労働政策審議会労働力需給制度部会は8月30日、多種多様に進化する雇用の“仲介的サービス”の法的位置づけやルールの明確化などを含む「雇用仲介のあり方」について、議論を開始しました。この課題を巡っては、有識者研究会が7月に「報告書」を取りまとめており、それをたたき台に同部会の公労使委員が労働市場の発展と整備に向けて議論を深めます。職業安定法の改正につながるもので、人材サービス業界全体に「新たな枠組みと変化」をもたらす動きとなります。9月以降は現行法の施行状況を踏まえて論点整理を進め、年末をメドに厚生労働相に建議します。
現在、職安法に位置付けられている職業紹介と求人メディア以外に、伝統的なイメージを超える多様な雇用仲介サービスが存在し、その実態把握が的確な雇用政策を打ち出すうえで重要となっています。研究会報告書には「急速に進化・多様化する雇用仲介サービスの把握と事業者が依拠すべきルールの明確化」「新型コロナに直面して労働市場における官民の持つ情報共有や連携の重要性」が明記されており、これらをどのように法制度に盛り込んでいくかが焦点となります。
具体的には、求人メディアの「新形態サービス」と許可事業である職業紹介の境界線について、双方が対等の立場で競争できる同一の条件整備(イコールフッティング)のあり方も課題です。AIやITの進化で労働市場にはいま、さまざまなプレーヤーが存在し、情報技術の発展も重なって「雇用を取り巻く“仲介的”サービス」が多様化。「全く別な分野から求人メディアに新規参入しているケースが目立ち、現在の法律やルールで十分に対処できているのか」(同研究会委員)との指摘もありました。
この日の部会では、厚労省が現状の雇用仲介事業について、「職安法2017年改正」「労働市場の状況」「職業紹介事業」「労働者供給事業」「募集情報等提供事業(求人メディア)」「雇用仲介事業全体」の6つに分けてポイントを丁寧に説明。そのうえで、研究会報告書の概要を報告しました。これを受けて、公労使委員がこれからの議論に向けて意見を述べました。
現段階でのそれぞれの姿勢を整理すると、公益委員は「誰が対象なのか把握できないとすり抜ける事業者が発生して意味がなくなる」といささか慎重。使用者側は「過度なルールを設けず、むしろイノベーションを阻む規制を和らげて進化を援護すべき」と現行以上のルール化に消極的。労働者側は「求人メディアと新形態はその役割と存在が大きくなっているので、行政の適切な指導監督が必要だ」と何らかのルール化に前向きです。
規制やルールの手法やそのレベル感がどこに着地するのか年末までの議論が注目されます。
製造請負・派遣事業の業界団体、日本BPO協会が発表した「製造請負・派遣事業動向調査」によると、7月度の業況判断DIはプラス26となり、前回の4月度(プラス6)に続いて2四半期連続のプラスとなりました。新型コロナの影響で昨年7月度はマイナス57と極端に落ち込みましたが、取引先の休業が限定的となり、人材ニーズも回復基調。需要が高まっている分野では、新規の採用が難しくなっています。
業況判断DIは、「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた数値。回答企業数68社、回答率75.6%。同協会が四半期ごとに調査しており、11年の調査開始以来、今回で42回目。
業況判断DIがプラス20以上となるのは、2019年4月度以来9四半期ぶり。「取引件数が増加し、在籍数も増えている」「自動車関連を中心に人材需要が回復」といった回答がありました。
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