厚生労働省は4月1日から、職業紹介事業者が「就職お祝い金」の名目で求職者に金銭などを提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止します。職業安定法の指針を改正するもので、事業者が求職者に金品提供を持ち掛けて転職を勧め、繰り返し手数料収入を得る行為を是正します。募集企業が入社準備金などを提供することを禁止する指針改正ではありません。看護師をはじめとする人手不足の医療・介護の現場で「紹介事業者が金銭提供を持ち掛けて不要な転職を促す事例が散見される」との指摘が挙がっており、厚労省は指針改正に踏み切りました。
具体的には、2017年に改正した職安法第48条に基づく指針の「適正な宣伝広告等に関する事項」に関し、「求職の申し込みの勧奨にあたっては、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくない」との表現を、「職業紹介事業者が『お祝い金』その他これに類する名目で求職者に社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することにより求職の申し込みの勧奨を行ってはならない」と、明確に禁止します。この際の社会通念上とは個別のケースごとに判断されますが、概ね「交通費の実費相当」となる見込みです。
厚労省は「金品提供による転職勧奨は労働市場における需給調整機能を歪め、労働者の雇用の安定を阻害する」と指摘。「求職の申し込みの勧奨は、紹介事業の質を向上させ、それをPRすることで実施してほしい」と注意喚起しています。
この対応に紹介事業者からは、公正な労働市場と秩序維持の観点から歓迎する声がある一方、「求人メディアにも類似のケースがみられるのではないか」といった指摘も一部に聞かれます。
この指針改正にあたって厚労省は、1月15日から2月13日までパブリックコメントを募集。この間、1月29日の労働政策審議会労働力需給制度部会で改正の了承を得て、3月の告示に向けて準備を進めていました。
日本生産技能労務協会が発表した「製造請負・派遣事業動向調査」によると、1月度の業況判断DIはマイナス8となり、昨年7月度(マイナス57)を底に2四半期続けて確実に回復基調をたどっています。新型コロナの影響による取引先の休業が減少し、人材ニーズも回復しつつありますが、業種間のバラつきがあり、回復は限定的とする企業が大半です。人材需要が高まっている分野では新規採用が厳しい状態となっています。
業況判断DIは、「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた数値。調査は1月6日から20日に実施。回答企業数67社、回答率74.4%。技能協が会員企業の協力を得て四半期ごとに調査しており、11年4月の調査開始以来、今回で40回目となります。
業況判断の理由として、「自動車関連を中心に生産活動が改善傾向にあり、人材需要も回復しつつある」「業種によって人材需要は増加傾向にあるが、一方で人材の採用は総じて困難な状況」などの回答がありました。
一方、先行き3カ月後の予測DIはマイナス6。「緊急事態宣言の影響や半導体の欠品に伴う余波など、市場回復というにはまだ足りない」「極端な変化の兆候は見られない」「人材需要の先行きは不透明感を増している」などの回答が目立ちます。
このほか、スタッフ社員(派遣・請負)の判断DI(不足―過剰)はプラス71で、昨年10月度(プラス51)に比べて20ポイント上回っています。回答企業67社の20年12月末現在の雇用人数は14万4667人で、このうち、スタッフ社員が13万5648人。スタッフ社員の内訳は派遣社員10万5642人、請負社員3万6人でした。
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