」と回答した事業所は7.2%だったのに対して、当事者である有期契約労働者は39.9%に上りました。また、無期転換の申し込み権利が生じた人のうち、「行使した」は約3割、「行使せずに継続雇用」は6割超、「退職した」が1割未満でした(2018年度と19年度の合算)。年度別では18年度に「行使した」割合は32.4%であったのに対し、19年度は19.8%に減少しています。
同調査は、「無期転換ルール」について企業と個人のそれぞれに聞いた大規模なアンケートで、5662事業所(有効回答率49.4%)から有効回答を得ました。
2013年4月に施行された労契法の「無期転換ルール」は、同じ企業との間で有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えると、労働者の申し込みによって無期労働契約に転換される制度。18年4月から権利行使できる労働者が出ています。この結果を踏まえ、厚生労働省の有識者検討会は、(1)無期転換を希望する労働者の転換申し込み機会の確保、(2)無期転換前の雇い止め、(3)通算契約期間およびクーリング期間、(4)無期転換後の労働条件、(5)有期雇用特別措置法の活用状況――の5つのテーマで労契法の見直し議論を進めています。
これまでの議論をまとめると、アンケート結果で示された通り、施行から8年経過する中にあっても当時者への周知・浸透が鈍いことから、「見直しよりも認知度アップが重要」との認識で一致。同検討会は年内中に、有期通算5年で無期転換のルールを抜本的に見直すのではなく、実際に権利行使に至った人や、その事業所の規模や業種・業態などといった背景を探りながら「周知・浸透、そのための施策」を示す見通しです。
政府が昨年7月に閣議決定した規制改革実施計画には、「無期転換ルール」に関し、企業から該当する労働者に通知する方策を含む「制度の周知のあり方」について検討するよう盛り込まれており、やはり見直しよりも現行法の浸透に主眼を置いています。
取材・文責
(株)アドバンスニュース