厚生労働省の有識者会議「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」(鎌田耕一座長)は7月13日、第17回会合を開き、半年間にわたる議論を踏まえて報告書を取りまとめました。この中で、求人メディアの「新形態」と多種多様な「雇用仲介サービス」の法的位置づけの明確化や、労働市場の実態把握と効果的な雇用対策に向けた公的機関と民間人材サービスの連携強化などを提言しました。
報告書を「たたき台」に、今秋から労働政策審議会労働力需給制度部会の場で、職業安定法改正に向けた労使の議論が始まります。
1月6日にスタートした同研究会は、月3回のハイペースで精力的に会合を重ね、現状の課題を掘り下げながら次代を見据えた「雇用仲介」の整備のあり方などを検討。後半の5月以降は「基本的考え方」を示したうえで、
(1)労働市場の整備として
<1>雇用仲介サービスの法的位置づけ
<2>公共の役割
<3>新しいサービスの把握
<4>職業情報・募集情報の共通フォーマットの整備
(2)雇用仲介サービスを取り扱う情報として
<1>情報の的確性
<2>個人情報等の保護
(3)雇用仲介サービスの役割・求職者の保護として
<1>雇用仲介サービスの役割
<2>仕事を探す者の保護
<3>業界団体の役割
<4>雇用以外の仲介
に論点整理して議論を展開してきました。
報告書では、「急速に進化・多様化する雇用仲介サービスの実態把握とルールの必要性」「新型コロナに直面して労働市場における官民の持つ情報共有や連携の重要性」が明記されています。
同研究会の最終回となるこの日は、全8ページの報告書案を事務局の厚労省が説明。委員から内容に異論はなく、文言修正もなく、報告書として了承されました。提言された項目は多岐にわたりますが、「利用者が安心してサービスを利用できる環境整備」の観点から提言されており、そのために必要となるのが、「新形態サービス」はじめとする新しいサービスの実態把握とそのルールづくり。そして、法的位置づけとなる対象企業(事業者)を整理したうえで、労働市場の動向に関する情報収集。それを活用した「官民連携による雇用対策」へとつなげる狙いが読み取れます。
今秋スタートする労政審では、報告書の内容を反映させるために本法および政省令、指針にどのように規定していくか、新しく盛り込む制度やルールのレベル感も注目されます。
いずれにしても、人材サービス業界に大きな変化をもたらす職安法改正になる見通しです。
厚生労働相の諮問機関、中央最低賃金審議会(藤村博之会長)の目安小委員会は7月14日、2021年度の最低賃金(最賃)の引き上げ幅を全国一律で3.1%アップの28円とすることを決めました。引き上げ幅は過去最高で、現在の全国平均902円から930円に引き上げられます。委員会は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を考慮して目安を示せず、最終的には0.1%アップの1円にとどまりましたが、今年は一転して大幅アップを決めました。
今回、経営側は新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化を理由に現状維持を求め、大幅引き上げを求める労働側と鋭く対立しましたが、政府が「早期に1000円」を目指していることを背景に、最後は大幅アップで押し切りました。
取材・文責
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