労働政策審議会労働力需給制度部会(鎌田耕一部会長)は12月23日、「へき地の医療機関への看護師などの派遣」と「社会福祉施設などへの看護師の日雇い派遣」について、医療政策上の観点と労働政策上の視点から議論しました。その結果、「へき地の医療機関」については、事前研修の実施などを条件に容認。一方、「社会福祉施設などへの日雇い派遣」は、推進を求める使用者側と慎重姿勢の労働者側で平行線をたどり、年内決着には至りませんでした。年明けの同部会で、課題を払拭するための対応策について協議を続ける方針です。
現在、看護師など(看護師、准看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師)の派遣は福祉施設のみ認められており、病院などへの派遣は原則禁止。また、原則禁止の日雇い派遣において、看護師は例外業務の対象ではなく、業務の場所を問わず禁止されています。今回の議論は、「単なる派遣解禁」ではなく、看護師などの「へき地に限定した派遣」と「社会福祉施設などに限定した日雇い派遣」など、範囲を限定した形でのあり方を議論しています。
11月18日に本格議論に入って以降、同部会では看護師の団体や受け入れ側である社会福祉施設の関係団体など計5団体からヒアリング調査を実施し、精力的に協議を重ねてきました。それらを踏まえ、厚労省はこの日、それぞれの「考え方と対応案」を提示。「へき地の医療機関」については、「医師確保の選択肢のひとつとして、医師のへき地医療機関への派遣は2006年に認められている」として(1)各都道府県のへき地医療支援機構による事前研修の実施(2)派遣先による事前研修修了の確認(3)派遣先による教育訓練――など、医師派遣と同様の枠組みで課題を回避する案を示しました。
また、「日雇い派遣」については、「離職中の看護師、受け入れ側の社会福祉施設からも一定のニーズがあった」として、(1)業務範囲や看護師に求められるスキルの明示、勤務体制に関する事前説明など「適切な事業運営の実施」(2)就業条件の明示や損害賠償を含む責任の所在の明確化など「適切な雇用管理の実施」――を条件に例外業務とする考えを提案しました。
これに対し、「へき地」については労使ともに対応案の実施を前提に容認。施行は新年度をメドにしている模様です。一方、「日雇い派遣」は労働者側が「一時的・臨時的ではなく慢性的に足りないのであれば、正規雇用で充足すべき」と難色を示しました。最終的にこの日は、「日雇い派遣」を引き続き協議することで労使が合意。年明けに再度、課題解決の方策を探ることになりました。
厚生労働省が12月25日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント上昇の1.06倍になりました。2カ月連続の上昇で、10カ月ぶりに反転した10月からの勢いを維持。単月では14年2月と同じ水準で、下降局面では06年後半~07年前半と同水準です。都道府県別(就業地別)では福井県の1.61倍が最高で、最低は沖縄県の0.79倍でした。
新規求人倍率は2.02倍で前月比0.20ポイント上昇しました。しかし、新規求人数(原数値)は前年同月比21.4%減で、10月とほぼ同じ水準。業種別では前月までと同様に、宿泊・飲食サービス業の同34.7%減、情報通信業の同33.4%減、生活関連サービス・娯楽業の同32.9%減、卸・小売業の同27.4%減などが目立ちます。また、正社員の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.01ポイント上昇の0.80倍となりました。
一方、厚労省がハローワークなどを通じて集計している解雇・雇い止め数(見込みを含む)は24日時点で7万8979人。今後、求人数の減少に歯止めが掛かり、求人倍率が再び上昇するかどうかは不透明な情勢です。
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