今年の最低賃金(最賃)は、全国加重平均(時給ベース)で56円、5.0%アップの1177円となりました。最賃の中央審議会が「目安」で示した55円、4.9%アップをわずかに上回っています。引き上げ額は昨年の66円に次ぐ過去2番目の高さであり、経営体力の乏しい中小企業には厳しい水準になっています。一方で、3年連続の大幅引き上げの結果、中小企業を中心に人件費の重圧が深刻化したうえ、高市政権が1500円の実現を「30年代前半」に後ろ倒ししたこともあり、今年、目安への大幅上乗せの流れは収まっています。
26年度の場合、目安を上回ったのは佐賀県の65円(対目安9円アップ)、鹿児島県の64円(同8円アップ)、高知県と沖縄県の63円(同7円アップ)など33府県。14都道府県が目安と同額でした。また、最高は東京都の1280円で、最低の宮崎県の1085円との開きは195円になりましたが、25年度の203円から格差はやや縮小しました。
また、最賃の発効日についても15都道府県が10月1日の「標準日」とし、最も遅い沖縄県でも12月2日。25年度は地域間の「最下位回避競争」が激化したため、大幅な「目安超え」が続出し、発効日も翌年3月に延ばす県が出るなど、働く側にとっては大幅アップのメリットが薄れる事態も出現しましたが、今年は“正常化”した格好です。
とはいえ、26年度も「大幅」引き上げである点は間違いなく、最賃周辺の給与水準で働く従業員を雇用している企業にとっては、負担感が強まっています。厚労省によると、最賃を引き上げた後にそれを下回る賃金水準になる労働者の比率を示す「影響率」は、23年度に21.6%、24年度に23.2%、25年度に27.7%と年々上がっており、26年度も25年度に近い水準になるとみられています。企業にとっては、最賃の上げ幅が大きいと同時に、対象になる従業員の割合が、年々、増えていることになります。
これらを踏まえ、日本商工会議所など中小4団体はこの4月、「20年代に1500円」の政府目標に対して、「中小企業の経営実態から著しく乖離」しているとして、「企業の支払い能力等の実態を踏まえた水準に見直すべきだ」と政府に要望していました。26年度はある程度、要望に沿う結果になったと言えます。
こうした中小企業の“最賃疲れ”に加えて、今年は消費者物価の上昇率が一段落したことも背景にあります。最賃については、現在の環境にふさわしい、決定プロセスを含めた見直しの声が挙がっており、来年以降の動向は見えにくい状況となっています。
帝国データバンクが発表した「主要退職代行サービス」動向調査によると、52事業者のうち26年9月までの1年間で2割超にあたる14事業者が「サービス停止」の可能性があることがわかりました。「モームリ」の"つまずき"が大きな要因となっているようです。同社によると、未払い残業代や有休消化、退職日などをめぐる交渉が「非弁行為」(弁護士資格のない者が弁護士行為を行うこと)とみなされるリスクへの警戒感が高まり、事業から撤退するケースが顕在化しています。