厚生労働省は7月30日、派遣元が「労使協定方式」を採用する際に用いる来年度適用分の一般賃金水準について、「原則通り、直近の令和2(2020)年(度)の統計調査等を用いる」との方針を示しました。雇用の維持・確保の観点から昨年設けた「例外的対応」は継続しません。同日開かれた労働政策審議会労働力需給制度部会(山川隆一部会長)に諮り、労使の了承を得ました。使用者側は「今後の経済情勢や雇用動向に注視して、悪化がみられる時は機動的に対策を講じてほしい」と注文を付けました。近く局長通達として発令される見通しです。
厚労省は昨年、「新型コロナウイルス感染症拡大が経済と雇用に与える影響を見極めたい」として、多面的な角度から運用のあり方を検討。その結果、「原則として直近の統計調査を用いる」とする一方で、職種・地域ごとに一定の要件を満たし、労使で合意した場合に限り、「今年度適用している水準を用いることも可能」とする例外的対応も示しました。これに対して今年は、(1)20年(度)の統計調査には新型コロナの影響が反映されている、(2)直近の派遣労働者の雇用者数(今年4~5月)は前年同月、前々年同月ともに増加――を理由に、「原則通り適用。例外的対応は設けない」としました。
いわゆる「同一労働同一賃金」に伴う20年4月施行の改正労働者派遣法は、派遣労働者の賃金や待遇について「派遣先均等・均衡」か「派遣元の労使協定」のいずれかの待遇決定方式を義務化しました。この選択制2方式のうち、「労使協定方式」を選んだ場合には、局長通達の一般賃金水準より同等以上であることが要件。施行2年目の現在運用されている水準は、コロナ禍前の「2019年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金」(賃構統計)と、「2019年度職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額」(ハロワ統計)の2種類が基になっています。毎年7月をメドに来年度適用分の局長通達が公表される仕組みです。
来年度適用分は、20年の賃構統計と20年度のハロワ統計が基となり、一般賃金水準に用いる各指数も更新されます。通勤手当は「(時給換算)74円から71円」、学歴計初任給との調整は「12.6%から12.7%」、退職金割合は「6%で変更なし」などが示されました。
この日の需給部会では、使用者側委員が「新型コロナの影響は業種や職種によって明暗が二極化している。痛みの大きかった企業が派遣契約の継続を躊躇してしまう可能性がある」と指摘し、「今後の経済情勢や雇用動向に注視して、悪化がみられる時は機動的に対策を講じてほしい」と注文を付けました。
厚生労働省が7月30日発表した2020年度雇用均等基本調査によると、20年10月までに育児休業を取得した男性の比率は12.65%(前年度比5.17ポイント増)と大幅に増え、初めて二ケタ台に乗りました。このうち、育休期間が5日未満の短期取得者は28.33%。これに対して、女性の取得率は81.6%(同1.4ポイント減)でした。
有期契約労働者の場合、男性取得者比率は11.81%(同8.74ポイント増)と大きく伸びましたが、女性は62.5%(同15.0ポイント減)と大幅に減少しました。
一方、女性管理職比率(従業員30人以上企業)は係
長相当職が17.9%(同1.3ポイント増)、課長相当職が10.1%(同0.2ポイント減)、部長相当職が6.2%(同0.7%ポイント増)、役員14.6%(同1.0ポイント増)など、増加傾向にあります。業種は医療・福祉、生活関連サービスなどで目立ちます。
調査は昨年10月1日時点の状況について実施。常用労働者10人以上の6000社のうち3326社から有効回答を得ました。
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