労働政策審議会労働条件分科会が6月16日開かれ、今年1月から実施している「多様な働き方に対応した労働基準法の見直し議論」を続行。(1)労働時間法制の具体的課題として 「副業・兼業」(2)集団的労使コミュニケーションのあり方として「過半数労働組合・過半数代表者等」――をテーマに労使が“本格論戦”に入りました。
労働時間通算による「割増賃金規定」では、使用者側委員が「副業・兼業は労働者の自発的な選択と判断で行われており、本来の割増賃金の趣旨と馴染まない」と見直しを主張しました。
一方、労働者側委員は「日々の生活費を賄うために副業・兼業を行わざるを得ず、結果として長時間労働になっている労働者も少なくない」として、現行規定の維持を強調しました。
このテーマを巡っては、これまでも労使がそれぞれの見解と立場を示していましたが、具体的な理由や課題を掘り下げて議論するのは初めて。
事務局の厚生労働省が「副業・兼業」に関する規定や解釈、ガイドラインの変遷、労働時間通算と割増賃金支払いに関する規制の趣旨のほか、副業者の属性や副業をする理由、本業の業種と年収などの調査結果を説明しました。
これを踏まえて、労使が活発に主張を展開。使用者側委員は「業務命令で発生するのが割増賃金であり、労働者自身の選択で別の事業場で働くことに割増賃金というのは趣旨と異なる」「副業者を受け入れる企業も二の足を踏み、労働者の雇用機会を奪ってしまう」など、健康確保に配慮しつつ見直しを求めました。
これに対し、労働者側委員は「割増賃金の通算をしないとした場合、さらなる長時間労働を誘発することになりかねない」「働き方改革で推し進めてきた長時間労働の是正と過労死ゼロの取り組みに逆行する」などとして、現行ルールの維持を求めました。
労使はそれぞれの発言を取り上げながら自身の見解を述べる形で譲らないなか、公益委員は「副業兼業は現実として自己申告制を取らざるを得ない。調査結果でも多くの労働者が申告していないという実態に鑑みれば、正確な自己申告は望みにくい」「現行の法制度の運用を維持しても、その割増賃金が確実に支払われる補償が非常に薄い」など、見直しの必要性を示唆しました。
同分科会は、年内にも報告書を取りまとめて、見直しがある場合は来年の通常国会に改正法案を提出する見込みです。
この日は、もう一つの重要テーマである「集団的労使コミュニケーションのあり方」についても論戦を繰り広げました。
エン・ジャパンが16月8日発表した5月の派遣平均時給(三大都市圏、募集時)は1703円(前月比0.1%増、前年同月比0.2%増)となり、わずかながら3カ月連続の上昇。前年比は33カ月連続のプラスでした。慢性的な人手不足を背景に、大手を中心に時給アップ交渉を進めた結果、オフィス系、IT系などで時給が上がりました。職種別(大分類)では、オフィスワーク・事務系が1670円(前年同月比1.2%増)、営業・販売・サービス系が1633円(同2.1%増)でした。