労働政策審議会(会長・鎌田耕一東洋大名誉教授)の第45回会合が10月9日開かれ、事務局の厚生労働省が労働分野における新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、2021年度予算の概算要求と主要施策、各局所管の労政審分科会・部会の審議状況などを説明しました。労働者側と使用者側の両委員は、業種・地域・職種を超えた再就職の推進など「失業なき労働移動」に関する各種施策を支持し、新型コロナで広がる雇用不安の抑制に期待をにじませました。労政審の本体会議は、新型コロナの影響で春の開催が見送られ、1年ぶりの会合となりました。
冒頭、労働担当の三原じゅん子副大臣が新型コロナの感染防止を念頭に「来年度の概算要求では、新たな日常を支える観点に立って雇用就業確保に向けた取り組みを強化する。公労使の幅広い意見をお願いしたい」と活発な議論を要請しました。
厚労省は来年度の概算要求で、「ウィズ・ポストコロナ時代の雇用就業機会の確保」を政策の柱に据え、(1)雇用維持・失業予防・再就職などの支援(2)多様な人材の活躍促進(3)誰もが働きやすい職場づくり――の3点を推し進めます。
具体的な項目として、「業種・地域・職種を超えた再就職の促進」や「派遣労働者など非正規雇用労働者の再就職支援、新規学卒者への就職支援」「就職氷河期世代活躍支援プランの実施」「高齢者の就労・社会参加の支援」「総合的なハラスメント対策の推進」――など14項目を挙げています。
厚労省の説明は、労働基準局、職業安定局、雇用環境・均等局、人材開発統括官関係の順に行われました。
これらを受けて、労使委員は双方とも、新型コロナの収束が長引くことを視野に入れた雇用不安の拡大を懸念。
「失業なき労働移動」が従来にも増して必要不可欠な施策となった現状を共有し、「アフターコロナ時代の中で官民挙げて推し進めてほしい」と支持しました。
このほか、特例措置が継続している雇用調整助成金(雇調金)について労使が「年末までの延長にこだわらず、更なる延長も検討すべき」と求めたのに対し、厚労省は「段階的に引き下げる方針だが、雇用情勢を慎重に見極めて判断したい」と述べるにとどめました。
就職氷河期世代への支援策については、使用者側が「民間人材サービスのノウハウを活かした成果連動型の就職支援に期待したい」などと発言しました。
東京商工リサーチが10月8日発表した2020年度上半期(4~9月、負債額1000万円以上)の企業倒産は3858件(前年同期比398件、9.4%減)、負債総額5991億1900万円(同0.7%増)となり、上半期の件数としては1991年以降の30年間の最少を記録、負債額も同2番目の低水準でした。
新型コロナウイルスの感染拡大で大半の企業は業績悪化に見舞われましたが、同社は「5月に裁判所の業務が一部縮小したことに加え、政府・自治体の緊急避難的な資金繰り支援や金融機関の貸し出しが奏功したのが要因」とみています。
業種別の件数では、サービス業他が1306件で最も多く、この中には感染拡大の影響を大きく受けた飲食業の436件(同25件増)、宿泊業の71件(同43件増)が含まれます。次いで建設業の565件(同166件減)、製造業の448件(同69件減)など。上場企業はアパレルのレナウンとアミューズメントのNutsの2社です。
新型コロナ関連倒産は483件で、6月の103件をピークに7、8月は減少傾向にありましたが、9月に再び100件を記録。10月も32件発生、2月からの累計では8日時点で573件となっています。
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