「働き方改革」への対応をはじめ、近年は雇用・労働に関連する法改正が相次いでいます。2021年もその流れは変わらず、さまざまな労働法改正が予定されています。このうち、昨春から大企業と派遣事業者に適用されている「同一労働同一賃金」は、今年4月から中小企業も含めて全面施行されます。昨秋には、同一労働同一賃金をめぐる最高裁判所の判決が注目されましたが、あらためて業務範囲や責任の程度などの整理や諸手当の見直しも含めて「再確認」が必要となります。今年前半に改正法の施行が確定している労働法5点について、運用のポイントをお伝えします。
【1月1日=育児・介護休業の1時間単位の取得】
子供の看護休暇や親の介護休暇などは、これまで半日単位での取得が原則で、所定労働時間4時間以下の短時間労働者は取得できませんでした。1月からは、すべての労働者が1時間単位で取得できるようになりました。(育児・介護休業法)
【3月1日=法定雇用率が2.3%にアップ】
企業の法定雇用率を0.1%引き上げて、2.3%とします。18年4月施行の改正法で、企業の法定雇用率は2.0%から2.2%に引き上げられており、さらに3年以内(今年3月末まで)に0.1%引き上げることが決まっていました。この動きに合わせ、厚生労働省は企業と障害者双方の更なる支援強化に乗り出す方針です。(障害者雇用促進法)
【4月1日=中小企業で「同一労働同一賃金」】
正社員と非正規社員といった雇用形態の違いによって待遇および賃金の差を設けるのではなく、職務内容(業務の内容や職責)や配置変更の範囲などを根拠に、労働者を適正に処遇する制度が、中小企業でスタートします。大企業では既に昨年4月に施行されており、あらためて待遇の差について見直しと改善が必要となります。(パートタイム・有期雇用労働法)
【4月1日=70歳までの就業機会確保の努力義務】
企業に(1)雇用による支援として、定年廃止や70歳までの定年延長、他社への再就職の実現(2)雇用以外の支援として、定年後または65歳までの雇用終了後に起業した人との間で70歳まで業務委託を締結――などを求めます。努力義務でスタートします。
例えば、①定年延長、②定年廃止、③継続雇用制度、④70歳まで継続的な業務委託契約、⑤70歳まで継続的に社会貢献事業などに従事ーーのいずれかを実施するよう努めなければなりません。③~⑤については、対象者を限定することもできますが、その場合は過半数労働組合や過半数代表者の同意を得ることが望ましいとされています。この改正に伴い、企業に毎年1回の提出を義務付けている報告の様式に、新設される70歳までの就業確保措置の実施状況や適用状況の欄が追加されます。(高年齢者雇用安定法)
【4月1日=中途採用比率の公表義務化】
従業員301人以上の大企業を対象に、中途採用の比率公表が義務付けられます。政府は求職者と企業側のマッチングを促す効果が期待できる、としています。大企業に根強く残る新卒一括採用の仕組みを見直し、就職氷河期世代やシニア層の中途採用に加え、経験者採用の拡大を図りたい考えです。具体的には、過去3年分の中途採用比率を自社のホームページに記すことが求められます。
採用者全体に占める中途採用・経験者採用の比率は、企業規模が大きくなるほど減少する傾向にあり、従業員5000人以上の企業では、比率が37%にとどまります。一方、転職希望者からの企業への要望は「正規雇用の中途採用実績」が最多で、労働市場の変化が期待されています。(労働施策総合推進法)
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