労働政策審議会労働力需給制度部会(鎌田耕一部会長)は11月18日、「へき地の医療機関への看護師などの派遣」と「福祉・介護施設における看護師の日雇い派遣」の是非を巡って議論しました。医療政策上の観点と労働政策上の視点から、条件を整えて解禁を容認する考えと慎重な対応を求める意見が交錯。同部会は近く、看護師の関係団体や受け入れ側である福祉施設の関係者らを招いてヒアリングを実施し、2つの課題についてさらに検討を進める方針です。看護師の派遣および日雇い派遣については、これまでもさまざまな会議体で議論が続いていました。
現在、看護師派遣は福祉施設のみ認められており、病院などへの派遣は原則禁止されています。また、原則禁止の日雇い派遣において、看護師は例外業務の対象ではなく、業務の場所を問わず禁止されています。
看護師派遣の是非を巡っては、2018年夏に政府の規制改革推進会議が民間団体からの提案を受け、厚労省に検討を要請。厚労省は「例外業務とするのは困難」と回答しています。
また、19年6月に閣議決定された政府の規制改革実施計画に「福祉・介護施設における看護師の日雇い派遣に関するニーズの実態調査」が盛り込まれ、厚労省が昨秋、大規模な調査を行い、今年6月に公表。調査結果を基に需給制度部会で協議した結果、「施設側と看護師側の双方から強いニーズがあるとは言えない」「正規雇用で充足すべき」などの意見が挙がり、「検討を続ける」との見解を取りまとめています。
今回の検討は、それら一連の流れをくむものですが、厚労省の社会保障審議会医療部会が窓口となり、地方自治体などから出された規制緩和の提案として、あらためて需給制度部会に検討と見解を求めてきた格好。この日は、労使の意見が明確に分かれました。
まず、「へき地の医療機関への派遣」について労働者側は「派遣でカバーすることが解決策なのか。チーム医療に支障をきたす恐れがあるとの理由でこれまで派遣を禁止してきた経緯もある。常用代替につながる懸念が拭えない」と指摘。使用者側は「医師派遣は人手不足を理由に例外とされており、事前研修や教育訓練の徹底を前提に、看護師も同様の考え方で派遣を認めるべき」と反論しました。
また、「社会福祉施設への日雇い派遣」に関しては、使用者側が「看護師の業務は知識や技術、経験を踏まえた資格保持者であり、入居者の日常的な健康管理に従事するという業務内容に照らしても、日雇い派遣の例外業務に加えて問題ない」と主張。これに対し、労働者側は「6月に公表された実態調査で、現場のニーズが高まっているとは感じられない。現場はコロナ禍で厳しい労働環境になっており、日雇い派遣で医療の一端をカバーすることには慎重であるべき」と、解禁に消極的な姿勢を示しました。需給部会では、ヒアリング調査を踏まえて早期に結論を出したい考えです。
2021年春闘に向け、連合は11月19日の中央執行委員会で、ベースアップ(ベア)を「2%程度」する闘争方針案を決めました。12月1日に開く中央委員会で正式決定します。ベア要求は8年連続で、水準を「2%程度」とするのは6年連続。新型コロナウイルス感染拡大が収束しない中、観光・飲食・鉄道・航空などの産業をはじめ、厳しい交渉を余儀なくされる模様です。
連合は、雇用の維持と定期昇給の確保を大前提に、これまでの流れをくんでベアを求めます。同日、東京都内の連合会館で会見した神津里季生会長は「賃上げと雇用は二者択一ではない」と強調。「経済の好循環につなげていきたい」と述べました。
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