2022年度の政府予算案編成で、厚生労働省の概算要求額が過去最大となりました。財務省の資料によると、一般会計の要求総額は過去最高の111兆6559億円にのぼり、8年連続の100兆円超えです。省庁別で最大の厚労省は全体の約3分の1にあたる33兆9450億円。製造業は業績を回復しているものの、宿泊や飲食サービス業界など「対面型サービス企業」で雇用不安が続く中、厚労省は「ポストコロナに向けた『成長と雇用の好循環』の実現」を政策の柱に据える方針です。来年度の雇用・労働における各種施策を点検します。
厚労省は22年度の概算要求で、「成長と雇用の好循 環」を前面に掲げ、(1)雇用維持・労働移動・人材育成(2)多様な人材の活躍促進(3)働きやすい職場づくり――を3本柱として推し進めます。
(1)の施策としては「雇用の維持・在籍型出向の取り組みへの支援」「女性・非正規雇用労働者へのマッチングやステップアップ支援、新規学卒者等への就職支援」「デジタル化の推進、人手不足分野への労働移動の推進」――の3項目。
(2)では「女性活躍・男性の育休取得促進」「就職氷河期世代の活躍支援」「高齢者の就労・社会参加の促進」「障害者の就労促進、外国人の支援」――の4項目。
(3)は「良質なテレワークの導入促進」「最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進、同一労働同一賃金など公正な待遇の確保」「総合的なハラスメント対策の推進」――の3項目を掲げています。
本年度と類似する項目もありますが、中身を検証すると、コロナ沈静化後のポストコロナを意識した「雇用の守りと攻め」の施策が際立っています。
厚生労働省が9月22日発表した2020年度「賃金不払い残業の是正結果」によると、労働基準監督署が監督指導した是正企業は1062社(前年度比549社減)となり、このうち1000万円以上の割増賃金を支払ったのは112社(同49社減)でした。
対象となる労働者は6万5395人(同1万3322人減)で、割増賃金総額は69億8614万円(同28億5454万円減)。1社あたり658万円、労働者1人あたり11万円となりました。
業種別では製造業が215社で最も多く、次いで商業が190社、保健衛生業が125社。対象労働者では製造業が1万9786人で最多でしたが、次いで保健衛生業が9614人となり、是正支払い額では製造業の約15億円がダントツです。
労基署による是正指導企業は17年度をピークに、毎年減少が続いています。
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