経済政策を議論する政府の日本成長戦略会議・労働市場改革分科会(会長・上野賢一郎厚労相)は5月27日、労働基準監督署による残業(時間外労働)の指導運用の見直しなどを盛り込んだ取りまとめ案を了承しました。政府が掲げる規制緩和の動きの第一弾となります。一方、高市早苗首相が検討を指示していた「裁量労働制」や「変形労働時間制」の見直しについては、厚労相の諮問機関である労働政策審議会で議論する必要があるとして、具体的な方向性を示しませんでした。
同分科会は、労使の代表や有識者で構成。労政審とは別のテーブルで成長分野への労働移動の促進や、多様な働き方に向けた制度のあり方について議論してきました。
労働基準法に基づく労働時間は1日8時間、週40時間以内ですが、労使協定(36協定)を結べば月45時間を限度に残業が可能です。その上で、繁忙などの事情があれば特別条項を締結することができ、残業可能な時間が月100時間未満(休日労働を含む)に延びますが、特別条項を締結している場合でも基準局が残業を45時間以内にするよう一律で指導している現状などを踏まえ、取りまとめのなかに労基署指導の運用を見直す必要性を明記しました。
また、裁量労働制については「適正に運用されれば労働者にとっても良い制度」とする一方、「長時間労働につながる」「裁量や適切な処遇が確保されない実態もある」と指摘。こうした実態の防止を促しつつ、「見直しを検討する」との表現に抑えました。
変形労働時間制については、災害対応などに十分対応できていないといった指摘を踏まえ、「検討を進める必要がある」と記載。労働時間法制の緩和を巡っては、経団連などが対象拡大と要件緩和を要望。労働組合は過労死助長の懸念を表明しています。
このほか、「戦略的なリスキリングの推進」として、人工知能(AI)や半導体、防衛産業など政権が掲げる「戦略17分野」、建設や医療・介護などの社会インフラ関連分野での人材育成の強化も盛り込みました。これらは、7月までに策定する日本成長戦略に反映して、実効策の具体化が進みます。
厚生労働省が5月27日発表した2025年の労働災害発生状況(確定値)によると、死者数は700人(前年比46人、6.2%減)の過去最少となりました。17年の978人から8年連続の減少。また、休業4日以上の死傷者数も13万5333人(同385人、0.3%減)と5年ぶりに減少しました。
死者数で最も多かった業種は例年と同様に建設業の214人(同18人減)で、製造業の115人(同27人減)が続きます。死傷者では製造業が2万6371人(同305人減)で最も多く、小売業が1万6464人(同21人減)、陸上貨物運送業が1万5632人(同660人減)です。
事故の類型別でみると、死者は「墜落、転落」が最多の186人(同2人減)、「交通事故」が126人(同3人増)、「はさまれ、巻き込まれ」が117人(同7人増)の順となっています。